ナタリー PowerPush - DOPING PANDA
初のベストアルバムは眼中になし!? Yutaka Furukawa、次回作を大いに語る
DOPING PANDAが初のベストアルバム「THE BEST OF DOPING PANDA」をリリース。この2枚組アルバムは、インディーズ時代の楽曲やコンピ提供曲などを含む全28曲を収録した決定盤。これまでドーパンが歩んできた軌跡を一望できるフルタイムベストアルバムとなっている。
このベストアルバム発売を受けて、ナタリーではYutaka Furukawa(Vo,G)にインタビューを実施。だがFurukawaの中にベストアルバムへの興味はすでになく、インタビューでは来るべき新作の構想が熱く語られることとなった。
取材・文/大山卓也 インタビュー撮影/中西求
ベストアルバムを出す理由なんてない
──今回はベストアルバムがリリースされるということで、お話を伺いに来たんですけど、そもそもなぜベストアルバムを出すことになったんでしょうか? Furukawaさんのこれまでの姿勢や言動を考えると、ベストというある意味後ろ向きなアイテムを出すのはどうにも腑に落ちないんですが……。
いや、まあそうですよね。そう思われますよね。これはホントに簡単な話で、ベストアルバムを出す理由なんてないんですよ。ベストアルバムなんてコンセプトもないものだし、そのときそのときのモチベーションもスタンスも違うものを一緒にするなんて、そんなのはもう作り手としては本当は一番やっちゃいけないことです。出す理由なんて本当は全然ないんです。でも、これは僕から言い出しました。ベストを出すっていうのは。
──どういうことですか?
理由は2つあって、1つは今度出るアルバムの前宣伝ですね。前作からこれだけリリース期間が空いてますから、このあたりで多少露出があったほうがいいなと。次のアルバムのパブリシティを手助けできる手段があるならなんでもしたいっていう気持ちです。おかげでこうやってインタビューを受けさせてもらってるわけですし。
──はい(笑)。
あともう1つの理由はやっぱり、今後もうベストを出す機会はないだろうなっていうことですね。今までリリースしてきた作品と、今の自分が作ってる作品は明確に違うんで。今まではエンジニアに頼んで音を作ってもらってましたけど、今は録りもミックスも全部自分でやってる。インディーズとメジャーの違いとかそういうもの以上に、もっとでっかいピリオドが自分の中で打たれてるんで、それを混ぜることはタブーなんです。もう絶対あり得ないんです。まあ今回も新曲の「after dawn」が入ってるんで、そこに1個矛盾はあるんですけど、それはパブリシティとしての役目ってことでね(笑)。だからベストを出すとしたらこのフォーマットのベストしか出せないんで、まあそこはひとつのけじめですね。環境を変えて本物を目指してる今の自分にとっての落とし前というか。
──じゃあFurukawaさんにとって、自分でエンジニアリングも手がけるようになった「anthem」以降の作品とそれまでの作品の間には、明確な区切りがあるということ?
そうですね。だからこのベストには「anthem」は入れてないんです。
──なるほど。そう言われると納得です。選曲にあたっての基準はどんなものでしたか?
そこはやっぱりいわゆるパイロット曲、シングル曲、もしくはライブでの定番曲っていうものを中心にして。今回はけっこう後藤さん(ソニー・ミュージックレコーズ担当A&R)にやってもらったところが多いですね。コンセプトのないアルバムの曲順を自分で決めたりっていうのはなかなかしんどい作業なんで。出そうよってところまで決めて、あとは流れにまかせました。ていうか、流れにまかせないとこっ恥ずかしくて。
──こっ恥ずかしい?
ベストを一生懸命作りこむってなんか恥ずかしくないですか? なんだろう、今の自分が見て、だいたいが未熟だって思ってるものを並べて、一生懸命曲順を考えたりとか、そういう作業が僕には合わないっていうかね。
──じゃあベストアルバムの制作は肩の力を抜いた感じで。
制作の作業自体はね。ただこれを出すっていうことに関してはある程度決断しましたよ。ドーパンっぽくないしね、ベスト出すっていうこと自体が。まあ誤解も受けるだろうし、なんだったら本人主導じゃなくて、ソニーに出されちゃってんじゃないかみたいな誤解も当然あるだろうなって思うし。でもそんなもん誤解されてもいいんです。次のアルバムのためになれば。あとはピリオドをちゃんと打ちたいっていう気持ちですよね。
今は新しいアルバムを作ってるんです
──このアルバムはすごく充実してますけど、選曲自体はいわゆる“普通”のベスト盤ですよね。Furukawaさんが出すアイテムとしては普通すぎて、逆に驚いてるところもあるんですが。
まあね。2枚組にしたのも「ファンは2枚のほうが喜ぶよ」って後藤さんが言ったからなんで。「そっか、今回はファンが喜ぶようにしたほうがいいのかな」って。どっちにしてもクリエイティビティのある話じゃないんですよ。
──でもそれって、ドーパンのファンが自分でお気に入りのプレイリスト作るのとさほど変わらないですよね。
いや、これ載せちゃうと完全にディスプロモーションになるけど、それよりも気持ち入ってないですよね。
──あはは(笑)。ひどい。
いや、ひどいかもしれないですけど、だってベストアルバムにどう気持ちを入れたらいいんですか! 知ってる曲を20何曲集めたものを、みんな持ってる子に「買ってください」って言うのもね、iPodにもうみんな入ってるのに。
──じゃあ逆に思いっきり手をかけて、新バージョンを作ったり、ミックスをやり直したり、という方法もあったんじゃないですか?
それができるならやりたかったですよね。インディーズのときのマスターテープ手に入れてミックスやり直したいのとかありますけどね。でも今は新しいアルバム作ってるんですよ。だからそれをしてる暇はないです。今はモードが全然違いますね。
──確かにこのベストにも新曲が1曲入ってますしね。
でもこの「after dawn」は、今作ってるアルバムとはリンクしてないんで。だからこれが次の作品につながるっていうものではないです。でもいい曲だとは思ってるし、すごくよくできてるなとも思うし、こういう曲は後藤さんも好きだって言ってたんで。
──後藤さんまかせの発言が多いですけど(笑)。確かにこの曲は「anthem」の流れともちょっと違う感じの曲ですよね。
うん、そう思います。
DISC 1
- beautiful survivor
- I'll be there
- Crazy
- nothin'
- majestic trancer feat.VERBAL(m-flo)
- We won't stop
- crazy one more time
- Lost & Found
- Moralist
- The Fire -Alarmix-
- transient happines
- Hi-Fi
- MIRACLE
- beat addiction
DISC 2
- Go the Distance [Hercules]
- The way to you
- Mayonnaise on my toast
- GAME
- Start me up
- Under the Sea [The Little Mermaid]
- ターボ意味無し
- she loves the CREAM
- Lovers Soca
- Everything under the sun
- Fine by me
- Candy House
- Stairs
- after dawn
DOPING PANDA(どーぴんぐぱんだ)
Yutaka Furukawa(Vo, G)、Taro Houjou(B, Cho)、Hayato(Dr, Cho)から成る3ピースバンド。1997年の結成当初は主にパンク / メロコアシーン界隈で活動していたが、ダンスミュージックの要素を大胆に取り入れ、エレクトロとロックのハイブリッドな融合を担う存在に。インディーズでのブレイクを受けて、2005年にミニアルバム「High Fidelity」でメジャーデビュー。時代の空気を反映させたサウンドとエンタテインメント性抜群のライブパフォーマンスで、幅広いリスナーからの支持を獲得する。その後も全国各地でツアーやフェス出演を精力的に展開しつつ、2008年6月には「beautiful survivor」が資生堂ANESSAのCM曲に起用。2008年にはイギリスで初の海外公演に挑戦するなどワールドワイドな活動にも注目が集まっている。