Daoko|“好き”と“ときめき”にあふれた新作EP「meta millefeuille」誕生 (2/2)

自分の好きな言葉を集めました

──最後の曲「Rhythm in the Sunset」もそうですけど、EPの終盤にいくにつれてフィクションの世界観が色濃くなっていきますね。「Rhythm in the Sunset」の作編曲にはnamitapeさんが参加しています。

「僕だけのフォトン」が物語的なフィクションで、「Rhythm in the Sunset」はもうちょっと文学という感じかもしれない。自分の好きな言葉を集めました。namitapeさんの曲には、YMOの遺伝子を感じるんですよね。namitapeさんの「リミナル訪問」という楽曲があるんですけど、ボカロPさんの作る曲では珍しくレコードで聴きたいなという気持ちになる。とても音楽的だと思います。

──歌詞についてはいかがでしょうか?

古めかしい商店街のアーケードや住宅街、川沿いなど、普段お散歩するような景色をイメージしながら歌詞を書きました。身近な風景と郷愁感をテーマに、namitapeさんのワクワクするサウンドワークに合うような言葉を選びました。普段から作詞用に言葉をストックしているので、そのストックも使ってとにかく自分がときめくワードを適切だと思う箇所に配置しました。そのあたりが実写のMVの構想にもつながっています。namitapeさんのサウンドワークが本当に好きで、今年は一番聴いているかもしれない……軽やかで、心地よい音楽なのでどんなシーンでも聴きたくなります。映像制作もご自身でされるのですが、センスもクオリティもすごくて、注目しています。

Daoko

すごすぎる才能に出会ったら紹介したくなる

──Daokoさんは自分の好きな音楽や影響源をすべて話されるじゃないですか。それって、すごくアーティストへの愛を感じますよね。

確かに「好き」を公言するほうではありますね。毎年、自分が聴いている曲のプレイリストを公開していますし。「聴いてー!」って感じ。やっぱり、すごすぎる才能に出会ったら紹介したくなるんですよ。「すごいと私は思ってるけど、みんなどう?」みたいな(笑)。

──自分の影響源を明らかにするのって、怖さもあったりすると思うんですよ。あと、自分以外の才能に嫉妬したりして、そういったことを公言しないアーティストもいますよね。

嫉妬はないですね。自分とは格が違うと思ってるから。自分が音楽技術があるタイプではないからかもしれない。純粋に「ヤバい!」という気持ちになって、人に伝えたくなる。

──「フックアップ」と言ったらちょっと違うかもしれないですけど、同じインターネットから出てきたDaokoさんが今こうやっていろんな下の世代の人たちと一緒に曲を作ってるのを見ていると、そういった文化の循環を感じてすごくいい光景だなって思います。

うれしいです。でも、若いアーティストたちに向けて動いているというよりは、たまたま好きになった人たちがみんな若いという感じなのかな。ただ、若い人たちは応援したくなりますよね。それは、自分も大変だったときに年上の人たちに助けてもらったから。してもらったことは返していきたいし。そもそも私はずっと年下キャラだったけど、最近はもうお姉さんとか呼ばれるようになっちゃった(笑)。

Daoko

ポップスにはシンプルで直感的なものも必要

──EPタイトルの「meta millefeuille」にはどういう意味が込められているんでしょうか?

私、語感フェチなんですけど、これは語感でいうとマ行を重ねる「メタモルフォーゼ」の系譜ですね(笑)。文字面としても、「m」が重なっていたり「i」が入っていたり、見た目のフェチも入っています。

──そこもkawaiiの1つなのかもしれないですね。

そうだと思います。語感的にも文字面的にもkawaii感じのタイトル。ミルフィーユなので甘いイメージもありますし。今まで「anima」(2020年6月発売のアルバム)も「Slash-&-Burn」(2024年5月発売のアルバム)も、意味を込めまくっていたから……。「アニマとはですね……」って哲学的なことを語り出すみたいな。でも今回は、意図的にそれを避けているところがあります。意味を込めないというよりは、肩の力を抜くというイメージでした。ポップスには、シンプルで直感的なものも必要だと思いますね。“メタく”見ている視点が常に自分の中にある感じがして、そういう自分の発露が重なってできた音楽たちなので、メタミルフィーユ。そのままですが……。

──あえて表層に徹するというか。

昨今、本当に大変な時代なので、暗すぎないようにしたかったんです。明るいものにしたかった。そうやって、今はまた自分の中での許せるポップスを探している時期なのかもしれないですね。

Daoko

プロフィール

Daoko(ダヲコ)

1997年生まれ、東京出身の女性ラップシンガー。ニコニコ動画のニコラップに投稿した楽曲が話題となり、2012年に1stアルバム「HYPER GIRL-向こう側の女の子-」を発表。ポエトリーリーディング、美麗なコーラスワーク、ラップを絶妙なバランスで織り交ぜたドリーミーな世界観で人気を集める。2015年に高校卒業と同時にDAOKO名義でメジャーデビュー。2018年12月には「NHK紅白歌合戦」に初出場を果たした。他アーティストとのコラボレーションも多く、これまでに米津玄師や岡村靖幸、ベック、中田ヤスタカ、スチャダラパー、MIYAVIらと共演している。2019年に個人事務所てふてふを設立し、2021年に自主レーベルを設立以降はDaoko名義で活動。2023年4月からはバンド・QUBITでの活動も行っている。2025年にバンダイナムコミュージックライブの新レーベル・UNIERAへの移籍を発表。9月からアジアツアー「THE "YOU" ZIZAI ASIA TOUR 2025」を行い、11月に新作EP「meta millefeuille」を配信リリースした。小説の執筆、絵画個展の開催、女優業など多様なクリエイティブ表現を続け、国内外から注目を浴びている。