音楽ナタリー PowerPush - DIR EN GREY

3年4カ月ぶり新作が示すバンドの“根源”

DIR EN GREYが通算9作目となるフルアルバム「ARCHE」(アルケー)を完成させた。多くのリスナーに衝撃を与えた怪作「DUM SPIRO SPERO」から3年4カ月ぶりとなる今作は、前作とは異なる作風の1枚。2~4分台のストレートな楽曲群はそれぞれ濃厚な仕上がりで、口当たりはいいものの聴き込むほどに新たな発見が多いものばかりだ。

メジャーデビュー15周年を迎えた今年、ギリシャ語で「根源」を意味するタイトルが冠された今作を携えDIR EN GREYはどこへ向かおうとしているのか。メンバーの薫(G)にアルバムの話題、そしてバンドの未来について話を聞いた。

取材・文 / 西廣智一

始まった途端に曲の雰囲気がわかるようなアレンジ

──前回のインタビュー(参照:DIR EN GREY「SUSTAIN THE UNTRUTH」インタビュー)で薫さんはニューアルバムについて「本当にどうなるかわからない」と言いながらも、キーワードとして「シンプル」「遊び」「のりしろ」というワードを残していて。実際に完成したアルバムを聴くと、そういったキーワードに納得いく、すごく新鮮な作品に仕上がったなと思いました。このアルバムの方向性がある程度見えてきたのは、いつ頃だったんですか?

本当に今年の夏ぐらいですかね。「GAUZE」のツアー(「PSYCHONNECT -mode of "GAUZE"?-」)が始まる前くらい。

──じゃあアルバムの曲がほぼ出そろった時期?

そうですね。

──今作の楽曲は以前と比べると1曲の長さが短いものばかりで、なおかつ質感もかなり違っているように思えます。そのへんは曲作りの時点で意識していたんですか?

薫(G)

はい。ここ最近の何作かのようなアレンジ、曲の作り方というのはやめようと思って、そこをずっと意識して曲を作ってましたね。まあ単純に、以前は長い曲を作りたかっただけなんですけど(笑)。

──長い曲は「DUM SPIRO SPERO」まででやり尽くしたところもあった?

うーん、やり尽くしたという気持ちは俺の中にはあまりないし、まだやれるとは思うんですけど、ほかのメンバーが今はそういうモードではないというか。このアルバムを作る前にみんなで話したときに、そういう感じではないのかなと思ったので、今回は長い曲を作ろうと思わなかったんです。

──メンバーとは具体的にどういう話をしたんですか?

「SUSTAIN THE UNTRUTH」の制作のときなんですけど、まさにシンプルにしたいとか、ライブで何も考えずにプレイできる曲とか、そういう話題です。中でも「音数が少なくて、もっとゆったりした曲をメインでやりたい」という声が多かったので、制作の初期段階ではそういう曲を中心に作って、そこからバランスを見て曲のバリエーションを広げていった感じです。

──今作は16曲という曲数にも驚かされました。今までも13、4曲収録されたアルバムはありましたけど、その中にはインスト曲も含まれていましたよね。でも今回はすべてボーカルの入った楽曲で、67分というトータルランニングにも関わらず不思議と長く感じないんですよね。3、4分の楽曲が中心で、アレンジも複雑に入り組んだものではなく、比較的わかりやすいものばかりで。スルッと聴けてしまうのは、その影響もあるんでしょうかね?

どうなんですかね。ただ、どの曲も始まった途端にその曲全体の雰囲気がわかるようなアレンジを心がけましたし、アルバムを通して聴いたときに中だるみのない曲順にしようとも意識したので、そういう影響もあるのかなと思います。

──長い曲だと、場合によっては数曲分のアイデアを詰め込んでカラフルにするケースもありますよね。でも今回は1曲1曲が単色で、より原色に近いものを見せようという意思が感じられます。

なるほど。今回はリズムとフレーズでがっちり固めて展開していくというよりは、もうちょっと自由度を高くして、雰囲気で持っていく感じがいいんだろうなとみんな思っていたんです。

──それがさっき言っていた「シンプルで、あんまりライブで何も考えずにプレイできる曲」だった?

そうですね。

今まで表に出ていた部分がいろんなところに隠されている

──「PSYCHONNECT -mode of "GAUZE"?-」でもこのアルバムから2曲を先行披露しましたよね。僕も会場で聴いたときに最初はビックリしたんですけど、「GAUZE」の楽曲ともここ最近の楽曲ともちょっと違う雰囲気なのに不思議とほかの楽曲となじんでるなっていう印象もあって。

アルバムの中でもなるべくわかりやすくて、初めてライブで聴いてもつかみやすい曲を選んだつもりです。ちょっとアルバムの予告にはなったかなと。

──シングル「SUSTAIN THE UNTRUTH」で次のアルバムへの予兆を感じさせて、夏のツアーで新曲を先行披露したことで、アルバムに対する期待はどんどん膨らんでいきました。ただここ最近の、「UROBOROS」や「DUM SPIRO SPERO」のカラーやインパクトが相当強いものだったので、これらの作品でDIR EN GREYを知った人たちがこの作品を聴いたときにどう反応するのかがすごく気になるんですよ。

京(Vo)

曲の取っ付きやすさとか音の鳴らし方とかは、ここ最近の作品とは違うと思いますよ。でも、よく聴くと実は「UROBOROS」や「DUM SPIRO SPERO」よりも全然重いものになっていると思うので、聴き応えは前作、前々作以上にあるんじゃないかな。そういう意味ではすごく変わりましたよっていう感じはなくて、単に新しいものができましたよっていう感覚ですね。今までみたいにオープニングが仰々しくはないし、すごい世界観を作ってますみたいな感じは影を潜めている。でも重い部分はアルバム全体に散りばめているつもり。単にわかりやすい部分が表に出てるだけで、逆に今まで表に出ていた部分がいろんなところに隠されているから、じっくり聴き込むと面白いんじゃないかなと思いますよ。

──なるほど。

もしかしたらDIR EN GREYのことを浅くしか知らない人は、このアルバムを聴いても今までと変わらないと思うかもしれない(笑)。でもそんな人にも伝わる要素……コアなファンではなくても興味を持ってもらえるような音像やフレージングは強く意識しました。

ニューアルバム「ARCHE」2014年12月10日発売 / FIREWALL DIV.
完全生産限定盤 Blu-ray [Blu-spec CD+CD+Blu-ray] 9720円 / SFCD-0136~8 / Amazon.co.jp
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完全生産限定盤 DVD [Blu-spec CD+CD+DVD] 8640円 / SFCD-0139~41 / Amazon.co.jp
初回限定盤 [CD2枚組] 3672円 / SFCD-0142~3 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 3240円 / SFCD-0144 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. Un deux
  2. 咀嚼
  3. Phenomenon
  4. Cause of fickleness
  5. 濤声
  6. 輪郭
  7. Chain repulsion
  8. Midwife
  9. 禍夜想
  10. 懐春
  11. Behind a vacant image
  12. Sustain the untruth
  13. 空谷の跫音
  14. The inferno
  15. Revelation of mankind
完全生産限定盤 特典CD収録曲
  1. and Zero
  2. てふてふ
  3. Sustain the untruth [REMIX]
  4. Unraveling [REMIX]
  5. 咀嚼(Acoustic Ver.)
  6. 鱗(Crossover Ver.)
  7. Behind a vacant image(Acoustic Ver.)
完全生産限定盤 特典Blu-ray / DVD収録内容
  • Un deux(Shot In One Take)
  • Chain repulsion(Shot In One Take)
  • TOUR14 PSYCHONNECT -mode of “GAUZE”?- 2014.08.30 SHINKIBA STUDIO COAST(「かすみ」「蜜と唾」「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」)
  • BEHIND THE SCENES OF ARCHE
初回限定盤 特典CD収録曲
  1. Sustain the untruth [REMIX]
  2. 咀嚼(Acoustic Ver.)
  3. 鱗(Crossover Ver.)
DIR EN GREY(ディルアングレイ)

京(Vo)、薫(G)、Die(G)、Toshiya(B)、Shinya(Dr)からなる5人組バンド。1997年に現メンバーが揃い「人間の弱さ、あさはかさ、エゴが原因で引き起こす現象により、人々が受けるさまざまな心の痛みを世に広める」という意志のもとに結成。ミクスチャー / ヘヴィロック的な要素をゴシック的な様式美の中で表現する世界観が評価され、日本のみならず海外でも大ブレイク。2002年にアジアツアーを成功させたのを機に、アメリカ、ヨーロッパ各国にも進出し、熱狂的なファンを多数獲得する。2000年代後半からは海外でもアルバムを発表しており、2008年のアルバム「UROBOROS」はアメリカのBillboard Top 200で114位にランクインした。2011年には約3年ぶりのアルバム「DUM SPIRO SPERO」をリリース。発売直後からヨーロッパや北米、中南米などで海外ツアーも行った。2012年2月からは京の声帯不調を理由に表立った活動を休止していたが、同年10月よりライブ活動を再開。2013年6月には2年ぶりとなるヨーロッパツアー、10~11月には同じく2年ぶりの北米ツアーも実施した。2014年3月8、9日には4年ぶりとなる日本武道館公演「DUM SPIRO SPERO」を敢行。同年夏には1stアルバム「GAUZE」を携えて1999年に行われたツアーの続編「PSYCHONNECT -mode of "GAUZE"?-」も開催された。そして12月10日、3年4カ月ぶりとなる通算9作目のフルアルバム「ARCHE」をリリース。