ナタリー PowerPush - DOPING PANDA
初のベストアルバムは眼中になし!? Yutaka Furukawa、次回作を大いに語る
ベストのほうに気持ちがいってたら逆にまずいでしょ(笑)
──そう言われると次の作品がどんな感じになるのか気になりますね。
ちょっと聴きます?
──えっ?
いいですよ。ある程度聴かせられるとこまではできてるんで。
(FurukawaのiPodに入った新曲2曲を試聴)
──すごい。これめちゃめちゃカッコいいですよ。
まあこういう感じで、自分にしか書けないものを作りたいっていう思いは強くなってますね。ただ、現時点で聴かせられるのが2曲しかないのはヤバいですけど。間に合わない(笑)。
──じゃあ今まさに制作真っ最中という。
なんか先週ぐらいでパッと、やっとトンネルの先に光が見えてきたというか。音の作り方がなんとなく感覚的にわかってきたというか。
──「anthem」で見せた立体的な音像がさらに際だってるように感じますね。
だんだんブラッシュアップされてますよね。あのときは雰囲気でやってたのがちゃんとしてきてる。
──しかしベストアルバムのインタビューで新曲を聴かせてもらえると思わなかったです。もう完全に気持ちはこっちにいっちゃってるってことですよね?
もちろんです。ベストのほうに気持ちがいってたら逆にまずいでしょ(笑)。
自分が作る音楽は「イエローファンク」
──今聴かせてもらった新曲は「after dawn」とはだいぶ雰囲気が違いますね。
はい、僕の手法がひとつ確立されつつあるんで、それが出てるんじゃないかな。自分は大げさに「イエローファンク」って呼んでるんだけど。
──でもまだできてるのは2曲なんですね。時間がかかってるのはどうしてなんですか? 「anthem」のときに「こういうやり方でどんどん作っていきたい」というお話をされてましたけど。
いや、時間はいくらあっても足りないんです。だって「anthem」もとりあえずリリースはしましたけど、作品の完成度に納得してるわけじゃないですもん! あ、写真撮ってんの忘れて髪をグシャグシャに(笑)。
──(笑)。
完成度には納得してないですよ。あの程度のクオリティのものを出し続けるなんてことは僕はもちろん考えてなかったです。もちろん制作はあの後もずっと続いてます。いろんな曲書いてるし、毎日音楽ばっかりだし、スタジオにずっといるし。ただ、それをリリースするレベルまで持っていくには、やっぱりそれなりに時間がかかるってことですよね。今はだから発売日を設定して、もう無理やりにでも作らなきゃいけないっていう状況にして。だからこれだってきっと、出さなくていいんだったらたぶんあと4、5年かかるとか、もしかしたら永遠に出さないとかっていうのもありですよ。出すことが素晴らしいっていうふうには僕はそんなに思ってないんで。すごいもの作りたいっていう、それだけなんで。
──いやいや、でも出してもらわないと。
もちろん出しますけどね(笑)。
音楽っていうのはサイエンスだしアートだと思う
──新作の制作はずっと続いているということですね。
1日も休んでないですね。
──今、主に時間がかかってるのはエンジニアリングの技術面っていうことなんですか?
とりあえずそうですね。ほぼフラットな状態から始めたんで、機材触って勉強して。実際いろいろと試行錯誤しつつ、音響学の本読んだりとか、Amazonで洋書買ったりとか、そういう作業ですよね。
──作詞とか作曲に関してはどうですか?
んー、作曲も変わりましたね。勉強すればするほど音楽の鳴らし方が変わるんで。作曲っていうかアレンジ? アレンジはすごく変わったなあ。プレイしてても曲書いてても、楽しいものは結局すごく合理的なものになるんですね。やっぱりギターが2本同時にジャーンって鳴ってんのに片方聴こえないとか、それは音楽じゃないと思うんです。
──それは、でも相当たいへんな作業ですよね。
だからどこまでやっても終わんないんですよね(笑)。
──スランプというわけではないんですよね?
うん、全然スランプではないです。やっぱ僕は音楽っていうのはサイエンスだしアートだと思うんです。両方だと思うんですよね。音っつうのはパンッて鳴らすだけじゃないんですよ。やっぱり意味があって正しい鳴らし方があって正しいアレンジがあるんです。それを西洋の人たちはみんな一生懸命研究してて。で、そうやって成立した音楽を僕らは借りてきて、見よう見まねでやってるだけなんです。誰も向こうに行ってちゃんと勉強して戻ってきたわけじゃないし、向こうでやってる人はいるけどそれが浸透してるわけじゃないし、極端な話エンジニアなんてみんな機材の使い方全然知らないんですよ。僕も勉強してわかったんですけど、この国は本当にそのくらい幼稚で、そこをちゃんと考えてやってこそ、僕たちが本来持ってる日本人としての文化とか感覚とかっていうものを初めて表現できるんだと思うんですね。みんなすぐ英語じゃないからだとか、湿度が違うからだとか、電圧が違うからだとか言うけど、そんなんじゃないんです、音楽っていうのは。
──はい。
別に僕はハイファイな音を目指してるわけじゃないですよ。音楽っていうのはガレージでちっちゃいMTRで録っても、サイエンスがちゃんとあれば、そういう音が鳴るんです。汚い音でも感動させることができる。僕はホントに思うんだけど、物を作るっていうのは突き詰めて突き詰めて突き詰めて突き詰めた先に、なんか偶然バンってやったものが芸術になりえるってことなんだと思うんです。だから壁にバーンってペンキ投げつけて「これがアートだ」って言うのもいいんですけど、そんなのは子供でもサルでもゾウでもカバでも誰でもできるんです。それはほかのことを全部やったあとでやらなきゃダメなんですね。全部知って全部やったあとで、壁にぶつけたものに自分が鳥肌立てて感動できたら、それをアートって呼ぶことができる。芸術ってのは初期衝動でやるんだよってだけの人は僕は認められないし、そういう人が多すぎるなと思う。
DISC 1
- beautiful survivor
- I'll be there
- Crazy
- nothin'
- majestic trancer feat.VERBAL(m-flo)
- We won't stop
- crazy one more time
- Lost & Found
- Moralist
- The Fire -Alarmix-
- transient happines
- Hi-Fi
- MIRACLE
- beat addiction
DISC 2
- Go the Distance [Hercules]
- The way to you
- Mayonnaise on my toast
- GAME
- Start me up
- Under the Sea [The Little Mermaid]
- ターボ意味無し
- she loves the CREAM
- Lovers Soca
- Everything under the sun
- Fine by me
- Candy House
- Stairs
- after dawn
DOPING PANDA(どーぴんぐぱんだ)
Yutaka Furukawa(Vo, G)、Taro Houjou(B, Cho)、Hayato(Dr, Cho)から成る3ピースバンド。1997年の結成当初は主にパンク / メロコアシーン界隈で活動していたが、ダンスミュージックの要素を大胆に取り入れ、エレクトロとロックのハイブリッドな融合を担う存在に。インディーズでのブレイクを受けて、2005年にミニアルバム「High Fidelity」でメジャーデビュー。時代の空気を反映させたサウンドとエンタテインメント性抜群のライブパフォーマンスで、幅広いリスナーからの支持を獲得する。その後も全国各地でツアーやフェス出演を精力的に展開しつつ、2008年6月には「beautiful survivor」が資生堂ANESSAのCM曲に起用。2008年にはイギリスで初の海外公演に挑戦するなどワールドワイドな活動にも注目が集まっている。