ナタリー PowerPush - 怒髪天
迷わず行こうぜド真ん中! ジャパニーズR&Eの真骨頂
キーボード買ったし、女性コーラス呼んだし
──今現在はアルバム制作が佳境とのことですが、どのような仕上がりになりそうなのか、ちょっと聞かせてもらっても大丈夫ですか?
去年出したシングルの「オトナノススメ」と今度の「ド真ん中節」が入ってりゃ、あとはなんとでもなるというか、もう核ができてるから。あと何するかっていったら、やりたいことやるだけ。音楽的には、これまでもいろんなチャレンジをしてきたつもりだけど「これはないだろ」みたいなやつでも結局俺たちの色になっちゃって、意外とわかりづらかったと思う。でも、今回はハッキリわかるぐらいのチャレンジをやってるから。「大人が楽しむ」ということに主眼を置いて、大人の新しい概念を作る。「2010年の大人の概念」みたいなのを一発出してやろうかなと。あと、大人になったからこそ昔を思い起こさせるアレンジであったりとかね。キーボード買ったからね、わざわざ。
──おおー。
なんていうの? もう、80年代の音が出るやつ。どうしても「コレが入れたい」って音があって。すごいよ、もう。「安全地帯?」っていうような曲とかあるからね。
──うわっ、それは楽しみですね。今回のいろんなチャレンジというのは、サウンド面が主ですか?
そうそう。歌詞や自分らのキャラクターは、もうブレる部分がないから。要は寿司と一緒だよね。外国行ったら何にしろ酢飯の上に乗ってたら寿司だから。それに近いものがある。酢飯はもうガッチリ作ってるから、何乗っけたら旨いかっていうのを考えないと。とんでもないもの乗っけてやろうかなみたいな。
──完全に4人の核があるから、上にキーボード乗せようが何乗せようが大丈夫と。
うん。“やっちゃった感”があるものをやりたいと思うから、やっぱりそのぐらい振りきらないと面白くない。すごいよ、キーボード買ったし、女性コーラス呼んだし。「フッフー♪」とかあるからね。
──すごくアーバンな雰囲気の(笑)。
80's的な、ミドルテンポのこう……ボディコン着て歌ってそうな。最悪だよね。そういうのもね、思いきって出してます。あと「ド真ん中節」に関して言うと、本当に言いたいことはないっていうか。これまでいくつかインタビューを受けたけど、困るよね。歌詞に書いてあることが全てだから。「なんで作ったのか」とか言わなきゃいけないことがいっぱいあるんだけど、これに関しては本当ないもんなぁ。
──「コンセプトは?」って言われても……。
何の含みもないし、裸で出てっちゃったようなものだから。アルバムはね、結局俺らがやってんだから歌詞の世界観は変わらないんだけど、本当にいろんなもの引っ張りこんでるから、聴いてて楽しいと思う。本格的な音を作って、それを歌と声と歌詞でどのぐらいブチ壊せるか。世界中にいろんなバンドがいると思うけど、この音にこの歌を乗っけてるバンドは絶対いないよ。
何しろあてこすってやろうと思って
──これから先も、怒髪天が進むべき道は明確に見えているようですね。
今までもそうだったけど、そのとき思ったことを全部やろうって。それこそ来年生きてるかどうかわかんないでしょ、俺らだけに限らず。だからやれるだけやって。儲かる儲かんないっていったってね、家賃払って借金しないで暮らせりゃいいから。曲作りはやっぱ楽しいし、一番楽しいのは4人で曲ができたとき。それをずっと続けるには……「これからどうですか?」って訊かれたら、正月のあいさつじゃないけど「まあ健康に気を付けて楽しくやっていきましょう」、それしかないもんね。なんか急に路線変更するのもあり得ないしなぁ。
──これだけ長く続けていると、やっぱり悩んだ時期もありますか?
まあ、悩みというほどのものもそんなになかったかな。基本、バンドで食えるなんて思ってなかったし。パンクから始めてバンドで食おうと思ってるやついないでしょ。何しろあてこすってやろうと思ってやってたわけだから。
──あてこすって(笑)。
「ちょっと給料もらえてラッキーだな」ぐらい。バイトしないようになったぶんだけ、これからどうしようかなっていうのは逆に思うよね。だけどまあ「なんとかなるだろ」と思うし。音楽に費やす時間が増えたっていうのは、ホント幸せだなと思う。ずっと曲のこと考えてるのは、やっぱり幸せだもんなぁ。25周年だっつって「すごいですね」「えらいですね」って言われても、勝手にやってるだけだからね。最初はホメてもくんなかったよね。そりゃホメられるようなことじゃないからね、勝手にバンドやってるだけなんだから。拾った石でも25年磨いてりゃそりゃすごいですねって言われるよ。それと変わんないから。仕事でやってんだったら25年間お疲れさまですみたいな感じだけど、ゴルフとか草野球と変わんないから。
──ひたすら楽しくやってきた結果、25周年ライブ(「オールスター男呼唄 秋の大感謝祭 -愛されたくて…四半世紀-」2009年10月29日、SHIBUYA-AXで開催)の締めくくりが、バンド仲間たちからの胴上げだったというのが、なんとも怒髪天のありかたを象徴してますよね(笑)。これだけいろんなアーティストからリスペクトされている状況は、増子さんとしてはどういう気分ですか?
うれしいね、ホント。リスペクトというか、好かれてる、愛されてるっていうのは、ありがたい。特に嫌われるようなことはしてないつもりだし、ましてや妬むやつもいないだろうし……25年もかかってこうなりたいと思ってるやつもいないだろうし(笑)。1年か2年そこらでガーッと来たやつなら妬まれるかもしれないけど、時間かかりすぎ(笑)。よくやってたなって話ですよ。
──25周年ライブに集まったアーティストは総勢48人。怒髪天の人望を感じさせる賑やかなライブでした。
長年やってると後輩とか仲間もいっぱいできて、ものすごいムチャぶりで1本ぐらいライブできるぞっていうところを表したくてね。何しろメンバーも楽しく仲良く、他のバンドもね、先輩とか仲間、友達と楽しくやってこれるっていうのはもう、これ最高だよね。バンドに限らず仕事でもなんでもそうでしょ? 友達や仲間にはすごい恵まれてるなと思う。そこが一番。
──バンドを長く続けてきてよかったと思うのは、どういうところですか?
楽器は当然やればやるほどうまくなるし、生活でいろんな思いを抱えてれば歌詞はより書けるようになるから、長く続けることはバンドにとってデメリットなんかないよね。ライブ全編走りながら演奏しなきゃいけないんだったら、そりゃ若くないとできないけど、そんなこと言われもしないでしょ。好きにやっていいんだから。疲れたら動かなくてもいいわけだよ。あとルックス。なんかツルツルした感じで売ってたんだったら、やっぱり年々劣化してガッカリする人もいるだろうけど、男なんてのはそんなもんですよ。俺らみたいなバンドはツルっとしてたらおかしいでしょ?
──怒髪天にツルっとしてた時期は……ないですね(笑)。
ツルっとした時期はツルっとしたくなかったからね。髭生やしたり髪伸ばしたりしてたけど、むしろ今ツルっとしたいよね(笑)。
CD収録曲
- ド真ん中節
- YOU DON'T KNOW
初回盤DVD収録内容
アコースティックライブ映像
- 幸福の配分
- ビール・オア・ダイ
- ドンマイ・ビート
- 喰うために働いて生きるために唄え!
- なんかイイな
怒髪天(どはつてん)
1984年に札幌にて結成された4人組ロックバンド。1988年から現在に至るまで、増子直純(Vo)、上原子友康(G)、水泰而(B)、坂詰克彦(Dr)という不動のメンバーで活動中。R&E(リズム&演歌)という独自のジャンルを確立し、精力的なライブ活動を展開。1991年にはメジャーデビューを果たすものの、1996年に活動休止。しかし1999年に、約3年の沈黙を破り活動を再開する。インディーズからの作品発表や本格的なツアーを重ね、2004年にミニアルバム「握拳と寒椿」でメジャー再デビュー。現在もライブを中心に、活発な活動を続けている。