Devil ANTHEM. 「ADVANCE」インタビュー|念願のメジャーデビューを控え、5人に芽生えた覚悟と決意 (2/2)

デビアンがぶりぶり系アイドルに

──今城沙々さんが作詞作曲した新曲「そわそわチョコレート」もストレートな曲ですが、こちらはかわいらしいバレンタインソングで、デビアンがこういうぶりぶりのアイドルソングを歌うんだという驚きがありました。

あいり でも、ファンの人は待ちに待ってた曲だと思います。デビアンは聴く人をキュンとさせるような曲があまりなくて、「ココロカラ」が唯一そういうタイプの楽曲だったんですけど、メンバーがまだ幼かった初期に出した曲なんですよね。そんな中、「そわそわチョコレート」という大人に近付いた私たちが恋心を歌う曲ができたので、ちょっと恥ずかしい気持ちもありますけど(笑)、ファンの人の反応が楽しみですね。

──デビアンはエモーショナルに歌い上げるタイプの曲のほうが多いですが、こういう直球のアイドルソングを歌うことに苦手意識はないですか?

くるみ 私は「Dark"s" side」とか「Fake Factor」とか、カッコよく魅せる曲のほうが難しく感じます。カッコつけるのがどうしても恥ずかしくなっちゃうというか。どの角度が一番カッコよく見えるか、どんな歌い方がカッコいいかを研究しないとそういうパフォーマンスができないんですよね。でもかわいい曲についてはやっぱりアイドルだから表現しやすくて、笑顔で曲の中の人物になりきるとハマる感覚があるんです。「デビアンってカッコいい曲だけじゃないんだ。こんなこともできるんだ」と思ってもらえるだろうし、私としてはもっとかわいい曲を歌いたいと思っていました。

 私もかわいい曲をずっと歌いたくて。私自身、ぶりぶり系のかわいいアイドルさんに惹かれるものがあって、そういうグループのかわいい曲を聴きながら「デビアンでもこういう曲やったらすごく楽しそう」と思ってたんです。だから、「そわそわチョコレート」を歌えることは個人的にかなりうれしいですね。“ザ・アイドル”という感じでパフォーマンスしたいです。

安藤楓

安藤楓

安藤楓

安藤楓

──この曲は、「まぜまぜまぜまぜ おいしくなーれ♡」「そわそわそわそわ えっと、大好き♡」といったセリフパートも印象的です。

あいり 私が「おいしくなーれ」、瞳が「大好き」のほうのセリフを担当しているんですけど、レコーディングのときに佐藤さんに「さあ、お前の出番だぞ、やってみろ」って言われたんですよ(笑)。「これは演技だよ。入り込むの得意だろ」って。私としてはやっぱり恥ずかしかったんですよ。セリフって歌と違って練習しにくいじゃないですか。家で犬に向かって練習するのも違うし、1人で言ってると恥ずかしくなるし(笑)。だから練習はせずにぶっつけ本番でレコーディングに臨んだんですけど、イメトレはしていたんです。アニメのかわいい女の子になりきった感じでやろうって。アイドルだからかわいいって言われるのに慣れてると思われるかもしれないですが、かわいいって何回言われてもうれしいし、言われたいんですよ。ファンの人にかわいいと思ってもらえるようなセリフを言おうと、「心を裸にしてやれ」って自分に言い聞かせてがんばりました。

 ブースの外で聴いているスタッフさんたちが笑うんですよ。だから、ちょっとイライラしながらレコーディングしました(笑)。「こんな真剣にがんばってるのに、注文多いくせに笑うな」って。

──(笑)。ライブでもこのセリフパートが見どころですね。

あいり 前の曲で喉が開いた状態になってると、かわいくならないかもしれない(笑)。少女のスイッチに切り替えないとね。

 体育会系にならないように気を付けないと(笑)。

楽曲の解釈に対する答え合わせ

──アルバムのタイトル曲「ADVANCE」は、SHINNOSUKEさんが作曲、Relectさんが編曲を手がけたさわやかなクラブサウンドのナンバーです。

くるみ これは鬼ムズの曲ですね。楽曲に対する解釈について、これから先しっくりくるものが見つかるのかという不安があって。ほかの新曲はわかりやすいじゃないですか。笑顔で歌えばいいのか、カッコよく魅せればいいのか、悲しげな表情のほうがいいのかっていう歌い方のイメージが。それに対して「ADVANCE」は音源を聴いたときに困りました。

──作詞はプロデューサーの佐藤さんですね。

くるみ 佐藤さんの詞は特にわからないんですよ(笑)。解釈が難しくて。「Dark"s" side」も同じように難しく感じたんですけど、そのときは私たちが若すぎるからわからないのかなと思ってたんです。でも今でも自分の解釈が合ってるのかわからないし、「ADVANCE」も自分の中で正解を持てないままレコーディングして、振り入れのときもずっと考えてました。ファンの人の前で1回披露してみないと感覚がつかめなくて。でも、こういう難しい曲って私たちがあわてちゃうと絶対に評判がよくならないんですよ。だから、歌とダンスにしっかり自信を持てるように練習しています。

──歌詞を自分の中で解釈できているかどうか、そこがパフォーマンスに影響してくるものなんですね。

くるみ あと振付の先生が、その曲をどういうふうに捉えるかということも大きくて。自分の思ってる解釈でパフォーマンスして、そこに違いがあったら迷子になっちゃうし、けっこう難しい作業ではあるんです。曲を作った人の気持ちと、どんなふうに表現するかという自分たちや先生の解釈、それをちゃんと答え合わせをしていかないと、パフォーマンスしていてしっくりこないんですよね。今回は特にその答え合わせが難しくて……悲しい曲ではないし、未来に向かっているイメージの曲なんだろうとは思っているので、レコーディングでは明るめに決意を決めた感じで歌うことを意識しました。これからライブで披露していって、さらにつかんでいこうと思います。

侑芽 レコーディングもこの曲が一番難しかったんです。特にサビは早口言葉なんじゃないかと思うくらい早く歌うんですよ。苦戦して、何回も何回も録り直しました。でも、私はこの曲が新曲の中で一番好きで、難しいながらもデビアンらしさが出てるなと思います。ダンスパートもあるし、ライブでカッコよくパフォーマンスできるようにがんばりたいです。

あいり 私は意外とこの曲がすんなり理解できたというか、どちらかと言うとわかりやすかったです。私たちにこう伝えたいのかなっていう、佐藤さんからの遠回りのメッセージも入ってると感じました。普段は厳しい人なんですけど、やっぱり愛のある歌詞を書いてくれるんだなって。そのちょっとフェイクのかかった表現が心地いいし、デビアンらしいと思います。レコーディングのときに佐藤さんも「ちょっと難しすぎたね」と言っていたんですけど、その難しい曲をみんなでがんばって解釈しながら歌っていくというところも、佐藤さんが与えてくれた新たな壁なのかなと思います。歌詞の内容が闘志を燃やして前に突き進んでいくという意味だとしたら、そこも今のデビアンと重なるし、リアルに感じます。

竹本あいり

竹本あいり

竹本あいり

竹本あいり

──では、佐藤さんはメンバーのことを考えてこの歌詞を書いたかもしれないと。

あいり 本人に聞いても、たぶんそうは言ってくれないと思いますが(笑)。

 「Dark"s" side」のときは「この歌詞の意味がいずれわかるよ」と言われて、わからないまま今に至るんですけど、「ADVANCE」では「メジャーデビューに向けて突き進んでいきます。まだまだ上を目指します」みたいな前向きな気持ちが表されているんじゃないかなと、最初に歌詞を見たときに思って。それをうまく表現できるかどうかわからないですが、この曲とともにもっと成長していきたいですね。

 歌割り1つひとつにも何か意味があるんじゃないかと思っています。それがなんなのか、今は全然わからないんですけど(笑)、それを探りながらどんどん成長していきたいです。

──もう1つ、アルバムには「不確かな未来」というエモーショナルなロックナンバーも新曲として収録されます。

くるみ 最初に音源を聴いた時点で私が一番好きだったのがこの曲で、アイドルをずっとやってると、めちゃくちゃ盛り上がる曲より、しっかり歌う感じの曲を歌いたくなってきちゃうんですよ。ファンのみんなを感動させたいなって。そういう意味では「不確かな未来」は歌詞がすごくエモいし、ユニゾンが1カ所しかないので、メンバー1人ひとりの熱量と気持ちによってその都度違う表現ができる曲だと思っています。ワンマンで披露したらたぶん泣いちゃいますね。この曲を聴いたときに、すごく大きい会場で歌い上げてる景色が浮かんできたんです。ファンのみんなに向かって心を込めて一生懸命歌っているところ。レコーディングでは目をつぶって、客席にいるファンのみんなの顔を頭に浮かべながら歌いました。

あいり それぞれの心の中の叫びというか、デビアンっていう少女たちが出てくる短編小説や短編映画の世界を味わっている気分になれる曲だと思います。ライブでこの世界観にお客さんを引き込むのは難しいかもしれないですが、私は歌い出しの「闇雲にただ声を枯らしてた」というパートをもらったんですよ。まさに小説の1行目にありそうなフレーズじゃないですか。短い曲ではあるんですけど、しっかり物語を伝えられるように、その歌い出しのパートに責任を感じています。対バンで披露するときは、前のアイドルさんから雰囲気をガラッと変えて、私たちの空間にお客さんを引き込みたいです。

メジャーデビューをあきらめかけていた

──デビアンは5月にビクターエンタテインメントからシングルをリリースし、念願のメジャーデビューを果たす予定です。日比谷野音公演の中でメジャーデビューが発表されたとき、メンバーみんな大粒の涙を流していましたが、改めてそのときの心境を聞かせてください。

侑芽 デビアンに加入して1年くらい経った頃からメジャーデビューしたいという気持ちがあったんですけど、最近はメジャーデビューというものの存在をちょっと忘れていたんですよ。でも、野音で発表されたときは心の底からうれしくて、私はファンの皆さんの前であまり泣いたことがないんですけど涙が止まらなくなってしまって。昔から応援してくださっているファンの方や、家族が自分のことのように喜んでくれたこともうれしかったです。メジャーデビューをさせていただくからには今まで以上にがんばらなきゃいけないし、メジャーデビューした先もいろいろあると思うんですよ。つらいことも、悲しいことも。どんなことも乗り越えていって、期待してくださってる人たちに恩返しできるような大きな存在になっていきたいです。

橋本侑芽

橋本侑芽

橋本侑芽

橋本侑芽

──野音のMCで「『どうやったら売れるんだろうね』といっぱい話し合ったこともあって。周りのグループがメジャーデビューしたり、大きなステージでのライブが決まったりして」と話していましたが、周りのグループの躍進を見て焦る気持ちもあったんでしょうか。

くるみ そうですね……抜かされてると感じることはどうしてもあって。野音に向けてチケットを手売りしたのも、私たちは何もしてないじゃんという焦りを感じたからだし、デビアンよりも大きいステージに立ってるアイドルさんはみんなそれにふさわしい努力をしているんですよね。だから、悔しいと思っていいのかわからないという思いも正直ありました。もっとがんばってたら今もっと違う景色を見ていたかもしれない。いまいち結果がついてきてくれないときは、そう思っちゃうんです。デビアンってアイドルフェスのメインステージ争奪戦みたいな企画には出ないグループで、流行りに乗れてないけど、それとは別のところでがんばってるというのが強みだと思っていて。でも、もっとがむしゃらに戦ってみたかった気持ちがあるというか。だから、メジャーデビューしてやっと周りのグループと肩を並べられる気がします。正直、デビアンにもうメジャーデビューはないと思ってました。

あいり 忘れてたよね。メジャーデビューという目標を。

 昔はワンマンでサプライズ発表があるたびに、「おっ、メジャーデビューかな」って期待してたんですけど、最近は「私たちにはまだ程遠いだろうな」と思っちゃっていて。だから、野音で何か発表があるとしてもメジャーデビューじゃないだろうと思い込んでました。でももしメジャーデビューが発表されたら、メンバーみんなどういう反応になるんだろうと想像したことはあって。ワンマンでのメジャーデビュー発表ってほかのアイドルさんでもよくあるじゃないですか。自分は冷静でいられるのかなとか想像していたんですけど、実際にその状況になると何も考えられなくて、本当にびっくりしました。こんなにバーッて涙が出てくるんだって、すごく不思議な感覚でした。

くるみ やっぱり、メジャーデビューをあきらめかけてたからだろうね。

あいり 邪念じゃないけど、余計なことは考えちゃいけないというモードに自然となってきてたんでしょうね。あきらめ方を覚えちゃったというか。私も涙が止まらなくて、発表のあとに歌った「EMOTIONAL」でも過呼吸になるかと思うぐらい涙が出てきたんですけど、そのときに「あ、私たちちゃんとがんばれてたんだ」という安心感があったし、「1歩1歩本当に進めてたんだ。よくがんばったな、私」と思えました。前に侑芽ちゃんが「この5人で武道館に立つ」と絵馬に書いたことがあって、それをスマホのカメラフォルダーで見返したときに「この5人になるのは必然だったんだ」と感じたんです。この5人だからこそ乗り越えられたものもあったと思います。

──昨年のインタビューで、佐藤さんとグループのビジョンについて話し合い、武道館を目指そうという考えで一致団結したと話していましたが、その道が少し見えてきたのではないのでしょうか。

あいり ちょっと光が差した感じがあるよね。

くるみ 今までは「武道館!」って漠然とした感じで言ってたんですけど、その言葉に重みが出てきました。ほかのアイドルさんを見てきて、メジャーデビューしてからがめちゃくちゃ大変なんだなと感じているし、「武道館に立ちたい」と軽くは言えなくなりましたね。

──3月からはこの春オープンするZepp Shinjuku(TOKYO)公演をファイナルとする毎年恒例の春ツアーが開催されますが、まずはそれを成功させてからですね。

くるみ ここからが正念場と言いますか、今までゆるゆるふわふわやってきた空気を引き締めて、また歩き出さないといけないんだなって。ちょっとドキドキしつつも、がんばろうという覚悟ができています。

Devil ANTHEM.

Devil ANTHEM.

ライブ情報

Devil ANTHEM. SPRING TOUR 2023

  • 2023年3月26日(日)東京都 Spotify O-WEST
  • 2023年4月1日(土)福岡県 BEAT STATION
  • 2023年4月2日(日)広島県 CLUB QUATTRO
  • 2023年4月30日(日)宮城県 Rensa
  • 2023年5月7日(日)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2023年6月17日(土)大阪府 BIGCAT
  • 2023年6月27日(火)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)

プロフィール

Devil ANTHEM.(デビルアンセム)

「Make Some Noise」「沸ける正統派アイドル」をキャッチコピーに活動するアイドルグループ。“楽しく沸けるライブ”を追求し、ステージ上から放つエネルギーとフロアの熱量で独自の世界観を構築している。2022年12月に東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)で結成8周年記念ワンマンライブを開催した。2023年2月にMUSIC@NOTEよりニューアルバム「ADVANCE」をリリースし、5月にはビクターエンタテインメントからメジャーデビューシングルを発表する予定。3月から6月にかけては東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)公演をファイナルとする春ツアーを行う。