DATS|変革期を経て、より大きなところへ

演奏の取捨選択ができるようになった

──グルーヴという面では当然リズム隊も重要なわけですが、先日「SYNCHRONICITY」でライブを観させてもらって、「オドラサレテル」の後半の大井くんがめちゃくちゃパワフルで、スティック折りまくってたのが最高でした(笑)。

大井 前までのDATSはトラックベースだったので、そこからちょっと外れると、生のドラムが孤立して聴こえてしまっていたと思うんですね。でも、今はトラックの割合が減って、演奏の自由度が上がっているので、そのときの気分だったり、その日のみんなのバイブスに合わせて、自分がどういう音を出すか、取捨選択ができるようになったんです。もちろん、DATSの音楽の根幹にはトラックがあるので、それをおざなりにするわけではないけど、自分の持っている音の割合を好きなように増減できるようになったのは大きいですね。

早川知輝(B)

早川 僕は最初プレイスタイルで悩んでいて、ギターからベースになった分、意地でも低音を出そうと思っていたんですよ。なので、5弦ベースを使ったり、エフェクターでローを足したり、いろいろやってみたんですけど、全然うまくいかなくて。で、1回自分がリスペクトする音楽に立ち返ろうと思って、ほぼアン直で、ビンテージのベースにしてやったら、うまくなじんだので、「これだな」と思いました。ライブでもいわゆるベーシスト然としようと思って、フレーズで聴かせるんじゃなく、PCとかでは出ない下の帯域を出して、バンド全体を後ろから見守るくらいの気持ちでやったら、うまくいくようになって。立ち位置もあえてちょっと後ろにして、全体が見えるようにしてるんですよ。ギターのときはエモーショナルの押し売りみたいなスタイルだったけど(笑)、後ろで周りの演奏を楽しみながらグルーヴを支えるみたいな、そういう気持ちで演奏できるようになりました。

MONJOE サッカーでいうと、レアル・マドリードとか、オールスター軍団みたいなチームあるじゃないですか? 能力の高い選手ばかり集まっているから、そりゃあ強いんだけど、たまに勝てないときがある。個々のスキルがめちゃくちゃ高い集団を、全員がチームのことを考えて動けるチームが上回るときがあるんですよね。今のDATSはそのどっちもあると思っていて、個々のスキルもあるけど、DATSのためにどうしたらいいのかを全員が考えられる。そこが一番のポイントだと思う。

大井 自分のプレイヤーとしての矜持みたいなものはみんなはっきりあるんです。ただ、僕ローゼズで一番好きな曲が「Begging You」で、「レニ最強!」と思ってたんですけど、あれ打ち込みなんですよね(笑)。そうなったときに、プレイヤーとしてのアイデンティティなんて簡単に捨てられるというか、むしろそういうところが面白い。自分が出してる音に対して絶対の自信はあるけど、でもそれを軽く扱うこともできるというか、「ただのサンプルの1つ」くらいのスタンスでも音を出せる。今はそういうことができてると思います。

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ホントの意味でアーティスト然としていたい

──「オドラサレテル」が生演奏の熱を閉じ込めつつ、ただの焼き直しになっていない理由の1つとして、ミックスも非常に重要だと思います。

MONJOE 今回のミックスは葛西(敏彦)さんにしていただいたんですけど、僕は音そのもので新しさを提示する時代はほぼ終わって、今はミックスの時代だとも思ってるんです。例えば、ダブステップはこういうビートで、ワブルベースでとか、EDMはThe Chainsmokersみたいな、隙間があってキャッチーとか、そういうフォーマットがあって、その時代において新しかった。でも、今はもう何かと何かを組み合わせるくらいしかなくて、ホントに新しいサウンドがこれから出てくるのかなと思うと、やっぱりミックスだなって。新世代のトラックメーカーとしてMura Masaとかが出てきたのも、ミックスが面白かったと思うんですよ。エンジニアさんを起用しているかもしれないけど、ある程度自分でミックスできて、自分のこだわりをそのまま世に出している。そういう流れをわかっているエンジニアさんが日本だとなかなかいないから、エンジニアさんにミックスを頼むのって、すごく勇気がいることなんですよ。自分たちみたいなバンドは特に。だから、前までは同じ世代の自分たちのことを理解してくれている人に頼みたくて、荘子itにやってもらっていたんです。

大井 葛西さんは実験精神が旺盛なんですよね。例えば、ドラマーがドラムをレコーディングしたら、曲中のビートはドラムセットの音が一番大きくなきゃいけないみたいな、そういうルールみたいなものは彼にはない。ベースは低音、ギターは高いとこ、みたいな既存のルールを壊さないと、新しい音は作れないと思うし、実際葛西さんはセオリー的には間違ってるような僕らの突発的なアイデアも面白がってくれました。

──葛西さんが今20代のエッジィなバンドを数多く手掛けているのは、まさにそこが理由でしょうね。

MONJOE アーティストもエンジニア的な発想がないとダメだし、エンジニアもアーティスト的な発想がないとダメというか、これからAIが何でもやっちゃう時代が来るかもしれないわけだし、そういう発想がないと飽きられちゃうと思うんですよ。ホントの意味で、アーティスト然としていたい。今はそういう思いがすごく強いですね。

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ツアー情報

DATS「オドラサレテル ワンマンツアー」
  • 2019年5月24日(金)愛知県 CLUB UPSET
  • 2019年5月30日(木)宮城県 enn 2nd
  • 2019年6月2日(日)大阪府 Shangri-La
  • 2019年6月22日(土)福岡県 THE Voodoo Lounge
  • 2019年6月29日(土)東京都 WWW