DATS|変革期を経て、より大きなところへ

DATSが新作CD「オドラサレテル」を5月22日にリリース。この作品の先行配信が各音楽配信サイトで4月24日にスタートした。

昨年8月にギタリストの吉田巧が加入し、現体制では初めての音源となる「オドラサレテル」。本作では打ち込みのトラックベースだった前作「Digital Analog Translation System」から一転、マッドチェスターやビッグビートといった1980~90年代のダンサブルなUKロックの影響を消化し、生演奏を重視した方向性へと明確にシフトしている。この1年で起きたバンドの変革と、「オドラサレテル」に込めた思いについて、メンバー4人に話を聞いた。

取材・文 / 金子厚武 撮影 / 永峰拓也

今のDATSのサウンドには吉田巧のプレイが欠かせなかった

──まずはこの1年で起きたバンドの変化について聞かせてください。昨年8月にベーシストの伊原卓哉くんが脱退して、サポートを務めていたギタリストの吉田巧くんが正式加入しました。

MONJOE(Vo, Syn) 自分の中で新しいメンバーは巧しか浮かばなかったんですよね。

吉田巧(G)

吉田巧(G) もともと(大井)一彌とは高校の終わりぐらいから一緒にバンドをやっていて、MONJOEとかはやぴー(早川)ともそれぞれ違うバンドで対バンしてたんです。

大井一彌(Dr) 巧は僕が知ってるギタリストの中で一番信頼できるし、実力があるのも知ってたけど、前までのDATSはトラックベースの音楽だったのに対して、僕と巧がやっていたのはわりかし聴き手を選ぶような、耳年増なバンドだったんです。そういうバンドのメンバーがDATSに入ってどうなるかというのは、最初は想像が付かなかったですね。

──かつて大井くんと吉田くんがやっていたLADBREAKSは、90年代のマンチェスターの匂いがするようなバンドだったんですよね。

大井 そうですね。今回のEPで提示しているように、今のDATSも90年代のUKロックやビッグビートを消化した音楽性になっていて、だからこそ巧のプレイは欠かせないものだったんです。この1年、バンドがメディアから姿を消して潜っていた間に、それが確固たるものになった感じがします。

MONJOE 以前からライターさんとかに、「DATSってビッグビートっぽいよね」とか「マンチェスターっぽい要素あるよね」と言われていたんです。自分としてはそこまで意識してなかったんですけど、これからDATSでどういうものを作って行きたいかを考えたときに、今まで言われてきたキーワードが思い浮かんで、ビッグビートとかマンチェスター的なものを、今の時代に落とし込めたらカッコいいんじゃないかと思ったんですよね。で、自分のトラックの上でそれを表現できるプレイヤーは誰かと考えたら巧しかいなくて。

──バンドの音楽的な方向性が見えてきた中で、それにフィットする人材として吉田くんに声をかけたと。

MONJOE そうですね。あと個人的に、バンドをやるからには、個々のプレイヤーの顔が見えてないと嫌だなというのもありました。「お前がそれ弾いてなくてもよくね?」みたいなギターの音が世の中にはけっこうあると思うんですよ。そうじゃなくて、ブランドを持っているというか、ちゃんと個人が見えるギターを弾いてくれる人というのが、自分の中では絶対条件だったんです。

大井 特定の時代感、カルチャー、音楽ジャンルにどっぷりつかり切って、染め上げられてるくらいのね(笑)。

──吉田くんはファッションからしてUKのカルチャーに染め上げられてるのがわかります(笑)。

吉田 最初は「合いそうなトラックがあるから、1曲弾いてみない?」みたいな感じだったんですよ。メンバーチェンジがあって、急遽代打でというのではなくて、何か新しいことをやってみようという機運が、もともとDATSの中で高まっていた。僕も自分に癖があるのはわかっていたんで、最初は「大丈夫かな?」と思ってたけど、実際スタジオに入る前に音源を送りあったりして、探り探りやっていきましたね。

DATS

「DATSに絞った」わけではない

──吉田くんがギタリストとして加入して、早川くんはギターからベースへとパートをチェンジしたわけですが、もともとベーシストだったんですよね?

早川知輝(B) そうなんですよ。ずっとベースだったんですけど、まだDATSが始まったばかりの頃に、どうしても一緒にやりたかったから、「ギター練習するから入れてくれ」と声をかけたんです。なので、「戻った」というか、「やっとベースが弾けるぞ」っていう感じではありますね。自分のプレイスタイル的にも、90年代の音楽から受けた影響が色濃く残っていて、シンプルにドラムと一緒にグルーヴを作って、そこにギターが乗っかっていく感じがもともと好きだったので、今は居心地がいいというか、やっぱりベースを弾いているほうがしっくり来ます。

──そして、今年の3月にはMONJOEくんがyahyelから脱退したことが発表されました。

MONJOE(Vo, Syn)

MONJOE まあ、そういうタイミングだったというか……メンバーチェンジをして、DATSの可能性がさらに広がったんですよね。今のメンバーでスタジオに入って合わせてみたら、「こんなにすごくなったんだ」と、食らっちゃって。プレイヤーがこんなに充実したバンドで歌を歌うことが今までなかったので、それがすごく気持ちよくて、よりボーカリストして、フロントマンとして、トラックメーカーとして、DATSを磨き上げていきたい気持ちが強くなったんです。ただ、「DATSに絞った」みたいなことではなくて、普通に「今はDATSしかやってない」というだけ。音楽活動は多岐に渡ってやっていきたいので、そこは今後のMONJOEの動きに乞うご期待というか(笑)。

大井 僕はセッションミュージシャンとしての側面も強く持っていて、これからもいろんな現場で、いろんなスタイルのプレイをしていきたいんですけど、最近のDATSがすごくいいなと思うのは、音楽家としての個々のスキルや才能に惹かれ合って、バンドとしての必然性を増していってるんですよね。もちろん、友達でもあるんですけど、今のDATSには尊敬があるんです。僕は尊敬できる人と一緒に音楽をやりたいので、そこが一番大事なところだったりもしますね。