自分にとって100%の音楽を作る

──アルバムを聴かせていただいて、今まで以上にハッピーでリラックスした雰囲気を感じたんですが、前作から何か変化があったんでしょうか？

いや、基本的に1stのときから音源の作り方は変わってなくて、自宅で制作をしてるからリラックスした音が出ているんじゃないかと思いますね。僕、自宅の作業部屋がすごく好きで、できればそこから出たくないくらいなんです（笑）。本やCDも全部置いてあって自分にとって居心地のいい場所だし、一番創作意欲の沸く部屋だから、ずっといられるし半分引きこもりみたいな感じで。あえて今回のアルバムでの変化を挙げるなら、自分の中のCurly Giraffe像が何となく見えてきたところですね。

──ご自身の描くCurly Giraffe像とはどういうものなんですか？

音楽を聴き始めた頃からいろんな音が頭の中で鳴ってはいたんだけど、それを形にできる技量もなくて。バンドを始めた頃はいちベーシストっていう立場だったんだけど、それがキ ャリアを積むことによって少しずつ作曲ができるようになったんです。で、僕はCARPENTERSだったり、エルトン・ジョンのような王道なものが好きで、そういう音楽をやりたいなって思っていたんですね。それをやっと形にできたのがCurly Giraffeなんです。

──Curly Giraffeでは、作曲、編曲だけでなく楽器の演奏もされていますが、すべての作業を1人でやられている理由はなんでしょうか？

なんでも自分でやるのが好きっていうのがあるし、実は人と一緒にものを作るのが苦手なんです。例えば、Curly Giraffeの曲をほかのプレイヤーに頼んで弾いてもらうのも可能なんだけど、必ずしも僕が思ってる音になるわけではない。そういうときに性格的に「違うんだけど」って言えなくって。

──（笑）。

気を遣うくらいだったら、自分でやっちゃえと。他人と音楽を作ることはバンドでやってきたから、逆に1人でどこまでできるか追求したいのもあるし。ベース以外の楽器は本職ではないのでたどたどしいんですけど、そういう部分も含めてCurly Giraffeとしての音楽を作っていきたいなと思っていて。たとえば洋服にほつれがあっても見え方によって味のあるいい感じの服に見えるし、そ れと同じ発想でやってますね。

──それが独特の質感のサウンドを生んでいるんでしょうね。

ええ。僕の好きな音楽は体裁を整えた綺麗なものじゃないんです。オルタナ感があるものというか、ザックリした、ガレージロックのような手触りのある音楽が好きで。ザラザラし た感触もありつつ、キラキラした王道のポップスのような曲だったりすると、僕にとっての100点満点の音楽になる。でも、見回してみるとそういう音楽があんまりなくて。僕の条件を叶えてくれる音楽がないな ら、自分で作ってしまおうと。

iPodの再生回数がすごいことに

──ご自分の曲はよく聴かれますか？

聴きますね。iPodの再生回数がものすごいことになってます（笑）。

──昔からご自分の曲はよく聴いていたんですか？

いえ、Curly Giraffeになってからですね。好きな食べ物だったら毎日食べられるのと一緒で、自分の好きなものを作って食べている感覚なんです。

──なるほど。普段、料理はされるんですか？

ええ、大好きですね。なにか作ってるのが好きなんです。家具を作るとか、本格的なところまではいかないんだけど、作ってる瞬間が集中できて無になれるから落ち着く。音楽活動 を始める前は、グラフィックデザイナーとして仕事をしていたりもしたし。美大出身なので、とにかく創作してるのが好きなんですね。料理でもいいし、音楽でもいいし、絵でもいいし、なんでもいいんです。

──自分のために作った音楽が、たくさんの人に受け入れられている状況についてはどう感じていますか？

曲が一人歩きして、人に聴かれているという現象はすごく面白いですね。「僕は美味しいと思ってるんだけど、食べてくれない？」って出してみて、それを「美味しい」って言って もらっているような感じです。

──もっと多くの人に聴いてもらいたいとか、爆発的に売れたいとか思いますか？

もう少し多くの人に聴いてもらいたいし、笑顔で暮らせるくらいのお金は欲しいなとは思いますけど。これまで、ものすごい売れたことがないから、爆発的に売れたらなにをしたら いいのかわからなくなっちゃいそうで。

──それは困りますね……。

逆に作品作りが生きるモチベーションになってるから、それができなくなるとそれはそれで困るし。制作環境が保てるのであれば僕は幸せだし、その環境を保つための努力は惜しむ つもりはないですね。あと、素材がいっぱいあるから、僕が死ぬ前に出し切りたいですし。

──そんなにあるんですか？

ええ。だからちょこちょこ出していかないと。