音楽ナタリー Power Push - chay

歌謡曲テイストに見出した私のスタイル

非現実的な世界に連れて行ってみんなを笑顔にしたい

──chayさんのやっていることは物語作家的だと感じました。自分の感情を歌うよりも物語的な世界を歌うのがお好きなんですか?

確かに物語が大好きで、昔から物語調に書いてますね。

──それはキャリアのスタートの頃からですか?

スタートの頃から、わりとそうですね。ただ、いろいろ自分らしさってなんだろうと迷っていたときには、それこそストレートにもっと自分の恥ずかしい部分とかを言葉にしなきゃいけないと思ったこともありました。でもやはり今のようなスタイルの方が自分にとっては自然というか。

──もともと職業作家的な気質というか、レトリックの効いたリリックが好きなんでしょうか?

そうですね。私は、「見てると不思議と元気になれる」という存在になりたくて。まだまだそんな存在になれていないのですが、そういう存在を目指していく上で、読んでいて物語としてクスッと笑えてしまうようなもののほうが自分には合っていると思って、書き方をシフトしたんです。自分のネガティブな部分を歌うのではなくて。

──暗いことや嫌なことを言ってしまってもいいと思うんですけど、そうはならない?

chay

自分らしさは何かを考えた結果、ワンピースにヒールでキラキラのギターを持っていたほうが自分には合ってるんじゃないかと思うようになったんです。それを「chay」のスタイルとして確立させたいなって。そう思うようになってからは、衣装にもすごくこだわって、目で見ても楽しめるアーティストを目指しています。

──でも、それを見てみんなが笑顔になってくれたほうが自分もうれしい。

本当にそうです。人を非現実的な世界に連れていけたらいいなといつも思っているので、ちょっと浮き世離れした感じというか、キャラクターっぽさがあったほうがいいと思っています。

──なるほど。ということは、“chay”というキャラを演じている感覚もある?

うーん、難しいですね。自分でもありますし、ある意味演じているところもあるのかもしれません。

──今回の「好きで好きで好きすぎて」はけっこう落ち着いたテンポなんだけど、でもキラキラした感じもあって。初めて多保さんからデモが届いたときはどうでしたか?

最初に聴いたときには「あなたに恋をしてみました」とも違うし、本当に新しい……特にリズムが新しいと思いました。メロディも素敵で、すぐにどんな歌詞にしよう、どんな衣装で歌おう、と想像が膨らみました。

──レコーディングに関してそんなに大変ではなかったですか?

多保さんはすごくこだわりのある方なので……そこはもう毎回なんですけど、「千本ノックか!」というくらい、何度も何度も歌って、その中で徐々によくなったものを選んでいきました。今まで自分の作った曲の中にはないようなテンポだったので難しかったですね。あと表現力は自分の中で常に課題で。物語として書いているので、「明日の今頃はノーメイクを見せるのね」「やだ、どうしよ眠れない」とか、そういう情景を思い描いて歌いました。

テーマはなかなか踏み込めなかった“友情”

──カップリングの「笑顔のグラデーション」ですが、筒美先生とは別の文脈だけど、イントロのシンセとピアノが和音を弾く感じとか、やっぱり80年代らしいですよね。

「あなたに恋をしてみました」の次に作った曲なのですが、最初にメロディをいただいたときに、私「今までで一番好き!」というくらいに感動しました。

──chayさんの自分のルーツみたいなものをちゃんと音楽の中で表現していく感じって面白いですね。

多保さんが本当にいろいろなアイデアをお持ちなので、「こういうのどう?」といろいろ聞いてきてくださるんです。だから、一緒に制作させていただくと面白いんです。もちろん多保さんは、知識がとても豊富な方なので、私の好みとかも当然すぐわかってくださるんです。

──詞の対象が「好きで好きで好きすぎて」とは違ってこの曲は友達ですね。友情について歌っていて。

はい。

──競泳日本代表応援CMのタイアップソングも収録されていて。

そうなんです。応援歌なので、まずそのCMを観させていただきました。CMに出てくる日本代表の方々の強いまなざしが印象的だったので「情熱的な瞳で」にしたり、スタートの飛び込む感じを「明日に飛び込む放物線」と表現しました。でもただの応援ソングではなく友情の曲にしてみたいなと思ったんです。私、友情の曲ってあまり書いたことがなかったので。

──それはなぜでしょう?

友達少ないんですよ(笑)。

──あははは(笑)。

chay

親友と呼べる存在は1人か2人しかいなくて。自分の中でなかなか踏み込めない領域だったんです。でも今回自分が想像する友情をテーマに曲を書きたいと思って。「2人でずっと一緒にいようね」みたいな気持ちももちろん大事だと思うのですが、私が思う本当の友情って、そっと見守ってあげられる関係なんじゃないかなって。それって本当に信頼し合っていないとできないことだし、簡単なようで難しいことなんじゃないかなって。

──歌詞を見て、「あなたよりも私 あなたを 分かってるの」とか「あなたよりも私 あなたを 信じてるの」とか、ここまで相手に対して全肯定できるってすごいことだなと感じました。

そうですね。「平気なふりが上手すぎるから 悩みを見逃しちゃうじゃない」は、もうちょっと甘えてくれればいいなって私が親友に思ったことでもあるし、逆に「あなたの夢が叶うこと 私 分かってた」は私が言われたことでもあるんです。私が夢を追ってる過程や、ここに来るまでにつらいこともいっぱいあったけど、そういうときに、ずっと私のことを見てくれていた親友が「大丈夫だよ」って言ってくれて。そういう存在って、私にとってはすごく貴重なんです。

──制作スタイルとしては「好きで好きで好きすぎて」と同じように、chayさんが第1稿を書いたのでしょうか?

同じですね。CMを観て私が感じた印象をそのまま言葉にして、それをいしわたりさんが生かしてくださいました。「好きで好きで好きすぎて」ほどのやりとりはなく、何回かでできあがりました。あと、この曲を書こうってなったときに、多保さんがサビは1つの音符に2文字とか3文字入れたいっておっしゃっていて。例えばサビの「情熱的な」には“情”“熱”“的”“な”で4つの音符が当てられているんです。

──そっか、chayさんの曲はメロディの響きがJ-POPっぽくないなと思ったのって、譜割りなんですね。1文字に1つの音符じゃなくて、1音に対する情報量を多くすることでちょっと独特な響きがするというか。

だと思います。多保さんは、決め込みで1音に2文字入れたりとかをよく提案してくださるのですが、今まで自分でやったことないなと思うことが多くて。私も歌っていて新鮮だなって思います。

chay ニューシングル「好きで好きで好きすぎて」/ 2015年10月21日発売 / Warner Music Japan
初回限定盤 [CD+DVD] / 1620円 / WPZL-31095~6
通常盤 [CD] / 1296円 / WPCL-12235
CD収録曲
  1. 好きで好きで好きすぎて
  2. 笑顔のグラデーション
  3. Celebrate You
  4. As Tears Go By(Acoustic Ver.)
    ※通常盤のみ収録
初回限定盤DVD収録内容
  • chayのON&OFF 密着映像
  • extra~ハートクチュールツアー@AKASAKA BLITZ digest

chayメリクリツアー2015
~みんなのことが好きで好きで好きすぎるから~

2015年12月17日(木)
大阪府 なんばHatch
OPEN 18:00 / START 19:00
2015年12月19日(土)
東京都 ステラボール
OPEN 17:00 / START 18:00
2015年12月25日(金)
愛知県 DIAMOND HALL
OPEN 17:30 / START 18:30
chay(チャイ)
chay

1990年生まれの女性シンガーソングライター。小学生の頃からピアノで曲を作り、大学に入学すると同時にギターを始めて路上ライブなどの活動をする。2012年10月にロッテ「ガーナミルクチョコレート」のCMソング「はじめての気持ち」でワーナーミュージック・ジャパンよりCDデビュー。2013年10月から2014年3月までフジテレビ系「テラスハウス」にレギュラー出演し話題になる。2014年5月から雑誌「CanCam」の専属モデルとしての活動もスタート。2015年2月にフジテレビ系月9ドラマ「デート~恋とはどんなものかしら~」の主題歌シングル「あなたに恋をしてみました」、同年10月に筒美京平作品のオマージュを散りばめたシングル「好きで好きで好きすぎて」をリリースした。