音楽ナタリー Power Push - 志磨遼平(ドレスコーズ)×小松菜奈

役者とバンドマン それぞれの人生がリンクした「溺れるナイフ」

ドレスコーズのニューシングル「人間ビデオ」がリリースされた。

シングルにカップリングとして収録される「コミック・ジェネレイション」は毛皮のマリーズの楽曲のセルフカバーであり、志磨遼平が俳優に初挑戦した作品「溺れるナイフ」の主題歌として再レコーディングされたものだ。音楽ナタリーでは映画「溺れるナイフ」で共演した志磨と小松菜奈の対談を企画。お互いが役者としてどう映画に取り組んでいったのか、また「この映画のために書いた曲なんじゃないか」と志磨自身が発言するほど作品に寄り添った主題歌「コミック・ジェネレイション」についてなど、さまざまな話題を語り合ってもらった。

取材・文 / 宇野維正 撮影 / 塚原孝顕

観終わったときは拍手するしかなかった

──今回はドレスコーズが主題歌を担当し、さらに志磨さんが物語上かなり重要な役どころで出演されている映画「溺れるナイフ」の公開記念ということで、小松菜奈さんとの対談が実現しました。

小松菜奈 よろしくお願いします。

志磨遼平 こちらこそ、お願いします。

──「溺れるナイフ」、これはもう近年稀に見る日本の青春映画の傑作だと思いました。主人公の望月夏芽を演じた小松さんにとっても、相当手応えがあったんじゃないですか?

小松 撮影中はとにかく大変で、「この作品、完成するのかな?」と思ってました(笑)。撮影は短期間にかなり集中的に行われたので、役を演じている最中は、ほかに何も考える余裕がなくて。

志磨遼平

志磨 過酷な現場でしたよね。天気にもあまり恵まれなくて、絶対に晴れてなきゃいけないシーンがなかなか撮れないっていう日が続いて。自分は映画の現場は初めてだったからほかの現場と比較できないんですけど、スタッフの人たちもちょっと不安そうでした。

小松 いや、なかなかあんなに大変な現場はないです(笑)。だから完成した作品を観たときに、初めていろいろ考えることができたんですけど、まずは「悔しい!」と思いました。

──「悔しい!」というのは?

小松 山戸(結希)監督に対して。

志磨 なるほど。

小松菜奈

小松 同じ20代なのに「こんな映画が作れちゃうんだ!」って。作品を観たあとに共演者の菅田(将暉)くんとも「悔しいね!」って話してました(笑)。でもそう思える作品に出演することができたのは本当にうれしいことで。撮影現場のあの異常な熱量や、現場にいたすべての人の存在感がちゃんと画面の中に入っている感覚があったんです。10代の頃の感情、危うさ、疾走感、ヒリヒリする感じというのが、すごく伝わってきた。ただの恋愛映画、ただの胸キュン作品みたいなものでは終わらない、何かがある作品だと思います。自分が出てるからっていうのを別にして、いろいろと考えさせられました。10代のお客さんが観たらどう感じるのか? 原作のファンの方が観たらどう感じるのか? すごく楽しみです。

志磨 小松さんの言う「悔しい!」っていうのは、すごくよくわかります。みんなが不安そうにしている中でも、山戸監督だけは自分のやるべきことに完全に没入していて、鬼気迫るものがあった。あの現場からこんな見事な作品を仕上げてくるわけですから、観終わったときはもう拍手するしかなかったですね。

和歌山の田舎の子がみんな知ってる

──劇中で共演された志磨さんから見た、小松さんの魅力はどういうところですか?

志磨 いやいや、本人を目の前にして(笑)。

小松 (笑)。

志磨 僕は「渇き。」(2014年公開)を観ていたんですけど、そのときにすごい女優さんが現れたなと思っていたんです。僕、和歌山出身なんでよくわかるんですけど「溺れるナイフ」の撮影現場って和歌山の南の端っこのものすごい田舎なんですよ(笑)。で、高校の校門のところで、小松さんが出てくるところを僕が待ち伏せしていて、そのあと、口喧嘩みたいなことをしながら歩いていくシーンがあるんですけど。

──はい、すごく重要なシーンでした。

左から志磨遼平、小松菜奈。

志磨 あの撮影のとき、もうすごかったんですよ。校舎の窓のところに鈴なりになって、女の子がみんな「菜奈ちゃーん!」って叫んでいて。和歌山出身の身でこんなこと言うのは本当に失礼なんですけど、「こんな田舎の子でもみんな知ってるのか。小松さんって本当にすごいんだな」ってそのときに改めて思いました。あの場所であんなことになるんだったら、世界のどこに行っても大丈夫ですよ(笑)。

小松 そんなことないです(笑)。撮影現場は本当に自然が美しくて素敵な場所でした。景色を見てるだけで視力がよくなるんじゃないかってくらい。

志磨 そうですよね。ただ僕の出身は和歌山の中心の和歌山市だから、シティボーイなんですよ(笑)。

ドレスコーズ ニューシングル「人間ビデオ」 / 2016年10月12日発売 / EVIL LINE RECORDS
R.I.P.デラックス盤 [CD+DVD] 5184円 / KICM-91708
GANTZ:O盤 [CD+DVD] / 2376円 / KIZM-451~2
溺れる盤 [CD] / 1080円 / KICM-1731
R.I.P.デラックス盤&溺れる盤 CD収録曲
  1. 人間ビデオ
    (映画「GANTZ:O」主題歌)
  2. コミック・ジェネレイション
    (映画「溺れるナイフ」主題歌)
  3. 人間ビデオ(off vocal ver.)
  4. コミック・ジェネレイション(off vocal ver.)
R.I.P.デラックス盤 DVD収録内容
  • R.I.P. TOUR FINAL 横浜 Bay Hall 公演
GANTZ:O盤 CD収録曲
  1. 人間ビデオ
  2. 2MC & 3次元 / Vocal:玄野計(梶裕貴)、加藤勝(小野大輔)
  3. 人間ビデオ(off vocal ver.)
  4. 2MC & 3次元(off vocal ver.)
GANTZ:O盤 DVD収録内容
  • 「人間ビデオ」Music Video ほか

映画「溺れるナイフ」2016年11月5日(土)公開

「溺れるナイフ」

突然田舎町に引っ越してきた15歳のティーンモデル・望月夏芽と、神主一族の跡取りであり「コウ」と呼ばれる少年・長谷川航一朗が惹かれ合っていくさまを描いたラブストーリー。小松菜奈が夏芽を、菅田将暉がコウを演じている。原作はジョージ朝倉による同名のマンガ作品。

ドレスコーズ
ドレスコーズ

2012年1月1日に志磨遼平(Vo)、丸山康太(G)、菅大智(Dr)の3名で初ライブを実施し、同年2月に山中治雄(B)が加入する。6月には大阪、名古屋、横須賀で「Before The Beginning」と題したツアーを突如開催。7月に1stシングル「Trash」をリリースし、タイトル曲は映画「苦役列車」主題歌に採用され話題を集めた。12月に1stフルアルバム「the dresscodes」、2013年11月にフジテレビ系アニメ「トリコ」のエンディングテーマ「トートロジー」を含む2ndフルアルバム「バンド・デシネ」を発売した。2014年9月にキングレコード内レーベル・EVIL LINE RECORDSへの移籍第1弾作品として5曲入りCD「Hippies E.P.」をリリースし、同時に丸山、菅、山中の脱退を発表。ドレスコーズは志磨の単独体制となり、同年12月にフルアルバム「1」をリリースした。2015年10月、ピエール中野(凛として時雨)、會田茂一、沙田瑞紀(ねごと)ら多数のゲストプレイヤーを迎えて4thアルバム「オーディション」を制作。2016年にはWOWOW 連続ドラマW「グーグーだって猫である2 -good good the fortune cat-」や、映画「溺れるナイフ」に出演し、俳優としても活躍する。同年10月に映画「溺れるナイフ」の主題歌である新録バージョンの「コミック・ジェネレイション」を収録した最新シングル「人間ビデオ」をリリースした。

小松菜奈(コマツナナ)

1996年2月16日、東京都生まれ。2008年よりモデルとして活動を始め、2014年に映画「渇き。」に出演し女優として注目を集める。その後「近キョリ恋愛」「予告犯」「バクマン。」といった映画作品に次々出演。2016年11月に公開される映画「溺れるナイフ」ではヒロインの望月夏芽役を演じる。


2016年10月14日更新