音楽ナタリー Power Push - 志磨遼平(ドレスコーズ)×小松菜奈
役者とバンドマン それぞれの人生がリンクした「溺れるナイフ」
イメージしやすかった広能役
──本作が演技初挑戦だった志磨さんとの共演はいかがでしたか?
小松 山戸監督の指示って、わりとざっくりしてるんです。それを普通に受け入れて、ご自分の中で理解して演じられているのが、すごいなって思いました。私はわりとわからないことがあると監督に聞いてしまうんですね、「どういうことですか?」って。やっぱりセンスがあるんだなって。志磨さんが演じた広能(晶吾)という役はすごくクセがあって、たぶんあの感じは志磨さんにしか出せなかったんだろうなって思います。
──今回、山戸監督からは出演のオファーと主題歌のオファー、どっちが先だったんですか?
志磨 出演のオファーです。最初に「出てください」って言われて、主題歌の話をされたのは作品を撮り終えて今年に入ってからでしたね。今回の演技に関しては、あの役だったから経験がなくてもできたっていうのが大きいです。やっぱり日常的にカメラマンに撮られることが多いですし、仲のいいカメラマンの方もいますから自分にとってイメージしやすい役でした。だから自分なりに「カメラマンあるある」みたいなことをリサーチしてみたんです。でも結局は撮影現場に行ってみるまで、どうしたらいいのかまったく答えがわからなくて。完全に手ぶらで現場に行った感じでしたね。
──小松さんに聞きたいんですけど、劇中の広能のようなあんなにグイグイくるカメラマンって実際にいたりします?
小松 あ、いらっしゃいます! やっぱりカメラマンの方って、独特な方が多いですよね(笑)。特にファッション誌よりも、こういうインタビューのカメラマンの方のほうが、「えっ?」って思うことが多いかもしれないです。
志磨 カメラマンっていろいろなタイプがいますよね。撮りながら喘ぐ人だったり、自分の世界に完全に入り込んで地べたに寝転んだりしながら撮る人だったり、わりと淡々と撮っていく人だったり。僕は、その中では淡々と撮っていく人をイメージして演じました。
子供のほうがめんどくさい
──「溺れるナイフ」で小松さんが演じた夏芽は、人気モデルでありながら「若くして有名になったこと」について苦悩します。これは、志磨さんが音楽で表現してきたロックンロールやポップミュージックの世界の住人の憂鬱ともリンクしているように思うのですが。
志磨 あの夏芽ちゃんの役を小松さんが演じるというのは、もうオーバーラップしすぎるほど完全にハマり役で。そんな夏芽ちゃんが、田舎の町に引っ越すことになって、そこでいろんなやっかみを受けたり、田舎ならではのしがらみにがんじがらめになっていく。僕は、お客さんが10人もいればいいみたいなライブハウスで演奏するところからバンドとしてのキャリアを始め、20代をほぼそういう世界で過ごして、ようやく20代後半になってなんとか音楽だけで生きていけるようになったわけです。でもそんなライブハウスのシーンみたいな小さな世界でも、そういうやっかみだとか、しがらみだとか、本当に多いんですよ。ライブハウスのシーンって田舎みたいだったなって(笑)。そこで僕は足を絡め取られたくなかったから、当時は全然友達とかも作らなかったし、すごく孤立してたんですね。でもそれでなんとかやってこれたから。バンドマンなんて子供みたいなもので、バンドを始めた頃は「大人になったらもっとめんどくさいことがたくさんあるんだろうな」と思ってたけど、一応大人になった僕の見解としては、子供の頃のほうが全然めんどくさかった。ほら、子供ってすぐ無視したりするじゃないですか? 大人って、あまり無視とかしないですからね(笑)。
小松 (笑)。
志磨 会社に行って、意味もなく自分の机がないとかないでしょ?(笑)
──もしあったら、とんだブラック企業ですよ(笑)。
志磨 そんな10代、まだ子供の世界の中にいる夏芽にとって僕が演じたカメラマンの広能だけが他人に対して明確なジャッジをするんですよ。「この子はキレイだから偉い」とか「この子は被写体として興味がない」とか。それってきっと10代の闇の中にいる子にとっては、すごく救いになると思うんです。だから、夏芽ちゃんの心の動きというのを、僕はとても理解できる気がしましたね。
──小松さんは今年ちょうど20歳になったわけですが、今は、そういう子供の世界と大人の世界の狭間にいるような感覚ですか?
小松 うーん。事務所に入ったのは小学校6年生の終わりで中学も高校も地元の普通の学校に通っていたから、本当にこの作品の夏芽と同じような状況ではあったんですよね。学校で、周りの子が私の載ってる雑誌を持ってきて、「これ見たよ!」って言ってくれたりとか。だから、演じていてちょっと懐かしい感じもあったんです。ただ私は、何かに対してあんなに情熱を持てる夏芽をうらやましいと思いました。私、10代の頃はなんにも考えずにボケーッとしてたんで(笑)。
次のページ » 夏芽と航一朗のために歌った「コミック・ジェネレイション」
- ドレスコーズ ニューシングル「人間ビデオ」 / 2016年10月12日発売 / EVIL LINE RECORDS
- R.I.P.デラックス盤 [CD+DVD] 5184円 / KICM-91708
- GANTZ:O盤 [CD+DVD] / 2376円 / KIZM-451~2
- 溺れる盤 [CD] / 1080円 / KICM-1731
R.I.P.デラックス盤&溺れる盤 CD収録曲
- 人間ビデオ
(映画「GANTZ:O」主題歌) - コミック・ジェネレイション
(映画「溺れるナイフ」主題歌) - 人間ビデオ(off vocal ver.)
- コミック・ジェネレイション(off vocal ver.)
R.I.P.デラックス盤 DVD収録内容
- R.I.P. TOUR FINAL 横浜 Bay Hall 公演
GANTZ:O盤 CD収録曲
- 人間ビデオ
- 2MC & 3次元 / Vocal:玄野計(梶裕貴)、加藤勝(小野大輔)
- 人間ビデオ(off vocal ver.)
- 2MC & 3次元(off vocal ver.)
GANTZ:O盤 DVD収録内容
- 「人間ビデオ」Music Video ほか
映画「溺れるナイフ」2016年11月5日(土)公開
突然田舎町に引っ越してきた15歳のティーンモデル・望月夏芽と、神主一族の跡取りであり「コウ」と呼ばれる少年・長谷川航一朗が惹かれ合っていくさまを描いたラブストーリー。小松菜奈が夏芽を、菅田将暉がコウを演じている。原作はジョージ朝倉による同名のマンガ作品。
ドレスコーズ
2012年1月1日に志磨遼平(Vo)、丸山康太(G)、菅大智(Dr)の3名で初ライブを実施し、同年2月に山中治雄(B)が加入する。6月には大阪、名古屋、横須賀で「Before The Beginning」と題したツアーを突如開催。7月に1stシングル「Trash」をリリースし、タイトル曲は映画「苦役列車」主題歌に採用され話題を集めた。12月に1stフルアルバム「the dresscodes」、2013年11月にフジテレビ系アニメ「トリコ」のエンディングテーマ「トートロジー」を含む2ndフルアルバム「バンド・デシネ」を発売した。2014年9月にキングレコード内レーベル・EVIL LINE RECORDSへの移籍第1弾作品として5曲入りCD「Hippies E.P.」をリリースし、同時に丸山、菅、山中の脱退を発表。ドレスコーズは志磨の単独体制となり、同年12月にフルアルバム「1」をリリースした。2015年10月、ピエール中野(凛として時雨)、會田茂一、沙田瑞紀(ねごと)ら多数のゲストプレイヤーを迎えて4thアルバム「オーディション」を制作。2016年にはWOWOW 連続ドラマW「グーグーだって猫である2 -good good the fortune cat-」や、映画「溺れるナイフ」に出演し、俳優としても活躍する。同年10月に映画「溺れるナイフ」の主題歌である新録バージョンの「コミック・ジェネレイション」を収録した最新シングル「人間ビデオ」をリリースした。
小松菜奈(コマツナナ)
1996年2月16日、東京都生まれ。2008年よりモデルとして活動を始め、2014年に映画「渇き。」に出演し女優として注目を集める。その後「近キョリ恋愛」「予告犯」「バクマン。」といった映画作品に次々出演。2016年11月に公開される映画「溺れるナイフ」ではヒロインの望月夏芽役を演じる。
2016年10月14日更新