音楽ナタリー Power Push - デーモン閣下

熱狂的“信者”を迎えて放つ5年ぶりのソロ作

いろいろなジャンルに信者がいる

──羽田さんが書いた「Stolen Face」はSNS社会をテーマにした歌詞ですが、これはまるで……。

聖飢魔IIの歌詞だよね(笑)。羽田氏はある意味直球で来たなと。先ほども言ったように「社会を切る」というのは聖飢魔II……いや吾輩作の歌詞の王道だからな。

──羽田さんは熱狂的な聖飢魔IIの信者ですからね。この歌詞からも聖飢魔IIに対する愛が伝わってきます。

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羽田氏はテレビなどで聖飢魔IIのことを話すから目立っているけど、ほかの2人も相当な信者だよ。ブルボン小林氏は去年、聖飢魔IIが小教典(シングル)をリリースする際に取材に来てくれたのだが、約2時間、30年間の活動を振り返って「あのときの聖飢魔IIはこうだった」とほとんど1人でしゃべってたから。吾輩は「うんうん」「ふーん」って聞いてただけ(笑)。

──あははは(笑)。

ほかにもいろいろなジャンルに信者がいるねえ。脳科学者の中野信子先生、能楽師の山井綱雄氏、プロボクサーで元世界チャンピオンの五十嵐俊幸氏などもそうだな。今回は文筆家に歌詞を依頼して、その詞に曲を付けたわけだが、非常に興味深かったな。メロディを作るときは1コーラス目の歌詞をもとにするのだが、2番を歌うときに「ここの抑揚がいまいち合わない」とか「ブレスの位置が変わってしまう」という事態がどうしても起きる。意味とニュアンスを考えながら、1文字ずつ調整する作業が必要になるんだよね。「できあがってみるまでどういう曲になるかわからない」というのも吾輩にとっては冒険だったな。

──なるほど。ミュージシャン以外のクリエイターにこれだけ強く支持されているのも魅力の1つだと思いますが、若いバンドやミュージシャンとの交流はありますか?

すごくたくさんではないが、少しはある。例えば「CLASSIC ROCK JAM」という催しでは、出演者と楽屋でいろいろ話したり……まあ、そんなに若い連中ではないが(笑)。あとは8-BALLが経営している沖縄のライブハウスの16周年イベントで高崎晃(LOUDNESS)、天才ギター少女の桜花や11歳の木内慶次(Keiji by ZERO)たちとセッションしたり。若いミュージシャンともっと交流を持ちたいという気持ちもあるのだが、例えば夏の音楽フェスなどは基本的に当日の現場でのリハーサルがなくて、本番直前にステージに行って“ショウ”をやるだけだからね。この格好でほかのバンドを客席から観るわけにもいかないし(笑)。昔から隔離されがちなところがあったかもしれないな。

ギャップはずっと感じている

──「EXISTENCE」というアルバムのタイトルについて聞かせてください。

「EXISTENCE」は「存在」「実存」といった意味を持つ言葉だが、今回のアルバムを客観的に聴いてみるとそういうことに抵触する歌が多かったんだ。「私はなぜ、こういう存在になっているのか」「私の存在価値とは何か」「自分が望む存在になるためには、どうしたらいいのだろうか?」という。そういうテーマの曲がほとんどかもしれないね。

──閣下ご自身も現在の自分の存在と、もともと思い描いていた自分のビジョンとのギャップを感じることがあるんですか?

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そのギャップはずっと感じているし、今現在もそうだ。例えば今回のアルバムに関しても、そのバランスはかなり意識していたからな。アーティストとしての自分とエンタテインナーとしての自分、さらに「こういうことをやれば人は喜ぶ」ということと「今自分が探求してみたい」と思うことのギャップ。自分が探求してみたいことだけを押し通してしまうと、いろいろな意味で危険が伴う。そのさじ加減を考えながら制作した結果が「EXISTENCE」というアルバムなわけだ。

──バンドではある程度ファンの要望に沿い、ソロアルバムでは好きなことをやる、という考え方もあると思いますが、閣下の場合はソロでもしっかりバランスを取るということですね。

うむ。もっと突っ張って、アーティスティックな部分を追い求めてもよかったのだが、それにはちょっと時間が足りなかった。探求してみたいことをディープにやろうと思えば、既存の雛形を使わずコツコツ組み立てていくしかないから、どうしても時間がかかってしまうのだ。だが吾輩は年中“必ずしもアートではない活動”に追われている。むろんそれらも“表現者”としての自分が選択している活動だ。“望まれること”と“探求してみたいこと”のバランスを取るというのは歌詞に関しても同じで。今回は人に書いてもらうという試みをやったが、信奉者から「こんな内容の歌を歌ってください」という便りが来ることもある。「先日、こんな事件が起きましたね。閣下だったら、あの事件をどんな歌にするのでしょう? ぜひ聴いてみたいです」とか。

──「正統派のヘヴィメタルが聴きたい」というリスナーもいますよね。

それは男に多いね。音楽的なところでは今回はわりと吾輩の得意なこと…ハードポップスを多くやった感じで、必ずしもそういう要望には完全には応えてはいないが。「それの何がいけねえんだ!」とも思うけど(笑)。

──4月から6月にかけて全国ツアー「DEMON'S ROCK "EXISTENCE" TOUR, DC19」が開催されます。アルバム「EXISTENCE」の楽曲をガッツリ聴けるツアーになりそうですね。

まあこれだけ長くやってると「コンサートで客が聴きたい曲」っていうのもあるから、昔の曲をどれくらい入れるかを考えつつ、セットリストを決めようと思っている。ただ、今回のアルバムは「コンサートでやってみたい」という曲が多いんだな。吾輩も楽しみだけど、同時に「しんどそうだな」と思う部分もあるという感じだ(笑)。

ニューアルバム「EXISTENCE」魔暦19年(2017年)3月15日リリース / アリオラジャパン
初回限定盤 [CD+DVD] 4104円 / BVCL-785~6
通常盤 [CD] 3240円 / BVCL-787
CD収録曲
  1. 深山幻想記 序曲
  2. ゴールはみえた
  3. Forest Of Rocks
  4. Just Being -ここにいる そこにいる-
  5. Shibuya Scrambled Crossing
  6. 地球へ道づれ!
  7. てふのやうにまひ
  8. 方舟の名はNoir
  9. 深山幻想記 -能Rock-
  10. Post Truth -青空が殺気立つ-
  11. Stolen Face
  12. Heavy Metal Strikes Back -血まみれの救世主(メサイア)たち-
初回限定盤DVD収録内容
  • 「ゴールはみえた」Music Video
  • H.E. Demon Kakka's Commentary
デーモン閣下「DEMON'S ROCK "EXISTENCE" TOUR, DC19」
  • 魔暦19年(2017年)4月21日(金)
    大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 魔暦19年(2017年)4月30日(日)
    東京都 チームスマイル・豊洲PIT
  • 魔暦19年(2017年)5月6日(土)
    福岡県 電気ビルみらいホール
  • 魔暦19年(2017年)5月7日(日)
    広島県 広島市南区民文化センター
  • 魔暦19年(2017年)5月19日(金)
    宮城県 チームスマイル・仙台PIT
  • 魔暦19年(2017年)5月25日(木)
    北海道 Zepp Sapporo
  • 魔暦19年(2017年)6月1日(木)
    東京都 Zepp Tokyo
  • 魔暦19年(2017年)6月8日(木)
    愛知県 Zepp Nagoya
デーモン閣下「デーモン閣下ソロアルバム『EXISTENCE』発表記念スペシャルトークイヴェント」

魔暦19年(2017年)4月15日(土)東京都内

<出演者>
デーモン閣下 / 司会:ブルボン小林

第1部
OPEN 11:30 / START 12:00
ゲスト:貴家悠
第2部
OPEN 14:30 / START 15:00
ゲスト:羽田圭介
デーモン閣下(デーモンカッカ )
デーモン閣下

魔暦前14年(1985年)にロックバンドの姿を借りた“悪魔集団”聖飢魔IIの歌唱・説法方として地球デビューした“悪魔”。魔暦前10年(1989年)に発布した大教典(アルバム)「WORST」でハードロック / ヘヴィメタル界では初となるオリコンアルバムチャート1位を記録し、「NHK紅白歌合戦」に出場した。魔暦前9年(1990年)に初のソロアルバム「好色萬聲男」をリリースし、魔暦7年(2005年)にはデビュー20周年を記念したベストアルバム「LE MONDE DE DEMON」を発表。魔暦9年(2007年)年からは女性アーティストの名曲を歌った異色のソロアルバム「GIRLS' ROCK」シリーズ4作で話題を集めた。和の伝統芸能との共作活動は30年間展開中。純邦楽器と朗読劇の新機軸追求シリーズ「デーモン閣下の邦楽維新Collaboration」は18年目で公演数74回に至り、上海万博では文化交流大使を執務した。広島県がん検診啓発特使や早稲田大学相撲部特別参与などさまざまな分野でも活躍、魔暦19年(2017年)3月に約5年ぶりのソロアルバム「EXISTENCE」をリリースする。