ナタリー PowerPush - 怒髪天

迷わず行こうぜド真ん中! ジャパニーズR&Eの真骨頂

バンド結成26年目に突入した怒髪天が、ここにきて俄然大きな注目を集め始めている。ロックに日本男児の心意気を融合した独自のスタイル「JAPANESE R&E(リズム&演歌)」を貫いてきた彼らが、その持ち味をストレートに表現した新曲「ド真ん中節」は、怒髪天というバンドの存在をより広く知らしめる1曲となりそうだ。ナタリーでは今回、この最高傑作「ド真ん中節」の魅力に迫るべく、フロントマン増子直純に話を聞いた。

取材・文/臼杵成晃 インタビュー撮影/中西求

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全力でふざけていいんだ

──ここ数年の怒髪天を取り巻く環境にすごく“追い風感”を感じるのですが、メンバーの皆さんは現状をどのように感じていますか?

自分のやりたいようにしかやってきてないんだけど、俺らのような音楽を受け取る人が増えたんじゃないかな。最近は、若いうちはずーっとロックやってある程度になったら卒業、みたいなのがなくなったと思うんだよね。聴くほうも演ってるほうも。60歳の先輩だって元気にやってるし。俺らぐらいの──40代のやつなんて普通の企業で考えると一番脂が乗ってる時期でしょ? なんでロック界だけ40代ではもう枯れてるみたいな扱いになってたのか、俺ずーっと不思議だったの。でも、最近は面白がってくれる裾野が広がってきたように感じる。

──ロックフェスの会場だと、怒髪天からすれば企業でいう“部下”みたいな年代のバンドが大勢いますよね。

増子直純

「ロックは若者のものだ」って考えたら、俺らみたいなおっさんは完全に異質なものだと思うから、フェスがその概念を崩すとっかかりにはなってるんじゃないかな。

──怒髪天は特に、これから“おっさん”になるであろう男たちからの支持がすごく厚いですね。

そうね。ありがたいことに。

──この“追い風感”にともなって怒髪天の楽曲自体も、今の年齢だからこその表現がストレートに出ているように感じます。

もはや制御するものがないから。ふざけるのも全力でふざけていいんだってわかったし、「何をやってもブレようがない」っていうか、本当に振りきってもいいんだみたいなのが自分たちの中でより強固になってきた。フェスでいろんなバンドを見てると、わかりやすくないものが多すぎるなと思うんだよね。言いたいことあんなら、なんでわざわざ伝わりづらくしてんのか。アーティスティックかなんか知らんけど。

──はははは。

そんなんじゃ無理。ラブレターと一緒。言いたいことがあったら手紙書いて「好きです」って書いて直接渡すからね。言ったほうが早いのになんだか回りくどい装飾付けてさ、なんだか「何時になったら空見てください」みたいな。こっちはそんな回りくどいことしてる時間もないんでね、寿命的に(笑)。

俺ら「怒髪天」だぞ?

──そんなバンド内の気分を、新曲のタイトルがズバリと表現していますよね。

多少プロモーション的なことを考えたほうがいいんじゃないかって案もあったんだけどね。いくらなんでも「節」って(笑)。もうちょっと間違って買っちゃいそうな、ちょっとしゃれたやつとかシャープな感じがいいんじゃないかって話もあったんだけど「ちょっと待てよ」と。「そういう問題じゃないぞ、どんなに『スイートなんたら』みたいなタイトル付けたとしても、俺ら『怒髪天』だぞ?」っていう。

──確かに(笑)。「ド真ん中節」というタイトルはもちろん、今回は曲自体がこれまでになくストレートで。

小学生でもわかる、ストレートにドカーンと伝わるものが歌いたかったから。ストレートなもの作るとちょっとバカっぽく見えるでしょ? 若い頃はそこに抵抗あるっていうか、賢く見られたいとかあると思うんだけど、もはやないから(笑)。別にバカに見えたってかまわないし、そもそもそんな賢いわけでもないし。

──「ドンドドン、ドンドドン、ド真ん中」っていうそのものズバリなサビもそうですし、サビ頭のドラムが「ドン!」と鳴るのも痛快ですよね。

ベッタベタだからね(笑)。歌入れる前は王道のロックというか、the pillowsとかがやりそうな音を想像してたんだけど、この歌詞乗っけて歌った途端にもう「節」としか言いようのないものになっちゃった。そのぐらいでいいんだよ。

──この曲は、ジャンルとして「流行歌」なんじゃないかなと思ったんですね。たとえば、居酒屋でクダ巻いてる爺さんがサビをちょっと歌っても成立する曲というか、それぐらいの力強さがあるなと。

うん。この歌が恐ろしいのは、聴いてるぶんにはいいけど、飲んだ帰りに夜道歩きながらちょっと口ずさむと泣けてくるからね! 「ああ、俺はこの道でいいんだ」みたいな。そういう歌が作りたかったし、それでいいんだよ。たとえこの世界のどこにいたとしても、自分の道ってやっぱり自分の真ん中にしかないから。今はほら、応援歌みたいなものがいっぱい溢れてるでしょ、世の中に。みんながんばれよー的なさ。

──ちょっと無責任な……安い内容の応援ソングですよね。

そういうものに対してのアンチテーゼっていうか。人にがんばれって言われてがんばれるぐらいだったら、もう最初からがんばってるからね。「ドンドドン 俺のド真ん中」のね、この“俺の”が大事なんだよ。絶対「君の」なんて俺は言わないよ。俺は人のことはわからん! この曲を覚えたやつが「俺の」って歌えば、自分の中から「よしやるぞ」って力が湧いてくるもんでしょ。「おまえもがんばれよ」「あんたもできる」なんて言われてもさ。そういう薄っぺらいものじゃなくて、独りよがりなものでいいと思うんだよね。口ずさんだやつが「私がド真ん中にいるぞ」って思えればいいんだよ。

ニューアルバム「ド真ん中節」 / 2010年1月27日発売 / IMPERIAL RECORDS

  • 初回限定盤[CD+DVD] 1890円(税込) / TECI-208 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] 1000円(税込) / TECI-209 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. ド真ん中節
  2. YOU DON'T KNOW
初回盤DVD収録内容

アコースティックライブ映像

  1. 幸福の配分
  2. ビール・オア・ダイ
  3. ドンマイ・ビート
  4. 喰うために働いて生きるために唄え!
  5. なんかイイな

ニューアルバム「オトナマイト・ダンディー」 / 2010年3月3日発売 / 2800円(税込) / IMPERIAL RECORDS

  • Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. オトナノススメ
  2. ヤケっぱち数え歌
  3. ド真ん中節
  4. オレとオマエ
  5. 俺ときどき…
  6. 武蔵野流星号
  7. 悪心13
  8. ふわふわ
  9. アフター5ジャングル
  10. 我が逃走
怒髪天(どはつてん)

1984年に札幌にて結成された4人組ロックバンド。1988年から現在に至るまで、増子直純(Vo)、上原子友康(G)、水泰而(B)、坂詰克彦(Dr)という不動のメンバーで活動中。R&E(リズム&演歌)という独自のジャンルを確立し、精力的なライブ活動を展開。1991年にはメジャーデビューを果たすものの、1996年に活動休止。しかし1999年に、約3年の沈黙を破り活動を再開する。インディーズからの作品発表や本格的なツアーを重ね、2004年にミニアルバム「握拳と寒椿」でメジャー再デビュー。現在もライブを中心に、活発な活動を続けている。