ナタリー PowerPush - 怒髪天

迷わず行こうぜド真ん中! ジャパニーズR&Eの真骨頂

親父の小言

──若い世代が怒髪天を頼もしいアニキとして見ているのと同時に、メンバーのみなさんよりもっと上の世代の人から見れば「骨のある部下」みたいな、魅力的な存在に感じるんじゃないかと思うんですよ。

バンド以外の仕事だっていっぱいしてきたからね。ひどい目にも遭ったし、いろんな経験はしてきたから。普通に勤めてると経験し得ないものも見てきたぶんだけ、働くことの喜びも苦しみも味わってきたもん。1回しか転んだことないやつが「痛い」って言ってんのとさ、10回転んだ俺が「痛い」って言うのだったら「痛い」の伝わり方は違うと思うんだよね。

──でも、爆発的にブレイクして態度がコロッと変わる増子さんも見てみたいといえば見てみたいですよ。

態度が変わったとしたら、そのときはおそらく俺、頭打ってるね。

──あはははは。

ものすごく低姿勢になると思うよ(笑)。恐縮しちゃって「すいません、すいません」ばっかり言うような男になってる。まあ、バンドの勝ちパターンの1つとして「長くやることによって勝ち得るものもあるんだぞ」ってところを見せられたらなとは思うね。正しいと思ってることを続けてりゃ、まあなんとかなるよと。

──こういう「大人」もあるんだよ、ということをどんどん伝えてほしいですね。世間を引っかき回すだけの自由度を得られるぐらい“売れて”もらいたい、というのが希望です。

うん。17歳で最初にバンドを始めたときから、何しろ引っかき回してやろうと思ったぐらいだから。「今、これが正しい」と言われてる価値観で「それ違うだろ!」と思ったこと、いくつもあるでしょ? そういうものに対して引っかき回してやりたいっていうのは昔からあった。常識やマナーもそう。これは違うだろってことにはやっぱ物申していかないと。相手が聞いてるかどうかは関係ないの。何しろ言わなきゃ聞こえもしないんだから。

──ああ、なるほど。

今度のアルバムの曲の中でも歌ってるけど、たとえば引きこもってしまったりとか「逃げる」ことって絶対にダメと言われるでしょ? でも、逃げられるうちは逃げていいと思う。命賭けなきゃならんときはいずれ来るから。だからそれまで逃げてればいいし、最後の最後に勝つために、逃げれば勝ちじゃないけど「今は勝負のときではない!」って決断ができる男らしさも必要であるっていうかさ。昔の武士道は死ぬことによって何かしらのステータスを得るものだったけど、今はもう死ぬの簡単だからね。生きるほうが大変だから。

──悩みを抱えて部屋にこもってる10代の人たちがうっかりこの記事にたどり着いて、怒髪天の音楽になにか感じるものがあったら、このインタビューは大成功ですね。

俺らの言ってることはほとんど親父の小言だよ。でもほら「親父の小言」って暖簾とか湯のみとか売ってるじゃない? お土産で。ということは、小言にも商品価値あるわけよ。

──怒髪天の音楽は「親父の小言」暖簾と一緒(笑)。間違って安っぽい応援ソングに励まされないよう、こちらに導きたいですね。

うーん。タオルぶんぶん回してるやつに「がんばれ」って言われたって、がんばる気しねえだろうしなぁ。

増子直純

怒髪天「ド真ん中節」メイキング

ニューアルバム「ド真ん中節」 / 2010年1月27日発売 / IMPERIAL RECORDS

  • 初回限定盤[CD+DVD] 1890円(税込) / TECI-208 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] 1000円(税込) / TECI-209 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. ド真ん中節
  2. YOU DON'T KNOW
初回盤DVD収録内容

アコースティックライブ映像

  1. 幸福の配分
  2. ビール・オア・ダイ
  3. ドンマイ・ビート
  4. 喰うために働いて生きるために唄え!
  5. なんかイイな

ニューアルバム「オトナマイト・ダンディー」 / 2010年3月3日発売 / 2800円(税込) / IMPERIAL RECORDS

  • Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. オトナノススメ
  2. ヤケっぱち数え歌
  3. ド真ん中節
  4. オレとオマエ
  5. 俺ときどき…
  6. 武蔵野流星号
  7. 悪心13
  8. ふわふわ
  9. アフター5ジャングル
  10. 我が逃走
怒髪天(どはつてん)

1984年に札幌にて結成された4人組ロックバンド。1988年から現在に至るまで、増子直純(Vo)、上原子友康(G)、水泰而(B)、坂詰克彦(Dr)という不動のメンバーで活動中。R&E(リズム&演歌)という独自のジャンルを確立し、精力的なライブ活動を展開。1991年にはメジャーデビューを果たすものの、1996年に活動休止。しかし1999年に、約3年の沈黙を破り活動を再開する。インディーズからの作品発表や本格的なツアーを重ね、2004年にミニアルバム「握拳と寒椿」でメジャー再デビュー。現在もライブを中心に、活発な活動を続けている。