2024年1月に神奈川・横浜アリーナでの2DAYSワンマンライブを控えている超ときめき♡宣伝部は、成熟期を迎えた現在の女性アイドルシーンの中で、上昇気流に乗っているアイドルグループの1つ。11月17日に日本公開されるシンガポール発のロボットバトル映画「メカバース:少年とロボット」の“グローバル主題歌”の歌唱アーティストに抜擢されたことも、今のグループの勢いを裏付けている。
11月13日に配信リリースされた映画の主題歌「Sora」は、「第65回グラミー賞」で最優秀グローバル・ミュージック・アルバム賞を受賞した宅見将典が作曲を担当。宇宙を舞台にした映画の世界観にマッチする壮大なナンバーで、普段彼女たちが歌っているはつらつとした青春ソングや恋愛ソングとは作風が大きく異なっている。音楽ナタリーではメンバーにインタビューし、外国の大作映画の主題歌を務める心境や、「Sora」のレコーディング時のエピソードを語ってもらった。
取材・文 / 近藤隼人撮影 / つぼいひろこ
超ときめき♡宣伝部「Sora」ミュージックビデオ
日本だけに留まっていたらもったいない
──新曲や映画の話とは関係ないのですが、小泉さんがショートヘアになっていて驚きました。いつ切ったんですか?(※取材は10月上旬に実施)
小泉遥香 つい昨日です!
吉川ひより おはる(小泉)が髪を切ったこと、メンバーも今日初めて知ったんです。
小泉 ひとちゃん(坂井)がナンバーワンリアクション王でした。「どうしたのー!?」って。
坂井仁香 何かあったのかと思いました(笑)。
小泉 何もないよ。単純に切りたくて、マネージャーさんにずっと相談していました。「いつ切っていいですか?」って。
──過去一番短い髪型ですよね。
小泉 たぶんそうですね。かなみん(辻野)よりも短くて、髪を結べないくらいの長さです。お母さんに「若返った」と言われました(笑)。
坂井 えっ、私は大人っぽくなったなと思った。
小泉 「スター☆オーディション」(スターダストプロモーションによる公開オーディションイベント。参照:M!LK、超とき宣、アメフラ、ICExがライブで華を添えたスタダ主催「スター☆オーディション」)でこの髪型をお披露目するので、宣伝部員(超とき宣ファンの呼称)さんの反応が楽しみですね。
──では、ここから本題に。シンガポール発のロボットバトル映画「メカバース:少年とロボット」のグローバル主題歌アーティストに抜擢されたことについて聞かせてください。
坂井 まさか外国映画の主題歌を担当する日が来るなんて、想像もしていなかったです。シンガポールはメンバー誰も行ったことがないですし、今まであまり縁がなかったんですよ。これを機に行きたいですね、シンガポール。
杏ジュリア 行きたい!
菅田愛貴 私、映画館がすごく好きなんですよ。毎回、入るときにワクワクする。そこで映画のエンドロールとともに私たちの曲が流れると思うとすごくドキドキするし、世界にとき宣の歌を届けられることがうれしいです。
辻野かなみ 最初にこのお話を聞いたとき、「英語で歌うのかな……?」と思いました(笑)。
小泉遥香 メンバーみんなそう思ったよね(笑)。
坂井 過去に「すきっ!」の英語バージョンのレコーディングはやったことあるんですけど、「新曲が英語だったらどうする……?」ってメンバー間でざわざわしていました。
──結果的に日本語の曲で安心したと(笑)。今年7月にはインドネシアのイベント「Impactnation Japan Festival 2023」に出演しましたが、そのときに海外で活動する楽しさを知ったんじゃないですか?
菅田 はい。インドネシアに行ったとき、すごく楽しくて。それまで見たことのなかった文化に触れられたというか、現地の人がみんなすごく優しくて、にこやかに声をかけてくれました。街並みも食事も日本とは違って、世界って広いんだなと思いましたし、いろんな国に行きたくなりました。
──インドネシアで「すきっ!」を披露したときは大合唱が起こりましたし、観客のライブの楽しみ方も日本とはかなり違いますよね。
吉川 日本だけに留まっていたらもったいないなって思いましたね。すごく大きな目標ではあるんですけど、私たちのことをもっと多くの方に知ってもらうためには、世界を目指さなきゃって。この映画と主題歌の「Sora」をきっかけにシンガポールの方たちにも私たちのことを知ってもらいたいです。
杏 インドネシアのイベントに出演できたのは、「すきっ!」を特にインドネシアの方たちに愛していただけたからだと思うんですよ。
──インドネシアでは「すきっ!~超ver~」が、Spotifyのデイリーチャート「バイラルトップ50」で1位に輝きました。
杏 シンガポールでも映画を観た現地の方に「Sora」を愛していただいて、向こうでライブができるきっかけになったらうれしいです。
坂井 シンガポールでライブをしたら、お客さんがどう盛り上がるのか気になりますね。「Sora」を一緒に歌ってほしい。
吉川 インドネシアのときのように大合唱が起こるか。
坂井 バラードで大合唱(笑)。
──海外進出が順調に進んでいるように思えるのですが、「すきっ!」が国境を越えてバズって以降も、とき宣が海を越えて注目されているという感覚はありますか?
吉川 そうですね。TikTokに上げた「かわいいメモリアル」(インドネシアでミュージックビデオが撮影された最新シングル曲)の動画にたくさんの「いいね」が付いて。やっぱりインドネシアに行ったことによって、現地のファンの方が新しく増えたのかなと感じました。
辻野 そういう意味でも、やっぱり実際にシンガポールに行って、とき宣の知名度を高めたいよね。
自分の歌と向き合うレコーディング
──「Sora」は、「メカバース:少年とロボット」のエグゼクティブプロデューサーである中臺孝樹さんが作詞、「第65回グラミー賞」で最優秀グローバル・ミュージック・アルバム賞を受賞した宅見将典さんが作曲を手がけました。今までのとき宣の楽曲にはなかった壮大なバラードに仕上がっていますね。
坂井 8年間活動してきて、ここまで本格的なバラード曲を歌うのは初めてなので、私たちとしても驚きがありました。この曲、歌うのがすごく難しくて。普段は「こういうふうに歌ったら自分らしい歌声になるかな」とか、そういうイメージが頭の中に浮かぶんですけど、「Sora」に関してはどう歌ったらいいかわからなくて、ボイトレをしっかりやりました。みんな気合いを入れてレコーディングに臨みましたね。
──勢いで歌い切るタイプの曲と違って、歌唱の技術が求められますよね。レコーディングのディレクションは宅見さんが自ら担当されたそうで。
辻野 レコーディングのときは細かく指示をいただいたわけではなく、自分たちらしさを出していく録り方をしたんです。「メカバース」はパイロットを育成するアカデミーを舞台にした映画なんですけど、登場人物みんなに特徴があって、個性というものを大切にしている作品なんです。だからこそ、主題歌の中でも私たちの個性を大切にしてくださったのかなって。
──今までの楽曲とはかなり趣が違いますが、一聴してとき宣の歌だとわかります。
小泉 自分のやりたいように歌わせていただきました。
杏 同じパートを繰り返し録ったり、じっくりとレコーディングしました。何度も歌い直すことができたから、「次はもうちょっとこう歌いたいな」と自分でもいろいろとチャレンジができてよかったです。
吉川 こういう落ち着いた曲はホントに新鮮で、感情を乗せるのが難しかったですね。レコーディングのときは緊張したんですけど、できあがった曲を聴いたら映画ともマッチしているし、曲の中に自分が馴染めてるのかなと思いました。今までで一番力を抜いて歌ったかもしれないです。もはや棒立ちみたいな感じで脱力して。ライブで歌うときはほかの曲との切り替えが大変そうです。
菅田 私もレコーディングのとき、すごく緊張しちゃって……。
杏 あきちゃんのレコーディングのときだけ、ほかのメンバーが全員スタジオにいたんですよ。なんだか申し訳なかったです(笑)。
菅田 映画のタイアップということで関わってくださる方がスタジオにたくさんいらっしゃって、とにかく緊張しました(笑)。
小泉 あきちゃんは普段から優しい声質だから、この曲に合ってるなと思いました。逆に普段ガツガツした感じで歌っている私とか、ひとちゃんはレコーディングが大変だったかも(笑)。
坂井 もうホントに大変でした! 普段のレコーディングではかなりしゃくり上げて歌ったり、最初の1文字にガツンと力を入れて歌ったりするんですよ。
小泉 いつも踊りながらレコーディングしてるもんね。
坂井 宅見さんから「しゃくらないで歌ってください」と言われて。自分たちらしさを出しつつも、そういう癖は抜いてレコーディングしたんです。「どうすればいいんだろう……」とすごく考えちゃって、緊張もしたし、難しかったです。でも、こういう歌い方もあるんだなという発見もあって、歌の勉強にもなりましたね。普段だったら録ったテイクに対して「次はこういうふうに歌ってみよう」というフィードバックがあるんですけど、今回は歌い終わったら「よし、じゃあもう1回やってみよう」って感じでどんどん進んでいって。自分なりにいろいろ考えて歌わなくちゃいけない面もあって、自分の歌と向き合うようなレコーディングでした。
──レコーディングで苦戦したということですが、「Sora」は初期よりも歌のスキルが上がった今のとき宣だからこそ歌える曲でもあるわけですよね。
坂井 そうですね。昔の私たちだったら絶対に歌えない曲。歌との向き合い方とかも、ここ数年でより深く考えるようになってきたと思います。「Sora」は最後のほうの「苦しい時 いつかあなたが してくれたように また会えたら 今度は私が 背中を 押すから」という1人ずつ歌うパートにメンバーの個性がわかりやすく出ていると思います。
おはるの一番の評論家は母
──今までの活動の中で、自分の歌について意識するようなきっかけは何かありました?
杏 何かきっかけがあったわけではないんですけど、とき宣に加入した頃の自分の歌声を聴くと気持ちが乗っていないというか。リズムと音程ぐらいしか意識して歌っていなかったし、そもそも声の出し方もよくわかっていなかったんです。そこからいろんなジャンルの曲を歌ってきた中で学ぶことがあって、自然と変わっていったのかなと思います。加入当時の私だったら「Sora」を全然歌えなかったんじゃないかな。
辻野 私はボイトレの先生と一緒に自分の歌い方について考えてきたんです。こもるような声になってしまうことが多かったので、どうしたら抜ける声、きれいに聞こえる声にできるだろうって。そういうことを意識して歌えるようになったところで「Sora」が新曲として届いて、自分の中ではいい歌声で歌えたかなという思いがあります。
小泉 ありがたいことに、「すきっ!」がバズってから「歌が上手」と言っていただけることが多くなったんです。もともと歌が好きな人間ではありますが、よりさまざなジャンルの曲を聴くようになって、いろんなアーティストさんの歌い方を吸収しようと心がけています。そんな中、私の一番の評論家はお母さんなんです。お母さんがライブを観に来ているときはいつも「今日大丈夫だったかな……?」と心配になります。でも、そのおかげで気を抜かずにいれるというか、いろいろ考えて表現できていて。お母さんはライブ映像もよく観ているから、絶対に油断できないんです。
坂井 昔からずっと言ってるよね。「失敗したー。うわあ、怒られる」って。
小泉 私が一番恐れている存在(笑)。それと同時に背中を押されているんですけど。
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刺激を受けた監督の言葉