かわいいだけじゃない電波ソング「イッき♡いっぱつ」
──そして3曲目は桃井はるこさん作詞、ヤマモトショウさん作編曲の「イッき♡いっぱつ」です。
古川 モモーイさんは同じ秋葉原界隈だけどこれまでほとんど接点なくて、我々が神とあがめている方がついに!という感じです。
相沢 なんなら私、ディアステージでアンセブ(UNDER17)の曲をカバーしていた人間なんで。
──モモーイさんと小池雅也さんのユニット・UNDER17は、2000年代萌えソング界の伝説的な存在ですもんね。
相沢 この曲はパッと見かわいいエロゲとかギャルゲーのテーマソングっぽいんですけど、歌詞にはモモーイさんやもふくちゃんの伝えたいことがすごく詰まってるんです。だから初めて聴いたとき「わ、この曲は私たちが昔大好きだった電波ソングだ」と思った。電波ソングってかわいいだけじゃなく実は深い意味があったり、泣けるほど切なかったりするんですよね。
古川 モモーイさんとヤマモトショウさんが我々の曲でご一緒されてるのもうれしい。交わらない世界だと思ってたので。
鹿目 そういえば、実はこの曲で私、ハモリパートを歌ってるんですよ。
相沢 歌い出しのところ、あおにゃんとひなちゃんの歌に重なってるんだよね。
──言われてみれば何か不思議な歌声が聞こえますね。
鹿目 レコーディングでは主旋律を普通に歌ってたつもりなのに、いつの間にかハモ担当になってました。もふくさんに「メロディは気にしなくていいからとにかくかわいく歌って」と言われて、必死にかわいく歌ってたんですけど。
小鳩 私はぺろりんのあとにレコーディングに行ったら、もふくさんが笑いながら「ぺろりんの音1個も合ってない!」「これ面白いから使おう!」って言ってました。
相沢 私もスタジオ行った瞬間に「ぺろりんが天才だからちょっと聴いて」って言われた(笑)。
古川 その歌声がこの曲に奇跡的にマッチしたんだよね。
空野 ライブのときが大変で、日替わりで全然違うメロディ持ってくるからこっちは血眼です。
高咲 しかもすぐ隣の至近距離に来て歌うんですよ。不協和音がとんでもなくて。
鹿目 いいよいいよ! 傷付かないよ私!(笑)
相沢 でもよく考えたら、私たちが好きだった電波ソングってあえて上手に歌わずズレてる音に萌えを見出したりしてたなって。そこにストーリーがあって意味がある。そんな気持ちをぺろりんが思い出させてくれたんです。グッジョブ!
高咲 この曲の歌詞は「ゆうべ投げたお星様の相手の素顔はみれない」みたいにスパチャとかVtuberとかのことを歌ってたり、「人権ペンラ」っていう言葉が出てきたり、そういう現代の話と昔から伝わる萌えが交わってるのがいいなと思いました。
天沢璃人 わしこの曲、好きだなって気持ちが脳みそからあふれるんですよ。かわいく歌うことって自分の中では難しいなと思ってたんですけど、曲中で「何にでもなれるの」って言ってるしなと思って、「ロボウェイトレス にゃおにゃお鳴く」のところは自分が歌いたいって言いました。
相沢 かわいいのう(笑)。
めっちゃロックスター「でんぱでぱーちゃー」
──「でんぱでぱーちゃー」は作詞が畑亜貴さん、作編曲が浅野尚志さん、演奏がギターウルフという意外な制作陣による楽曲です。一部の歌詞が「らま? ぴょれりん! ぱらちゅあ ぱりちゅぱ」と意味不明だったんですが。
藤咲 「らま」が「好き」ですね。
──え、意味がある? 何語なんですか?
相沢 “畑亜貴語”です(笑)。
小鳩 「ぴょれりん」は「もちろん」です。
高咲 レコーディングのときの歌詞カードに翻訳が書いてありました。
古川 あ、でも聴いてる人は意味わかんないままでいいのかも。私も全部はわかってないし、全部の歌詞に思いを込めて歌っているわけでもないし。そういうのも私は好きですね。
藤咲 確かに最初は意味わかんなくても、歌って踊ってレコーディングしてお客さんの前で披露して、その中でだんだん完成していくんですよね。この曲は「いままでなんとかなったし これからなんて誰にもわからない」って歌詞とか、ホントにその通り!と思いながら歌ってます。
鹿目 うん。私も自分のパートの「本当のことしか言いたくない だってハートが濁っちゃう」と「思っていないこと言いたくない だって嘘ってばれるじゃん」のところ、でんぱ組.incの今までの歌詞で一番等身大の自分に近い気がして。この歌詞に出会えたことがうれしいです。
古川 それが畑亜貴さんだよね。いつも未来予想みたいな言葉をくれる。今回も「でぱりぴ WAO」みたいな謎の言葉も使いつつ、実は芯のある歌詞だなって思います。
──この曲はギターウルフのセイジさんのシャウトも効いてますね。
小鳩 私たちが歌入れしたときはギターウルフさんの声は入ってなかったんです。完成したときに初めて聴いたらカッコよすぎて、めっちゃロックスターだなと思いました。
古川 そこ、ライブではりあちゃんが叫んでて最高なんでぜひ観てほしい。
鹿目 あれメンバーが日替わりでやっていくって聞いてたけど、私もうずっとりあぴでいいと思う。
頼んだらいけたよ「THE LAST DEMPASTARS」
──そしてラストの「THE LAST DEMPASTARS」はフランスのロックバンド・Tahiti 80のメンバーが作編曲を担当しています。もふくちゃんもよくTahiti 80に頼もうと思いましたね。
空野 「頼んだらいけたよ!」って言ってました。
藤咲 そんな感じなの?(笑)
古川 作詞のヒャダイン(前山田健一)さんもこの曲のことをツイートしてて、それぐらいTahiti 80っていろんな人のルーツにいるんだなって。
高咲 私は最初にこれを聴いたとき、すごく怖かった。生暖かい空気の中でみんなでぼーっとしてるような雰囲気があって。何もない怖さというか。でも、それがだんだん何もないからこそ先に何があるかわからないっていう楽しみに変わっていって。
相沢 ちょっと白昼夢っぽいよね。
古川 死ぬときにこういう気持ちになれたらいいですよね。これくらい穏やかに死ねたら万々歳みたいな。
相沢 ここ最近のでんぱ組.incは妄想とか萌えキュンとか怒りとかだけじゃない、こんなふうにちょっと痛いところを突いてくるような、複雑な気持ちも歌えるようになったんだなって思う。
藤咲 「痛みに慣れなんかないのに たくさんの傷 もう平気 そう思い込まなきゃ 泣いちゃうじゃん」っていう歌詞はここ5年くらい思っていたことをポンと出された気持ちだったな。あと「P P M Y M L : Colorful Stars」のところは卒業していった子たちの担当カラーの頭文字なんですよね。みんなが後ろで見守ってくれているからこそ泣いてちゃダメだ、前を向かなきゃなって思いました。
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ちゃんとアイドルをやらなくちゃ