沖縄発の規格外パフォーマンス集団・デラックス×デラックスが6月11日にニューアルバム「超重ギガ」をリリースする。
楽器隊4人の総体重が555kgというインパクトあるビジュアル、成長し続ける個々の音楽的スキル、昭和歌謡や地元沖縄というルーツを飛び越えたバラエティに富んだカバー曲のセンスなどを武器に、ライブに明け暮れる日々を送っているデラデラ。音楽ナタリーでは2023年の上京から2年、濃密な日々を過ごしてきた7人に近況を聞いた。デラデラのオリジナル曲に加え、中森明菜、モーニング娘。、イクマあきらのカバー曲などが収録された渾身の「超重ギガ」の仕上がりやいかに。
取材・文 / 小野田衛撮影 / 塚原孝顕
とにかく場数を踏んだ上京からの2年間
──前回、音楽ナタリーに登場していただいたのが約2年前。1stアルバム「千紫万紅」リリースのタイミングでした。それからバンドを取り巻く環境も大きく変化したのでは?(参照:デラックス×デラックス「千紫万紅」インタビュー)
サクラ(Dr) 前回は東京に出てきた直後くらいでしたからね。さすがにいろんなことが変わった気がします。単純に集客力が増えたし、それに伴ってライブの規模感も大きくなりました。
アサガオ(Vo) あとはバンドとしての技術も確実に上がりました。この2年間、とにかく場数を踏んできましたから。
──動員が増えたのは、何かきっかけがあったのですか?
スイレン(G) 「千鳥の鬼レンチャン」(フジテレビ系)に出たことは大きかったけど……でも、そういう露出がすべてというわけでは正直ないんです。
アサガオ 基本、「なんでもやる」という姿勢でいるんですよ。テレビもTikTokもYouTubeもインスタのショート動画もラジオも、やれることはなんだってトライする。「出会う機会は多いに越したことはない」という考え方なので。あと、うちらのライブってリピーター数がすごく多いんです。「一度観たら、それで終わり」というわけじゃなく、繰り返しライブに来てくれて。それで増えていったんじゃないかな。
サクラ そうだね。あとは口コミで広がっていくパターンが多いんです。気に入ってくれた人が、友達をライブに誘ってくれたりとか。
──生活面に関しては、この2年で変わったことはありますか?
アサガオ うーん、生活といっても全国ツアーを回ったり、毎月5本くらいワンマンやったり、ひたすら移動するような日々ですからね。
サクラ ありがたいことに上京してからずっと忙しくさせてもらっています。ライブの本数も前より増えていますし。
シダ(上手守備 / SP) ここで少し時間の余裕ができたら、逆に不安になるんじゃないかと思う。スケジュールが詰め込まれた今の生活に慣れちゃった部分はありますね。
昭和歌謡へのあくなき思い
──デラックス×デラックスのライブで驚かされるのは、カバー曲が非常に多いこと。それも昭和歌謡系の懐かしい楽曲が目立ちます。
アサガオ 現状、ライブのセットリストでは2/5くらいがカバーです。なぜかというと、「あたしたちの曲を知らなくても楽しめるステージを」というのが一番の理由。そもそも最初の2年間はカバー曲しかやっていなかったんですよ。そこからオリジナル曲がどんどん増えていきましたけど、根本の考え方は変わっていないんですよね。「誰でも楽しめるような歌謡曲を用意しよう」って。もちろん個人的にも歌謡曲は大好きですし。
──選曲はどうやって決めているんですか?
サクラ 「みんなが知っているかどうか?」という楽曲の知名度は最初に考えます。もっとも世代的に違う私たちでも知っているレベルということは、その時点で有名な曲なのは確かなんですよ。そういう時代を超える曲というのは、やっぱりパワーがあるんです。「ダンシング・ヒーロー」や「かもめが翔んだ日」みたいな曲は大勢で盛り上がれますし。特にライブで演奏する曲は知名度がポイントになるかな。
アサガオ 最近は昭和だけでなく、平成のヒット曲もたくさんやっているんです。「LOVEマシーン」とか。上京前は昭和歌謡……それも女性歌手の曲にこだわっていたんですけどね。そこは少し変わった部分かもしれない。歌詞も含めて我々にぴったりなら、「ダイナミック琉球」でも「YOUNG MAN(Y.M.C.A.)」でも時代とか関係なくやりたいなと今は思っていまして。
──これだけメンバーの人数がいると、どの曲をやるかで揉めたりすることもあるのでは?
サクラ アサガオが中心になって決めることが多いけど、文句はめっちゃ言います(笑)。
シダ そこはアレンジの問題が大きいんです。カバーしたい曲があったとしても、それをそのまま演奏するということはまずないんですね。「これをどうやってデラックス×デラックスの色にしていくか?」ということを楽器隊が試行錯誤して、さらに振付を乗せてみる。その結果、「やっぱ、ないわ」って感じでボツ曲になることもけっこうありまして。あとは1回ライブでやってみたものの、なんかしっくりこなくてやめたりとか。逆にライブでどんどん進化していくカバー曲も多いですし。
スズラン(B) やっぱり一見さんに楽しんでもらおうと思ったら、カバー曲っていうのは強いんですよ。若い人だと、うちらのカバー曲を聴いてオリジナルを知るということもあるみたいなんです。
アサガオ いずれにせよ、時代が変わったところで名曲は名曲のままですから。これからもカバーは続けるつもりです。
卓越した歌唱力とハイレベルな演奏
──デラックス×デラックスはビジュアルのインパクトが先行してイロモノと見られがちかと思いますが、単純に歌がとてもうまいし、演奏力も非常に高いです。このあたりのギャップについて、自分たちではどう考えているんですか?
サクラ ザ・ドリフターズの演奏が下手だったら面白くないと思っていて。そういうことなんです。この見た目で演奏が下手だったら、それこそイロモノとして思われてしまってもしょうがないので。コミックバンドの方たちってきちんとした技術のうえに面白さがありますからね。
アサガオ 仮にコミックバンドだからといって、それが音楽を怠けていい理由にはならないと思う。あたしはカッコいいと思うからドレスを着ているわけであって、それと同じように演奏や歌もカッコよくないと納得できない。そういうカッコいいバンドになろうと必死でがんばっているだけなんですよ。
──氣志團、米米CLUB、すかんち、聖飢魔Ⅱ……コミカルに見られがちなバンドこそ、実は演奏力が卓越しているという現実もあります。
サクラ 我々もその域に到達したいんです!
コク(中央守備 / SP) そもそもなんで自分たちがバンドをやっているかというと、「それでカッコいいと思われたい」という気持ちがあるわけです。カッコいいステージを作るにあたり、そこに付随して今のビジュやらキャラが固まってきたわけで。
サクラ 真面目なバンドだと思いますよ。自分たちで言うのもアレですけど(笑)。そのアホみたいな真面目さが観る側にも伝わって、「ダンシング・ヒーロー」の演奏中に感極まって泣き出すお客さんがいらっしゃるんだと思います。
シダ 別に「ダンシング・ヒーロー」なんて泣ける曲じゃないのにね(笑)。熱量にやられちゃうのはわかります。「LOVEマシーン」みたいなバイブス高めの曲でも、感動して涙ぐんだりしていますし。
──どういうことなんでしょうね、それは。
シダ 理由なんてないんですよ。「なんでかわからないけど涙が出てきた」みたいな感覚。実際、インスタとかX(Twitter)でそういった感想を目にしましたから。
コク でも、確かに不思議な心理状態ですよね。喜怒哀楽のどれにも当てはまらないのに泣けるという。「カッコよすぎて泣ける」ってことなのかな?
アサガオ 感情がカンストしているのかも(笑)。
──先ほど、「自分たちはコミックバンドではない」という話が出ましたが、ジャンルの枠でいうと何に該当するんでしょうか?
アサガオ うーん、なんなんだろうな……。別に我々は面白いと思われようが、カッコいいと思われようが、かわいいと思われようが、そこはどうだっていいんですよ。とにかく楽しんでもらえたら、別になんだっていい。やっぱりライブハウスには非日常を求めて来ている人が多いと思う。なので、あたしたちはとにかくデカい音を鳴らして、ド派手な恰好をして、普段のモヤモヤを吹き飛ばせれば最高だなって。どう受け止めてもらえてもOKだから、あたしたちはひたすらマジにやるだけ。ウケ狙いに走っている感覚はないんです。
サクラ ジャンルってことに関していうと、一応、自己紹介のときは「沖縄発の7人組パフォーマンスバンド」と言っていますけどね。沖縄出身ということくらいしか説明できる特徴がない(笑)。
──SNSではしばしばアサガオさんの驚異的な歌唱力が話題になっています。ほかのメンバーは、そのことをどう受け止めているんですか?
シダ うちらからすると当然の話。騒がれなかったら逆におかしいと思う。
ラシ(下手守備 / SP) 歌のうまさって一番わかりやすい要素ですよね。前に出ている分、見つかりやすいと言いますか。
コク 沖縄時代から、友達の中で飛び抜けて歌がうまい存在だったんですよ。カラオケに行くと、みんなアサガオに「次はこれを歌ってくれ」って自分の好きな曲をリクエストしていましたから。そもそもアサガオの歌がうまいから、このバンドが始まったようなところもあるし。
シダ うまいだけじゃなくて、一瞬でその場の空気を持っていく力がハンパじゃない。やっぱりステージに立つべき人間っているなって思いますね。
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ルーツが沖縄であることの意味