音楽ナタリー Power Push - chay
歌謡曲テイストに見出した私のスタイル
同じコード進行の繰り返しにゾッとしました
──では続いてのカップリング「Celebrate You」について伺いたいんですが、こちらは作曲にchayさんもクレジットされています。シャッフルのリズムで、今までのchayさんの中で一番変わった曲を書きましたよね。
そうなんです。やってみたくて。
──こういうジャジーな、スウィング感のある曲を?
はい。それを多保さんに言ったら「いいね」ってことになり。この曲は同じコード進行の繰り返しなんです。今までの私の曲作りではとにかく展開が大事で、平歌のときとサビにいくときのコード進行をすごく考えていたんです。でも、今回は「コード進行をずっとループさせてみない?」と多保さんが提案してくださって。その中でサビと平歌の差別化を図るということを初めてやったのですが、すごく難しかったですね。Aメロの時点でサビっぽくなっちゃうんです。でもそのあとにサビが残ってると思ったらゾッとして。ここからどうにかしてサビっぽく盛り上げなきゃいけないんだって。この曲は何回も何回もメロディを書き直して、ようやくいいんじゃないって言ってもらえたものなので、曲を作る上ですごく勉強になりました。こういう作曲の仕方は自分の視野を広げてくれましたね。
──でもその苦労している感じは正直まったくしなかったです。曲もスムーズに流れていってるし、ベタに「南の島=ハワイ」に行くっていう感じとか、わざとポップにしてますよね。
そうなんです。この曲はセイコーさんのタイプアップ曲でもあるので、がんばっているOLさんに向けて書きたいなというところからスタートしました。私の友達はまさに今社会人3年目くらいの子が多いので「休みがあったらどこに行きたい?」と質問したら、ちょっとしたご褒美というか「これが終わったらあれが待ってる」という考えをするというエピソードを聞いたんです。OLではないけれど私も同じこと考えているので、気軽な気持ちででいてもらえるような曲がいいなと思って。それでカタカナも多くしました。
細部までこだわったレコーディング
──そして通常盤の最後に収録されるのが、マリアンヌ・フェイスフルの代表曲としても知られるThe Rolling Stones「As Tears Go By」のカバーです。そもそもなんでこの曲をカバーしようと思ったんですか?
最初はマリアンヌ・フェイスフルが歌っているほうを聴いたんです。それで、いい曲だなと思って調べたらThe Rolling Stonesが歌ってることを知って。単純に素敵だなと思って、弾き語りしたらいいんじゃないかと思いました。
──ギターはchayさんが?
12弦ギターのほうは弾いてもらったんですけど、普通の6弦のほうは自分で弾きました。
──だからギターにリバーブかかってるし、しっかり主張してるんですね。
そうなんです。通常盤だけに自分が影響を受けた音楽を弾き語りで入れるっていうのをシリーズ化しているのですが、録音の仕方もこだわっていて。今回バイノーラルマイクっていうのを使って、より臨場感のあるような、360°から聞こえるようにしてみたり、あとこれは「好きで好きで好きすぎて」もそうなのですが、マスタリングでCDに落とすときに、あえてテープに落としてアナログ感を出したり。今回のリバーブも、部屋で鉄板を響かせて録音してるみたいで。本当に細かいところまでこだわっているので、そういうところにも耳を傾けて聴いてもらえるとうれしいです。
──聴くたびにいろいろな発見がありそうですね。
多保さんは本当にサウンドにこだわりのある方なのでいつも勉強になるんです。「あなたに恋をしてみました」のときは生のオーケストラの方々の音を録らせていただいたのですが、実際にオケのレコーディングに多保さんと行って生の迫力を感じて。生音の臨場感や音の厚みを初めて味わって、こうも違うのかと鳥肌が立つくらい感動しましたね。
──「好きで好きで好きすぎて」の金管楽器や弦楽器も、打ち込みではなくちゃんとマイクを立てて生で録ってる感じが伝わってきますよね。
そこもこだわり抜きました。ハープを入れたのも、それによって乙女心のドキドキ感やワクワク感が伝わるっていうか。歌詞だけじゃなくて、音の相乗効果もあり、すべてが一緒になって初めて伝えられるんじゃないかなと思うようになりました。
──それってプロデューサー視点というか、多保さんと同じ視点になって楽曲全体を俯瞰なさってる感じですよね。
「あなたに恋をしてみました」をきっかけに自分の価値観はかなり変わった気がします。「あなたに恋をしてみました」のときのストリングス隊なんて10数人もいて、その方たちが一気に弾いたときの感じは忘れられないです。あの曲はドラムのパンをあえて左だけに寄せているんです。そういう、当時のものをちゃんと今に生かした手法にもこだわっています。その時代を知っている方にリアルに感じてもらうには中途半端ではダメだと思うんです。そういう細かいところまでこだわって再現してるというところは注目してほしいですね。
──では最後に、2015年も残すところ約2カ月となり2016年が近づいていますが、来年の展望を教えていただけますか?
前作、今作で自分の視野も広がって、自分のスタイルも見つけられた気がしているんです。ファンの方の世代の広がりも感じましたし。やはりこういうレトロなテイストはより深めて続けていきたいなと思っています。というのも、ファンの方のコメントを見ても「父が歌ってました」や「娘がCDを買ってきて聴いてます」というコメントをいただくことが増えて。それってすごくうれしいことで。家庭内で親と子供のコミュニケーションツールの1つとして自分の曲が携われていると思えたことにすごくやりがいを感じるんです。老若男女に曲を聴いてもらえるような、そういう存在になれたらいいなと思ってるので、次回作も楽しみにしてくださったらうれしいです。
- chay ニューシングル「好きで好きで好きすぎて」/ 2015年10月21日発売 / Warner Music Japan
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1620円 / WPZL-31095~6
- 通常盤 [CD] / 1296円 / WPCL-12235
CD収録曲
- 好きで好きで好きすぎて
- 笑顔のグラデーション
- Celebrate You
- As Tears Go By(Acoustic Ver.)
※通常盤のみ収録
初回限定盤DVD収録内容
- chayのON&OFF 密着映像
- extra~ハートクチュールツアー@AKASAKA BLITZ digest
chayメリクリツアー2015
~みんなのことが好きで好きで好きすぎるから~
- 2015年12月17日(木)
- 大阪府 なんばHatch
OPEN 18:00 / START 19:00 - 2015年12月19日(土)
- 東京都 ステラボール
OPEN 17:00 / START 18:00 - 2015年12月25日(金)
- 愛知県 DIAMOND HALL
OPEN 17:30 / START 18:30
chay(チャイ)
1990年生まれの女性シンガーソングライター。小学生の頃からピアノで曲を作り、大学に入学すると同時にギターを始めて路上ライブなどの活動をする。2012年10月にロッテ「ガーナミルクチョコレート」のCMソング「はじめての気持ち」でワーナーミュージック・ジャパンよりCDデビュー。2013年10月から2014年3月までフジテレビ系「テラスハウス」にレギュラー出演し話題になる。2014年5月から雑誌「CanCam」の専属モデルとしての活動もスタート。2015年2月にフジテレビ系月9ドラマ「デート~恋とはどんなものかしら~」の主題歌シングル「あなたに恋をしてみました」、同年10月に筒美京平作品のオマージュを散りばめたシングル「好きで好きで好きすぎて」をリリースした。