Dizzy Sunfistが、テレビアニメ「マイホームヒーロー」のエンディングテーマ「Decided」を含むミニアルバム「PUNK ROCK PRINCESS」を5月24日にリリースした。
「マイホームヒーロー」は山川直輝、朝基まさしによる同名マンガを原作としたアニメ。しがない会社員の鳥栖哲雄が、娘が半グレの彼氏から暴行を受けていることを知り、裏社会の猛者たちを相手に命と知力を懸けた闘いを繰り広げる。かねてより原作マンガを愛読し、主人公に思いを重ねていたDizzy Sunfistはアニメのために「Decided」を書き下ろした。
音楽ナタリーではDizzy Sunfistと「マイホームヒーロー」の監督を務める亀井隆にインタビュー。アニメの制作スタッフも交えて「マイホームヒーロー」の見どころや「Decided」の制作エピソードについて語ってもらった。
取材・文 / 石井恵梨子
新体制になって変わった部分
──放送中の「マイホームヒーロー」、評判がいいそうですね。
亀井隆 ありがとうございます。
──亀井監督は放送前のタイミングで、原作マンガをアニメ化することについて「正直、『大変だな』と思いました」とコメントしていましたね(参照:アニメ「マイホームヒーロー」来年4月放送!ティザーPV公開、鳥栖哲雄役は諏訪部順一)。
亀井 たぶん実写化想定だと思うんですよね、この原作マンガって。異世界でもなければ特殊なクリーチャーが出てくるわけでもない。普通ならアニメ化するよりはドラマ化することを考えちゃうと思う。なので「この作品をアニメ化するってどうなんでしょう?」という思いが正直ありましたね。全体的にそんなに派手なアクションもないですし。あとはアニメという媒体が、残酷な表現に対する制約が多いもので、当時はそのあたりも正直困っていました。
──それでも進めていく中で、どのように見せていくのか、答えが見えてきた感じですか?
亀井 いや、もう、無理やり進めることにしました。そのうち見えてくるだろうと思って(笑)。
──Dizzy Sunfistの皆さんは原作マンガを愛読していたそうですね。
moAi(Dr, Cho) はい。読んでました。でも今の話を聞いて思ったことですけど、確かにかなり現実味のある話なんですよね。言われてみると、これをアニメにするのは逆に難しいのかなと。でも今、アニメは6話まで進んでますけど(取材は5月中旬に実施)、本当にスルッと観れちゃいますね。
あやぺた(Vo, G) 原作が“ジェットコースタークライムサスペンス”って言われてますけど、本当に読んでて何度も心臓が止まりそうになる感じで。アニメになるともっと怖くて、さらに心臓止まりそうになってます(笑)。
メイ子(B, Cho) うん。やっぱり1話で出てくる、主人公(鳥栖哲雄)が娘の彼氏を殺してしまうシーンがすごく衝撃的やった。アニメならではのキャラの心情がより伝わってくるシーンに昇華されてて、すごく印象に残って。あと、毎回いつもいいシーンで話が切れて、エンディングテーマに入るので、自分でも「おおっ!」となりますね。
──エンディングテーマ「Decided」を制作するにあたって、監督はDizzy Sunfistにどのようなリクエストを?
亀井 いや、もうお任せです。「ご自由にしてください」と。原作を読んで感じたことを、そのまま形にしてもらえれば全然問題ないと思いました。リクエストがないって、逆にちょっと厳しい注文だったかもしれないですね。作り手にとって「ご自由に」っていうのが一番難しいと思うので。
──最初、私の中ではアニメの世界観とDizzy Sunfistの音楽がうまくつながらなかったんです。明るく元気なメロディックパンクロックでは、この話に合わないんじゃないか、と。
メイ子 うんうん。
moAi Dizzy Sunfistって、確かに明るく元気なイメージもあると思うんですけど、哀愁のある切ない曲も得意だったりするんです。だからお話をいただいたときから「けっこうハマるのできるんじゃないかな?」と思ってましたね。
メイ子 うん。メロディックパンク一筋っていう印象がある人もいるかもしれないけど、実は音楽性に振り幅があって、根っこにポップな部分もあるバンドなんですよ。
moAi もともとインディでメロディックパンクをやってきたからその印象も強いでしょうけど、根っこはポップス、J-POP育ち、みたいなところもあるんで。そこは今の体制になってより変わったところかもしれない。メイ子ちゃんのベースが入ってきて、プレイヤーとしてもかなりマッチした実感はあります。今回の「Decided」も、切なくも力強い原作のイメージを頭に入れつつ、制作もかなりスムーズに進められたし。
娘を守るためならなんでもできる
──あやぺたさん、歌詞に関してはいかがでしょう?
あやぺた 主人公の気持ちになってスラスラ書けました。自分の娘への気持ちと重なるところが多すぎましたね。「娘を守るためならなんでもできるよな」というのを第一に考えて、そこから広げていった感じです。初めてアニメのタイアップのお話をいただいてから書き上げた曲だし、すごく楽しかったです。
──ダークな物語であっても、親としては共感できるものだった。
あやぺた そうです。ダークすぎですけどね(笑)。でも子供を守るためならなんでもできるのが親やと思うし、そこは自分なりに、どうやって自分の言葉で曲にできるかなあって考えてました。
亀井 もう、ここまで内容に添ったものを作ってもらえるとは思ってなかったので。ありがたかったですよ。
あやぺた うれしいです!
亀井 アニメでは最後に“引き”と言われるカットを入れるんですけど、そこに「Decided」がかかると作品としてのテンションもすごく上がるんです。合う曲を作っていただいてありがとうございます。
──そのエンディングの映像は、主人公たちの涙から始まりますよね。
亀井 はい。あれ、テーマとしては子供……家族ですよね。演出の神山くん、ちょっと説明してくれますか?
神山翔太郎 はい。エンディングのコンテ・演出を担当している神山です。監督もおっしゃったように「マイホームヒーロー」では家族愛が描かれているんです。まずはそれを推したいなと考えまして。今回焦点となるのは、鳥栖家3人の家族愛、それがあるからこそ哲雄は娘に暴力を振るう彼氏を殺してしまった。ただ、殺されてしまった彼氏の家族側も、純粋に子供が好きだから鳥栖家を追い詰めてしまう。これはどっちがいい悪いって絶対分別がつかないだろうと思うんですね。両極端な悪を誰しも持っているという部分が、今回のエンディングで僕が表現したかったところです。
──最高にハマってます。あの絵と音楽が一緒になる瞬間。
あやぺた もう、感動しました。自分が作った曲に「マイホームヒーロー」の絵が合わさって……なんて言えばいいのか……どっちのパワーも倍増した感じで。いろいろ爆発してました。
メイ子 うん、この部分にこのシーンの画が来るんだ、みたいなのがたくさんあって。すごく好きな映像です。
moAi 僕、メロディックパンクバンドの曲がアニメのエンディングテーマになるってあんまりイメージできなくて。どういう画になるんだろうと考えてたんですけど、送られてきた映像を見たら「完璧です!」って感じでした。
亀井 なるほどね。ありがとうございます。
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日本語詞に挑戦できたことが楽しかった