コミックナタリー Power Push - 「GANTZ:O」

志磨遼平(ドレスコーズ)×奥浩哉対談(原作者)

ファン目線で作り上げたドレスコーズなりのトリビュート

奥浩哉原作による3DCGアニメ映画「GANTZ:O」が、10月14日に公開された。「GANTZ:O」には原作の大ファンであるというドレスコーズが主題歌「人間ビデオ」を書き下ろしており、同楽曲を収めたシングルもリリースされたばかりだ。

コミックナタリーでは「人間ビデオ」のリリースと「GANTZ:O」の公開に合わせ、ドレスコーズの志磨遼平と奥浩哉の対談をセッティング。「自分なりの『GANTZ』へのトリビュート」として制作したという「人間ビデオ」の制作裏話や、奥の映画への思いについて聞いた。

取材・文 / 宮津友徳 撮影 / 上山陽介

「GANTZ」では「自分がやりたいことだけ、見たいものだけ」を描いた

──本日は「GANTZ:O」の公開と主題歌「人間ビデオ」のCD発売に合わせた対談ということで、奥先生と志磨さんにお越しいただきました。志磨さんは原作の大ファンと伺っています。

手前から奥浩哉、志磨遼平。

志磨遼平 「GANTZ」でやっていたことって、今でこそマンガの中ではスタンダードになっていますけど、連載が始まった2000年代初頭の作品としてはかなり型破りだったと思うんです。「死んだ人間が集められて謎の星人と戦う」っていうシュールな設定だったり、CGを使っての細部までの描き込みだったり。

──確かに連載が始まった2000年頃には、理不尽な状況下でのデスゲーム的な作品はそこまで多くなかったですし、背景にCGを使うマンガ家の方も少なかったですよね。

志磨 ええ。あと個人的に「ストーリーが進むに連れて、人間の本質に踏み込んでいく」っていう作品が好きというのもあって。

奥浩哉 こういうふうに若い読者の方の感想が直接聞けるのはうれしいですね。実は僕はあんまりファンレターをもらえない方で、連載している時は読者の反応がほとんどわからない状態で作品を描いていたんです。

「GANTZ」文庫版の1巻。

志磨 えっ、そうなんですか! アンケートの結果がよかったり、「カラーページを描く回数が多いから評判いいのかな」みたいな感じで人気を測っていたんですか?

 「GANTZ」は「自分がやりたいことだけ、見たいものだけ」を描いていくというスタンスでやっていたので、アンケートも何位だったか聞いていなかったんですよ。もちろん単行本の部数でどれくらい読まれているのかっていうのは、ある程度把握できるんですけど、実際にどういう層にウケているのかっていうのは全然わからなかったので、若い方から直接感想をいただけてうれしいです。正直「ヤンジャンの中では浮いてるんじゃないか」って思いながらやっていたので(笑)。

「加藤ががんばる話を考えよう」から始まった大阪編

志磨 僕は「GANTZ」の中だと西くんが好きなんです。実は「GANTZ」の中で1番ブレずにミッションをこなしているのは、西くんなんじゃないかと思っていて。西くんは「自分が支配者になりたい」っていう欲望を持っていますけど、それを隠しながら最初から最後まで淡々とミッションをこなすじゃないですか。

「GANTZ:O」より、西丈一郎。新たにミッションに参加することになった加藤を邪険に扱うが……。

──確かに玄野や加藤と比べても逡巡することは少ないですね。

志磨 ただ人間としては決して強いタイプではないというのも描かれていて。ほかのマンガなんかでも西くんみたいなキャラクターを好きになることが多いですね。奥先生はお気に入りのキャラクターっていらっしゃるんですか。

 大阪編の主人公にもなっているんですけど、加藤が好きですね。大阪編っていうのは、「死んじゃった玄野を生き返らせるために、加藤ががんばる話を考えよう」っていうところから始めているんです。

「GANTZ:O」では加藤勝が主人公を務める。

志磨 玄野のほかにも、加藤っていう主人公がスタンバイしてるっていうのが、「GANTZ」を奥深くしていますよね。加藤はあからさまにイケメンなので、「ああ、わかるわ」とすべてに対して共感できる感じは正直ないんですが(笑)。でも玄野というヒーローのような存在に感化されて、「どんな逆境でも諦めないで、玄野のように戦おう」ってなるのはすごくわかります。原作後半の玄野は、まさに誰もが憧れるヒーローという感じなので。普段の生活というか、スクールカースト的には加藤より玄野のほうが下だと思うんですけど(笑)。

ドレスコーズ ニューシングル「人間ビデオ」 / 2016年10月12日発売 / EVIL LINE RECORDS
GANTZ:O盤 [CD+DVD] / 2376円 / KIZM-451~2
R.I.P.デラックス盤 [CD+DVD] 5184円 / KICM-91708
溺れる盤 [CD] / 1080円 / KICM-1731
GANTZ:O盤 CD収録曲
  1. 人間ビデオ
  2. 2MC & 3次元 / Vocal:玄野計(梶裕貴)、加藤勝(小野大輔)
  3. 人間ビデオ(off vocal ver.)
  4. 2MC & 3次元(off vocal ver.)
GANTZ:O盤 DVD収録内容
  • 「人間ビデオ」Music Video
  • 「人間ビデオ」Animation Video
  • 「2MC & 3次元」Animation Video
R.I.P.デラックス盤&溺れる盤 CD収録曲
  1. 人間ビデオ
    (映画「GANTZ:O」主題歌)
  2. コミック・ジェネレイション
    (映画「溺れるナイフ」主題歌)
  3. 人間ビデオ(off vocal ver.)
  4. コミック・ジェネレイション(off vocal ver.)
R.I.P.デラックス盤 DVD収録内容
  • R.I.P. TOUR FINAL 横浜 Bay Hall 公演
「GANTZ:O」

映画「GANTZ:O」2016年10月14日(土)ロードショー

地下鉄で事件に巻き込まれ、命を落とした高校生の加藤勝。次の瞬間、加藤はマンションの一室にいた。そこで玄野というリーダーを亡くし失意の東京チームと出会う。彼らと共に転送された先は、東京ではなく、火の手があがる大阪の街だった。加藤は命がけのサバイバルゲームに挑むこことなる。 曲者揃いの大阪チームとの遭遇。強力な妖怪型の星人軍団=百鬼夜行との戦闘。シングルマザーでありながら戦いに身を投じていた大阪チーム山咲杏との出会い。さまざまな事態に翻弄されつつも、加藤はたった一人の家族である弟のもとへ帰るため、死線を潜り抜けていく。やがて、加藤らの前に大ボス「ぬらりひょん」が立ちはだかる……!

スタッフ

原作:奥浩哉
総監督:さとうけいいち
監督:川村泰
脚本:黒岩勉
音楽:池頼広
制作:デジタル・フロンティア

キャスト

加藤勝:小野大輔
山咲杏:M・A・O
西丈一郎:郭智博
レイカ:早見沙織
鈴木良一:池田秀一
岡八郎:ケンドーコバヤシ
島木譲二:レイザーラモンHG
室谷信雄:レイザーラモンRG
ぬらりひょん:津嘉山正種
木村進:小野坂昌也
平参平:津田健次郎
原哲男:小川輝晃
アナウンサー:吉田尚記
玄野計:梶裕貴

奥浩哉(オクヒロヤ)
奥浩哉

1967年9月16日福岡県福岡市生まれ。山本直樹のアシスタントを経て、1988年に久遠矢広(くおんやひろ)名義で投稿した「変」が第19回青年漫画大賞に準入選、週刊ヤングジャンプ(集英社)に掲載されデビューとなった。以降、同誌にて不定期連載を行い、1992年よりタイトルを「変 ~鈴木くんと佐藤くん~」と変え連載スタート。同性愛を題材とした同作は道徳観念を問う深い内容で反響を呼び、1996年にはテレビドラマ化されるヒットを記録。マンガの背景にデジタル処理を用いた草分け的存在として知られ、2000年より同誌にて連載中の「GANTZ」はスリルある展開で好評を博し、アニメ、ゲーム、実写映画化などさまざまなメディアミックスがなされた。2014年からはイブニング(講談社)にて「いぬやしき」を連載している。

ドレスコーズ
ドレスコーズ

2012年1月1日に志磨遼平(Vo)、丸山康太(G)、菅大智(Dr)の3名で初ライブを実施し、同年2月に山中治雄(B)が加入する。6月には大阪、名古屋、横須賀で「Before The Beginning」と題したツアーを突如開催。7月に1stシングル「Trash」をリリースし、タイトル曲は映画「苦役列車」主題歌に採用され話題を集めた。12月に1stフルアルバム「the dresscodes」、2013年11月にフジテレビ系アニメ「トリコ」のエンディングテーマ「トートロジー」を含む2ndフルアルバム「バンド・デシネ」を発売した。2014年9月にキングレコード内レーベル・EVIL LINE RECORDSへの移籍第1弾作品として5曲入りCD「Hippies E.P.」をリリースし、同時に丸山、菅、山中の脱退を発表。ドレスコーズは志磨の単独体制となり、同年12月にフルアルバム「1」をリリースした。2015年10月、ピエール中野(凛として時雨)、會田茂一、沙田瑞紀(ねごと)ら多数のゲストプレイヤーを迎えて4thアルバム「オーディション」を制作。2016年にはWOWOW 連続ドラマW「グーグーだって猫である2 -good good the fortune cat-」や、映画「溺れるナイフ」に出演し、俳優としても活躍する。同年10月に映画「溺れるナイフ」の主題歌である新録バージョンの「コミック・ジェネレイション」を収録した最新シングル「人間ビデオ」をリリースした。