ナタリー PowerPush - 怒髪天

迷わず行こうぜド真ん中! ジャパニーズR&Eの真骨頂

普通に叩けよ

──バンド25年目にして、ものすごくシンプルなところにたどり着きましたね。

これがロック的であるかロック的でないかとか、自分たちの“らしさ”みたいなこと考えたりもするけど、結局“らしさ”なんて「人がどう見てるか」ってことなんだよね。だったら関係ねェなって。自分がやりたいことをやるのが大きな意味で“らしさ”だとすれば、もう好き勝手やったほうがいい。もうロックかどうかもわかんないよ?

──結果的に、完全に「怒髪天にしかやれない曲」になっているという。

普通のロックバンドならまずやらないだろうね。いろんな意味でデメリットもあると思うし(笑)。他のバンドにこういう曲を書いて渡しても、こんな音にはなんないんじゃないかな。

──怒髪天が曲提供って、あんまり想像できないです(笑)。

増子直純

若いバンドがこんな曲をやっても、やっぱカッコ悪くなると思う。20代前半ぐらいのロックバンドだけが持ってる危うさってのは、やっぱカッコいいじゃない。だけどそれだけじゃないからさ、今やロックって。バンドマンの彼女が、バイト先の新しくできた友達に「彼氏バンドやってるんだ」「えーどんな曲やってんの?」なんて言われたときに聴かせて「あー今度ライブ連れてってよ」って仲間に言われるのが、普通のロックバンド。俺らの曲みたいなのが出てきたらさ、バイト先の友達はドン引きだよね(笑)。

──増子さんの中で、昔の怒髪天ではできなかったけど今できるようになったこと、「今はここが違う」というバンド内の変化みたいなものはありますか?

「どう見えるか」を気にする度合いは……他の人たちと比べたらもともと少ないと思うけど、それでもやっぱり多少はあった。気にしてないように見えてたかもしれないけど(笑)。バンド内でも「これはナシ」みたいな。前回のアルバム(「プロレタリアン・ラリアット」)に「セバ・ナ・セバーナ」っていうサンバ調の曲を入れたときも、そもそもサンバなんて絶対ナシだと思ってたの。だけど、楽しさを表すのにサンバが必要なときもあるわけよ。

──サンバが必要!?

あの突き抜けたバカさ加減の、アッパーなリズムじゃないと表現できない能天気さっていうのはやっぱりあるのね。そういうものにも抵抗なく「こっち側に手繰り寄せてこよう」と思えるようになった。今作ってるアルバム(3月3日発売「オトナマイト・ダンディー」)はホントその集大成。恐ろしいものを作ってるんで。俺らに合う合わない関係なしに、いいなと思う曲を選んでる。メジャーセブンスのおしゃれなコードにありえない歌詞とか。そういうふうにも音楽を楽しめるようにはなったかなあ。スキル的な問題も、うまいほうがいいけどうまけりゃいいってもんでもないし。その曲に合わせた塩梅というかね。ほら、やたらスキル出したがる人とかいるでしょ、あれアルバム聴いてらんないよね。小賢しくて。「普通に叩けよ」って思うわな。

──普通に(笑)。

難しくすると賢く見えるってもう小学生の発想だよね。頭良く見られたいってこと自体カッコ悪いでしょ。頭悪い証拠だからね。

──頭良く見られたい人は「ド真ん中節」ってタイトル付けないですよね(笑)。

どう考えてもバカが作ってるわけでしょ(笑)。いや、でもそれでいいんだよね。間違いがないでしょ。「こういうものが欲しい!」と思ったら成分表に書いてあるんだから。

──「ド真ん中」100パーセント。

看板に偽りなし。逆に言ったらそれ以上のものも入ってないから(笑)。ストレートに、それだけ入ってる。

波打ち際のポールにしがみつくことってあんまりないでしょ?

──「ド真ん中節」のビデオクリップを手がけている丹下紘希さんは、もともと増子さんのお知り合いだと聞いたのですが。

そう。上京してからタイル貼りのバイトしてて、そこで当時、白塗りの暗黒舞踏に弟子入りしてた丹下と一緒になって。いつも現場で会ったり酒飲んだりしてすごく仲が良かった。それが映像をやるなんて話になって「留学して帰ってきたらすごいことになってるよ」「マジかよおい」なんて言ってたら、本当にすごいことになった(笑)。一緒にやれたのはすごくうれしかったけど、ホント厳しかったね。

──ビシビシ言われちゃうような?

いや、体力的に。仲良いもんだから遠慮しないし。最初に内容を聞いたときから「これ大丈夫か?」と思ってたんだけど……。

──ひたすら強風を当てられるシーンとか。

強風だけじゃないよ? 水も雨もゴミも来るから。しかも12月だよ!? 外で電柱なんかに捕まっていろんなもん当てられて、もう死ぬかと思ったよね。初めてちょっと弱音吐いた。「来週もう1回やるから、ちょっと今日もう勘弁してくれ」って。

──映像のアイデアは全部丹下さんが考えてこられたんですか?

そうそう。最初は「スカイダイビングどうですか?」って言われて俺絶対イヤだって言ったの。高いとこ嫌いだし。それで「じゃあしがみついてこう。ふんばって、それでも行くんだ、みたいな感じでやりましょう」ということになったんだけど……たぶん1秒たりともまともな顔してるとこないと思うよ。演奏シーンもなければカメラ目線で歌ってるシーンもないからね。雨風受けながら歌ってるシーンばかりだから、だいたい全部こういう顔(すごい表情で)になってる。モノにしがみつくってホント大変だよね。手にアザできちゃって。普通に生きてて、波打ち際のポールみたいなところにしがみつくことってあんまりないでしょ?

──普通に会社勤めしてると、なかなかないですよね。……いや、ミュージシャンでも普通ないですよ(笑)。

タンクにたっぷり水積んだ散水車が来たときは、もうやんなっちゃったよ。よくビデオクリップでスコールっぽい感じで雨降ってるやつあるけど、ホースのスプレーみたいな部分取り外して直接水かけたのは初めてだって。そんな史上初いらねェよ(笑)。全然必要ないでしょ。ビショ濡れになってストーブのところ行ったらすぐあったかいスープをくれるんだけど、飲めねぇって。口ん中にものすごい落ち葉とか入ってんだから。他のメンバーは車の中で待ってんだけど、誰が呼ばれるかわからない状態だからホント怖いの。「次誰が指名されるんだろう?」って。

──クランクアップしたとき、丹下さんからどういう言葉が?

「お疲れさまでした。足りない部分があったらまたやるんで、油断しないでください」と。まだ終わってねぇのかみたいな。「まぁたぶん大丈夫だと思うけど、最悪もしかしたら何シーンか」だって。何シーンかじゃねぇっつうの。

──昔一緒にタイルの目地を埋めてた仲間に。

容赦ないよね。「こんな撮影、普通やんないだろ?」って言ったら「……やらないよね」って言ってたもん。でも映像をヘタにいじったりしないでガチで行くってのは、やっぱ男気として重要だから。普通はもっとラクに撮影して後でどうにかするんだろうけど、完全にガチだからね。

──このCGでどうにでもなる時代に(笑)。

もう全ガチ。だからしがみついてるところが全体的に低い(笑)。

ニューアルバム「ド真ん中節」 / 2010年1月27日発売 / IMPERIAL RECORDS

  • 初回限定盤[CD+DVD] 1890円(税込) / TECI-208 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] 1000円(税込) / TECI-209 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. ド真ん中節
  2. YOU DON'T KNOW
初回盤DVD収録内容

アコースティックライブ映像

  1. 幸福の配分
  2. ビール・オア・ダイ
  3. ドンマイ・ビート
  4. 喰うために働いて生きるために唄え!
  5. なんかイイな

ニューアルバム「オトナマイト・ダンディー」 / 2010年3月3日発売 / 2800円(税込) / IMPERIAL RECORDS

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CD収録曲
  1. オトナノススメ
  2. ヤケっぱち数え歌
  3. ド真ん中節
  4. オレとオマエ
  5. 俺ときどき…
  6. 武蔵野流星号
  7. 悪心13
  8. ふわふわ
  9. アフター5ジャングル
  10. 我が逃走
怒髪天(どはつてん)

1984年に札幌にて結成された4人組ロックバンド。1988年から現在に至るまで、増子直純(Vo)、上原子友康(G)、水泰而(B)、坂詰克彦(Dr)という不動のメンバーで活動中。R&E(リズム&演歌)という独自のジャンルを確立し、精力的なライブ活動を展開。1991年にはメジャーデビューを果たすものの、1996年に活動休止。しかし1999年に、約3年の沈黙を破り活動を再開する。インディーズからの作品発表や本格的なツアーを重ね、2004年にミニアルバム「握拳と寒椿」でメジャー再デビュー。現在もライブを中心に、活発な活動を続けている。