イヤホンズ|12の“夢”を巡る海賊たち

□□□三浦康嗣の最高傑作できました

──続いては□□□の三浦康嗣さん作詞、作曲、編曲の「あたしのなかのものがたり」ですが、今日はたまたま三浦さんもいらしているとのことで、ご同席願えますか?

三浦康嗣(□□□) どうも。なんかすいません。

──いえいえ。個人的に「あたしのなかのものがたり」はこのアルバムのハイライトだと思っていまして。

三浦 ありがとうございます。圧倒的に音圧が低いと思いません? ほかの曲はもう、圧がすっごいから。

イヤホンズ

高野高橋長久 あはは(笑)。

三浦 友達のラジオディレクターに完成形を聴いてもらったとき「これ、ファンの人もすごくうれしいんじゃない?」って言われたんですよ。要するに、バックの音が限りなく薄いし、演奏が止まる瞬間もあるから、声が丸裸になると言うか、吐息までかなりしっかり聞こえてるんです。

──実際、うれしいと思います。「あたしのなかのものがたり」は、楽曲としてはポップなエレクトロサウンドにイヤホンズのラップが乗るというものですが、三浦さんの音楽的トライアルの集大成的な部分もあるのでは?

三浦 そうですね。まず、ディレクターの平野宗一郎さんから「“選択”というテーマでラップの曲を」とのオーダーをいただきまして。で、僕は□□□の「CD」というアルバム(参照:□□□アルバムに金田朋子、まつゆう*、RUMIら女性陣参加)で構造的な曲をたくさん作っていて……さっき思い出したんですけど、その中に金田朋子さんをフィーチャーした「あたらしいたましい」っていう曲があるんですね。それは2つの別々の歌が合わさって1つの歌になってるんですけど、そういうのをひさしぶりにやってみようと思って。ものすごい難産だったんですけど、なんとか面白いものができたんじゃないかなと。

高野 「端的に言って最高傑作できました」ってツイートされてましたよね(参照:三浦康嗣 (@koshimiura) | Twitter)。

三浦 はい。それ、マジで言ってます。

「エラーではありません」

──今“選択”とおっしゃった通り、この曲の歌詞は、人生の分岐点に立った主人公(高野)が“冒険の道”を選んだ未来の自分(高橋)と、“安定の道”を選んだ未来の自分(長久)にそれぞれ「そっちはどんな感じ?」と聞いていくというものです。

三浦 はいはい。

──で、イヤフォンで聴くとよくわかりますが、高橋さんと長久さんのボーカルが左右のチャンネルに完全に振り分けられている。

三浦 まりんか(高野)の声が真ん中に聞こえて、左からはりえりー(高橋)の声だけが、右からはがっきゅの声だけが聞こえるっていう。レコード会社によっては「エラーではありません」みたいな注意書きが必要かもしれない。

高橋 じゃないと「片っぽから音が出てないんだけど?」みたいなクレームが。

三浦 そうそう。そういうクレームが入ってもおかしくないですもん。

──その左右から聞こえてくる高橋さんと長久さんのラップは、対照的ですね。

高橋李依

高橋 それぞれの担当パートによってラップのスタイルも違うんですよね。私は“冒険の道”を選んだ、役柄としては行動的なお姉さんなので、とにかくリズミカルに、韻もがっつり踏ませてもらってるんですけど、逆に“安定の道”を選んだがっきゅのパートは、リズム無視と言ったら変だけど。

長久 そう。「お芝居を大切にしてください」というディレクションをいただいて。

──むしろポエトリーリーディングに近い。

三浦 そうですね。

長久 一応、韻を踏んでいるポイントは教えていただいて。そこ以外はもう自分のお芝居で、七十代だけど若々しい、人生に満足しているおばあさんという役を演じさせてもらったんです。でも、やっぱり仮歌を聴きながら1人で練習してるときはすっごい不安でした(笑)。

三浦 歌詞は基本的にいわゆる話し言葉で、難しい単語だったり凝った言い回しは一切ないんですね。でも韻を踏むところは踏んでいて、だからがっきゅのパートも、実はリズムに乗ってないようで乗ってる、あるいは乗ってないけど乗ってるんですよね。それは錯覚も含めて。

──朗読とも歌とも取れるような、ものすごくテクニカルなことをなさっているように聞こえました。

三浦 その塩梅がすごく難しいと言うか、明確に言語化できないんですよ。でも、レコーディングで何回か話してるうちに、「こんな感じで」みたいな曖昧な説明でも普通にどんどんできちゃったから、すごいなと思って。それはりえりーとまりんかにも言えることなんですけど。

──それは、一般的なボーカリストと声優の違いということでしょうか?

イヤホンズ

三浦 うん。やっぱり普通の歌手は、当たり前なんですけど、どうしても音楽の言語で動いちゃうんですね。例えば1小節はあくまで1小節だし、Cの音はCの音だし、4拍子は4拍子なんですよ。一方、声優さんはもっと意味主体で動いてくれると言うか。デフォルトで「この歌詞の主人公はどういう気持ちなんだろうか」とか「じゃあ自分はどんなふうに演じればいいのか」みたいな捉え方ができて、それがすっごく面白かったんですよ。

高野高橋長久 へえええ。

三浦 で、僕は舞台の演出も何回かやったことがあって、今回はその経験がとても役に立ったんです。つまり、ミュージシャンのディレクションをする感じと、舞台俳優さんに稽古を付けるときの感じ、その両方を使ってレコーディングできたなっていう印象があって。結果、音楽的な要素と舞台的な要素が不思議に組み合わさった曲になって、だから「最高傑作」って自分で言ったんです。

「いびつな形」の物語

──「どんなふうに演じればいいのか」という点に関して、もっともテクニカルな演技を要求されたのは、高野さんでは?

三浦 そうかもしれませんね。

高野 私が演じるのは、すでに自分で選んだ道の先にいる2人とは違って、まだ分岐点で迷ってる状態の人だから、やっぱり不安なんじゃないかなって。しかも未来を意識しすぎて、つまり先のことばかり考えて、今の自分のことを疎かにしちゃってるんじゃないかと思って。なので最初はそういう気持ちで歌ってたんです。そしたら三浦さんが「もっと元気があっていいよ」と。

三浦 そうでしたね。

高野 そこから切り替えたと言うか、不安ではあるけれども、そこは主人公らしく、未来の2人の意見を前向きに捉えられるような明るさも必要なんだなと。実際、彼女は最終的には、未来の自分は今の自分が起点になっているし、大事なのは自分の意思で選択することそれ自体なんだっていう気付きを得て、少し吹っ切れたような気持ちになるんです。三浦さんの歌詞も、そういう気持ちの変化が普段使いの言葉でそのまま表れているので、そこに共感しながら歌ったような、しゃべったような(笑)。

三浦 この曲には、冒頭と終盤に「そうそう たいがい」から始まるフレーズがあるんです。で、冒頭ではまだ迷いが見られたのが、終盤では「1周回って覚悟決めたな」みたいな感じになるのが、すごい泣けるなと思っていて。

高野 うれしいです。

三浦 そのあとの「いつか思い出す そのいびつな形 ずっとつもり つもる 物語」っていうところもね。「いびつな形」って、必ずしも前向きな言葉ではないんですけど、それも含めて自分だし、ありのままを肯定的に捉えていくみたいな感じがすごい出てて。

高野 がっきゅもここ好きって言ってたよね。

長久友紀

長久 うん。

三浦 なんでかわからないけど、何かが込められてる気がして。ちゃんと主人公してる感じもあるし「ああ、いいなあ」って。他人事みたいですけど(笑)。

高野 今までの曲と違うタイプの、リアルに聴く人の背中を押せる曲なんじゃないかって思います。

三浦 ホントですか?

高橋 悩みや迷いを受け止めたうえで前を向く感じだもんね。

三浦 ありがとうございます。じゃあ、いい感じに褒めてもらったところで、ぼちぼち退席しますね。

一同 ありがとうございました!

三浦 いえいえ、全然。なんかすいません。

イヤホンズ「Some Dreams」
2018年3月14日発売 / EVIL LINE RECORDS
イヤホンズ「Some Dreams」月世界旅行楽団LIVE盤

月世界旅行楽団LIVE盤 [CD+Blu-ray]
8640円 / NKZC-20~1

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イヤホンズ「Some Dreams」初回限定盤

初回限定盤 [CD2枚組]
4968円 / KICS-93684

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イヤホンズ「Some Dreams」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / KICS-3684

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CD収録曲
  1. 新次元航路[作詞:只野菜摘 / 作・編曲:月蝕會議]
  2. 理想郷物語[作詞・作曲・編曲:山田高弘]
  3. 一件落着ゴ用心[作詞:只野菜摘 / 作・編曲:横山克]
  4. ミーチャイキュットンティーガプリウテグバンコ[作詞:こだまさおり / 作曲:山田高弘 / 編曲:齋藤真也]
  5. あたしのなかのものがたり[作詞・作曲・編曲:三浦康嗣(□□□)]
  6. Fuwa くちゃ Dreamer[作詞・作曲:小坂明子 / 編曲:小坂明子、富永航大]
  7. 予め失われた僕らのバラッド[作詞:桑原永江 / 作・編曲:エンドウ.]
  8. ウィッチクラフト 《テオフィルの奇蹟》[作詞・作曲:J・A・シーザー / 編曲:J・A・シーザー、a_kira]
  9. Yummy Yummy Party[作詞・作曲:CHI-MEY / 編曲:大久保友裕]
  10. サンキトウセン![作詞・作曲・編曲:エンドウ.]
  11. ヨロコビノウタ[作詞:岩里祐穂 / 作曲:フレデリック・フランソワ・ショパン、ヨハン・パッヘルベル、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ、クリスティアン・ペツォールト、ジョルジュ・ビゼー、ジョアキーノ・ロッシーニ、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン / 編曲:エンドウ.]
  12. 未来泥棒[作詞・作曲・編曲:RUI & ROLLY]
月世界旅行楽団LIVE盤 Blu-ray収録内容
  • イヤホンズ2周年記念LIVE「月世界旅行楽団」映像 全編収録
初回限定盤 DISC 2「イヤホンズのMUSIC TRIP」CD収録曲
  • 残酷な天使のテーゼ
  • 現象のブレイド / 大槻ケンヂとイヤホンズ
  • 乙女のポリシー
  • パラレルギャロップ / 高橋李依
  • UNRULY COASTER / 高野麻里佳
  • いーあるさんせっと / 長久友紀
  • 応援歌!
イヤホンズ 3周年記念LIVE Some Dreams Tour 2018 -新次元の未来泥棒ども-
  • 2018年6月17日(日)愛知県 名古屋ReNY limited
  • 2018年6月24日(日)大阪府 umeda TRAD
  • 2018年7月7日(土) 東京都 チームスマイル・豊洲PIT
イヤホンズ
イヤホンズ
2015年夏放送のテレビアニメ「それが声優!」で主演を務める声優の高野麻里佳、高橋李依、長久友紀の3人からなるユニット。「それが声優!」作中で新人声優3人が結成するユニット「イヤホンズ」が現実でも活動を開始したというコンセプトのもと、同年6月にシングル「耳の中へ」でデビューを果たした。翌7月にアニメのオープニングテーマである「それが声優!」、9月には同じくアニメの挿入歌「光の先へ」をシングルとして立て続けにリリース。さらに同年11月には1stフルアルバム「MIRACLE MYSTERY TOUR」を発表した。2016年4月に大槻ケンヂとのユニット「大槻ケンヂとイヤホンズ」として配信シングル「現象のブレイド」を、同年10月には4thシングル「予め失われた僕らのバラッド」をリリースした。2017年2月に5枚目のシングル「一件落着ゴ用心」を発表。表題曲はテレビアニメ「AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-」のオープニングテーマに採用された。2018年3月に2ndアルバム「Some Dreams」をリリース。