デラックス×デラックス、沖縄からやって来た総体重540kg超え歌謡パフォーマンス集団

沖縄出身の7人組パフォーマンスグループ・デラックス×デラックスが6月2日に1stフルアルバム「千紫万紅」をリリースする。

デラックス×デラックスは楽器隊4名の総体重が540kgを超える規格外の歌謡パフォーマンス集団。昭和歌謡をルーツとした珠玉の楽曲を、大迫力の演奏で聴かせるダイナミックなライブや、TikTokなどSNSでのカバー演奏で話題を呼んでいる。

音楽ナタリーでは2月に上京し、ルームシェアをしているというデラデラのメンバーにインタビュー。ミステリアスなメンバーはどのように集まったのか? グループの音楽的なルーツは? 彼らなりの昭和歌謡の定義とは? デラデラを知るうえで役立つベーシックな話題はもちろんのこと、ミュージシャンとしてのこだわりが垣間見える楽器の話題などにも触れてもらった。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 塚原孝顕

“ドラえもんさん”と同じ比率で

──このバンドは、そもそもどうやって集まった人たちなんですか?

アサガオ(Vo) 沖縄にある、某国際大学のですね……。

サクラ(Dr) それいつも言うけどさ、もう言っちゃったらいいじゃん(笑)。沖縄に国際大学は1つしかないんだから。

アサガオ 一応ね、母校に迷惑かけたらいけないと思って。

サクラ このくだり、沖縄県民にしか面白さが伝わってないからね。

アサガオ (笑)。そこのロックサークルで楽器隊のメンバーは出会っていました。もともと私は高校生の頃から派手なものが大好きで、ずっと「派手なドレスを着て派手な化粧をして、ステージで爆音を鳴らす派手なバンドをやりたい」と思っていたんです。そのうえ私は当時から体が大きかったので「どうせならバンドメンバー全員が大きかったら面白いんじゃないか」と思って、サークルで出会った将来有望なメンバーに声をかけたのが最初ですね。

デラックス×デラックス

デラックス×デラックス

スイレン(G) その「将来有望」というのは、「将来的に体が大きくなりそう」という意味です。

アサガオ 私以外はみんなまだ80kgくらいで細かったんですけど、とにかく「全員100kgを超えているバンド」を名乗りたかったんで「そのためにみんな大きくなってね」と。今は無事に全員120kgを超していますし、私もバンドを始めた当初は130kgとか140kgくらいだったのが、今では身長、体重ともに175という理想の体型を手に入れました。

──ドラえもんみたいですね(ドラえもんの公式設定は身長129.3cm、体重129.3kg)。

サクラ おお、伝わった(笑)。

アサガオ そうなんですよ、ドラえもんさんと同じ比率で。で、そういうメンバーを集めつつ、「ド派手な非日常のステージを作りたい」というコンセプトを体現するためにはバンド演奏だけじゃなく、プラスアルファのエンタテインメント性が必要だとも考えていたんです。そんなところに、小学1年生からの幼馴染であるシダがちょうどダンスをやっていたので、パフォーマーとしてスカウトしました。そこからダンスにもどんどん本格的に取り組むようになり、今のSPの子(ラシ、コク)も入って、という流れですね。

──昭和歌謡リスペクトを前面に出した音楽性についても、当初からの明確なコンセプトで?

アサガオ はい。まだまだ勉強中ではあるんですが、「歌謡曲でいこう」というのは最初からありましたね。小さい頃から家でよく祖母がカラオケの練習をしていたので、昭和の名曲の数々に触れて育ったんですよ。自分はその曲の時代を生きていないのに、なぜか懐かしい気持ちになっていたんですよね。「ということは、何か日本人のDNAに直接訴えかける神秘的なものがそこにはあるんじゃないか?」と思って、老若男女に愛されるためには歌謡曲だろうということで。

──「歌謡曲とは何か」を説明するのは意外と難しいと思うんですけど、このバンドではどういうふうに定義してます?

アサガオ そう、難しいんですよ。やっぱり今の話と被りますけど、日本人のノスタルジーを駆り立てる要素が詰まっているのが歌謡曲、昭和歌謡なんじゃないかなと思っています。しかも、それが「古くさい」ではなく「懐かしい」というふうになるのが特徴なのかなと。

サクラ デラックス×デラックスの曲作りにおいては、実はそんなに昭和歌謡を意識していないんですよ。現代に生きる私たちが狙って昭和歌謡っぽいアプローチをすると、ただ単に古くさいものになってしまいがちなんです。だから意外と現代っぽいアプローチをしていたりもしますね。

アサガオ あとは、歌詞ですよね。私が作詞で意識しているのは、カタカナの使い方にこだわることで一種の艶っぽさを出すことと、なるべく直接的な表現を避けて比喩的な美しさを追求すること。

──その歌詞ですけど、テーマ的にはまさに歌謡曲でよく歌われていたような“念の強い女の恋愛”が多いですよね。

アサガオ そうですね(笑)。私が憧れるパワーのある女性……世の中で一番強い生き物って、女性だと思っているんですよ。そうなりたいという気持ちと、でもそういう女性がふと見せるホロッとした儚さにもすごくグッと来るので、そういうものを表現したいと思って歌詞を書いています。

デラックス×デラックスの音楽的ルーツ

──ルーツ的な部分も知りたいんですが、どういう音楽を聴いてきたんですか?

アサガオ 自発的に聴いてきたものは、実は全然歌謡曲ではなくて……あ、百恵ちゃん(山口百恵)だけは聴いてましたけど(笑)。小中学生の頃はRADWIMPSや椎名林檎を好きで聴いていて、世代的に流行っていたものとしてボーカロイドやアニソンなんかも聴いてきました。

アサガオ(Vo)

アサガオ(Vo)

──人気どころが多いですね。つまり、歌謡曲というスタイルを“意識的に選んで”やっているわけですね。

アサガオ そうですね、はい。

──バンドの皆さんはどうですか?

スイレン 私はパンクやメロコア、2000年代のインディーズバンドがめっちゃ好きで。特に好きだったのがELLEGARDENなんですけど、あとは海外だとFoo Fightersとかそのあたり。ハードロックも聴きますし、ギターが中心のいわゆるギターロックを多く聴いて育ちました。

スズラン(B) 私は、凛として時雨一本で。

アサガオ 偏ってるなあ。

スズラン 尖ってたんで。唯一ハマった邦楽バンドが時雨だったんです。

──なるほど。ちょっと極端ではありますが(笑)、お二人に関してはけっこうイメージ通りです。サクラさんは?

サクラ 私は……音楽そのものが好きだったので、めっちゃ雑多にいろんなものを聴いて育ったんですよね。洋楽も邦楽も聴くし、その中に昭和歌謡もあったし……。たぶん根っこにあるのは、マイケル・ジャクソンあたりの80年代ダンスポップになるのかなと思います。お母さんがよくそういうものを聴いていたので。

──なるほど。いろんなものを聴いてきてるから、曲を作るときの引き出しもいっぱいあるわけですね。

サクラ そうですね、そんな感じはします。

サクラ(Dr)

サクラ(Dr)

──というか、メインソングライターがドラマーというバンドもけっこう珍しい気がするんですが……。

アサガオ ああ、そうかもしれない。私たちの周りには意外とそういうバンドもいましたけど。

スイレン サクラちゃんの場合、そもそもドラム一本の人じゃないからってのもあるけどね。

アサガオ 確かに。最初のライブではキーボード弾いてたし。

──そうか、本来はマルチプレイヤーなんですね。

サクラ そうですね。大学のサークル時代はギターやベースを弾くことのほうが多かったかな。ドラムも遊びでやってはいたんですけど、ちゃんとドラマーとしてバンドに参加するのはデラックス×デラックスが初めてかも。今ではドラムが一番性に合ってると思ってますけどね。