DIR EN GREY Toshiyaインタビュー|難産の末に完成した、妥協なき12thアルバム「MORTAL DOWNER」 (2/2)

Toshiyaのベーシストとしての自己評価

──今作における、Toshiyaさんのベースプレイやアレンジに関してはいかがでしょう。ミディアムテンポが中心の作品だからこそ、演奏面でこだわったポイントや心がけたこともあるのかなと思いますが。

DIR EN GREYの楽曲には「暗い」とか「難解」というイメージがあると思うんですけど、パート別で聴いてみると実はそんなに難しいことはやっていないんです。ただ、すべてのパートを並べて聴いたときに、妙に難解に聞こえるということもあって、「ARCHE」ぐらいから自分のプレイスタイルをなるべくシンプルにしていこうと考えるようになりました。そうすることで、DIR EN GREYの楽曲の中でそれぞれのパートをつなぐ役割ができるんじゃないかなと思ったんです。「ARCHE」以前のベースはやたらめったら動くベースラインだったし、隙あらば目立つようなフレーズを投入していて。それ自体はすごく面白かったんですけど、アレンジがシンプルになればなるほど、そういう派手さよりも楽曲の骨格になるようなプレイが大切になってきた。加えて、DIR EN GREYはドラム自体がすごく独特なので、そこに合わせるとなると、ベースはシンプルなプレイ、シンプルなフレーズのほうが合いますし、リズム隊としてもより遊べるんじゃないかなと思って。そういうことは、本作において特に意識したことかもしれません。

Toshiya(B)

──その結果なのか、近作でのToshiyaさんのベースはシンプルなフレーズ中心ながらも、より耳に入ってくるようになった印象があって。特に本作はミディアムテンポの楽曲中心なので、その傾向はより強まっているように感じました。

ベースはかなり聴きやすくなったんじゃないかなと思います。その結果としてギターもより何をやっているかがわかりやすくなりましたしね。

──個人的には「歪と雨」のベースラインと音色が、めちゃくちゃ好みでした。

うれしいですね。あの曲、もともとのベースラインは今とは違う感じだったんですけど、アレンジを煮詰めていくにつれて「ちょっとモータウンっぽいラインにしてみたいな」と思うようになって。加えて、音色もちょっとワウを加えて独特のグルーヴ感を作ろうと考えましたが、かといってあまりそっち側に寄りすぎてもDIR EN GREYっぽくなくなってしまうので、その加減を意識しました。実際、あのプレイが含まれている曲があることで、アルバムの流れにおいていいフックになったんじゃないかと思います。

──プレイ自体はよりシンプルな方向へとシフトしている、現在のToshiyaさん自身に対してのベーシストとしての自己評価はいかがですか。

シンプルになればなるほどベースって難しいなと思いますし、それと同時に、年数を重ねてきたからこそやっとこういうこともできるようになったのかなとも感じていて。ただ、自分のベーシストとしての評価という点においては、まだまだだなと。もうちょっと、いろいろやれることがあるんじゃないかなと思いますしね。ただ、それを考えるとキリがないですし、割り切るとはまた違うのかもしれないですけど、そこも含めて自分だと思ってやっていくのが一番いいのかなと。

──今の自分自身を認めることが一番だと。

そうですね。そこから、次に対してまた違うアプローチだったり新しい要素を入れられたら、それでいいんじゃないかなと。

Toshiya(B)
Toshiya(B)

絶対的なものはDIR EN GREY

──ご自身の中で、理想のベーシスト像みたいなものってありますか?

明確にこれ、というのはないんですが、何事においてもオールマイティにできたら一番ですね。もちろん、その中で何かに特化した個性も必要ですけど、個性がありすぎると今度は全部同じように聞こえてしまう恐れもあるじゃないですか。ありがたいことに、DIR EN GREYではこうやって何年かのサイクルでアルバムを出す機会をもらえているので、毎回そこで試行錯誤していくのがいいことなのかなと。その中でまた新しい自分だけの武器を発見できれば、それはそれで幸せなのかなと思います。

──では、表現者としてのご自身はいかがですか。Toshiyaさんは個人のオフィシャルサイト「utakata」でアート作品を公開していたり、昨年は自身初となるアート個展および写真展「Toshiya個展『哀艶の園 -瞬目の静謐-』&写真展『utakata photography 24/25』」を開催したりと、音楽以外の形での表現活動も積極的に行っている印象があります。

そこに関しては、音楽活動における息抜きみたいなものだと考えていて。何事でもそうだと思うんですが、1つのことを長く続けていると、どうしても行き詰まる瞬間がやってきて、もっといろんなものを見たくなったり、やってみたくなったりする。僕にとってはDIR EN GREYというバンドを今後続けていくために、音楽以外の形で外の世界に目を向けていくことは必要な作業なのかなと思っています。

──音楽とは別の形で表現の幅を広げるというよりも、DIR EN GREYを続けていくうえでのガス抜きみたいな?

まさにそうですね。もちろん、その中からインプットできるものもありますし。とはいえ、絶対的なものはやっぱりDIR EN GREYですし、これから先も自分がこれ以上情熱を注げるものはDIR EN GREY以外にはないと思います。

Toshiya(B)
Toshiya(B)

──人生において30年も1つのことを続けられるってなかなかないことですからね。ToshiyaさんはDIR EN GREYを始めた頃、このバンドがどれくらい続くのか考えたことはありましたか?

正直、長く続けばいいなとは思っていたけど、我の強い人たちの集まりでもあるので、どちらかというとそんなに長く続かないんじゃないかなと感じたことはありました(笑)。そう考えると、よくここまで続いたなとは思いますよね。

──そんな我の強い5人が誰ひとり欠けることなく、30年も一緒に活動を続けられたのは奇跡だと思うんですが、なぜここまで続いたんでしょうね。

考え方ややり方っていうのは人それぞれだと思うんですよ。でも、結局「何がやりたいのか」と言われたら、僕らの中には漠然と「カッコいいものを作りたい、カッコいいバンドになりたい」って思いが一番にあって、そこが30年間ブレなかった。もちろん、5人それぞれ個性がバラバラだから、まっすぐ進む人もいれば左に曲がって遠回りする人もいる。だけど、最終的に行き着くところは一緒だと思うんです。だから、こういうインタビューにおいてもそれぞれ違う言い回しになるでしょうけど、最後に出てくる答えに関しては一致するんじゃないかな。あとは……5人それぞれに忍耐力があったから、30年も続いたんでしょうね。みんなわかっているんですよ、壊れるのは一瞬なんだって。

──なるほど。では、Toshiyaさんのバンドの中での役割や立ち位置については、この30年で変化はありましたか?

うーん、もちろん5人それぞれに役割があるとは思いますが、そこはわからないですね。ただ、自分のことはわからないけど、ほかのメンバーを見ていると変わってきたなと思う瞬間はあります。意外とみんな、自然体なんですよ。変な話ですけどこの5人に関しては、何をやろうが何を考えていようが、“ここ”にいればそれでいいんじゃないかと思っていて。物理的なことで言えば、ステージにこの5人がいればいいみたいな感じですかね。僕らが好きだった先輩たちの中には、亡くなられた方も多くなってきましたし、やっぱり永遠はないんだとわかっているからこそ、生きてそこに存在していればいいんじゃないかな。それが一番の役割なんじゃないかと今は思っています。

──4月15日に全国ツアーが始まり、7月18、19日には東京ガーデンシアターでの単独公演「MORTAL DOWNER」も予定されています。それ以降も、来年の結成30周年に向けていろんな活動が控えているかと思いますが、Toshiyaさんはここから先のDIR EN GREYに対してどんな未来を思い描いていますか?

「こうあってほしい」っていうのはあんまりなくて、それよりも「こうあるため」に今後悔いのないように全力でやれたらいいかなという感じですかね。それさえできていれば、その先の未来を後悔なく進めるのかなと。そもそも人生なんて悔いばかりですし、できるだけそれを少なくすることが明るい未来につながるんじゃないかな。最悪生きてさえいれば未来は必ずやってくるので、今は日々全力で過ごしていくことだけを考えたいです。何より、30年間も同じ時間を共有している人たちなんて人生においてそうはいないじゃないですか。ここから先も続けていくためには、それぞれが無理なくやれる方向をしっかりと考えて、この5人でやれるところまでやっていきたいですね。

Toshiya(B)

公演情報

DIR EN GREY TOUR26 Downer Absolutely No One

  • 2026年4月15日(水)神奈川県 CLUB CITTA'
  • 2026年4月19日(日)宮城県 SENDAI GIGS
  • 2026年4月23日(木)神奈川県 KT Zepp Yokohama
  • 2026年4月29日(水・祝)岡山県 倉敷市芸文館
  • 2026年4月30日(木)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2026年5月4日(月・祝)群馬県 高崎芸術劇場
  • 2026年5月5日(火・祝)群馬県 高崎芸術劇場
  • 2026年5月9日(土)大阪府 なんばHatch
  • 2026年5月10日(日)大阪府 なんばHatch
  • 2026年5月12日(火)静岡県 静岡市清水文化会館(マリナート)
  • 2026年5月20日(水)東京都 Zepp Haneda
  • 2026年5月23日(土)愛知県 COMTEC PORTBASE

DIR EN GREY "MORTAL DOWNER"

  • 2026年7月18日(土)東京都 東京ガーデンシアター
  • 2026年7月19日(日)東京都 東京ガーデンシアター

プロフィール

DIR EN GREY(ディルアングレイ)

京(Vo)、薫(G)、Die(G)、Toshiya(B)、Shinya(Dr)からなる5人組バンド。1997年に現メンバーがそろい「人間の弱さ、あさはかさ、エゴが原因で引き起こす現象により、人々が受けるさまざまな心の痛みを世に広める」という意志のもとに結成された。ミクスチャー、ヘヴィロック的な要素をゴシック的な様式美の中で表現する世界観が評価され、日本のみならず海外でもブレイク。2002年にアジアツアーを成功させたのを機に、アメリカ、ヨーロッパ各国にも進出し、熱狂的なファンを多数獲得する。2018年1月に結成20周年を迎えたことを記念してベストアルバム「VESTIGE OF SCRATCHES」を、2026年4月に4年ぶりとなるオリジナルアルバム「MORTAL DOWNER」をリリース。2027年に結成30周年を迎える。