音楽ナタリー Power Push - chay

歌謡曲テイストに見出した私のスタイル

chayがニューシングル「好きで好きで好きすぎて」をリリースした。

2015年2月に発表した「あなたに恋をしてみました」同様に多保孝一がプロデュースした今作は、前作の流れを汲んだ歌謡テイストのナンバー。さらに、作詞にはいしわたり淳治が参加しており、彼女は等身大の乙女心を高らかに歌い上げている。そしてカップリングには初めて友情をテーマに書いたという「笑顔のグラデーション」、シャッフルビートを取り入れた「Celebrate You」のほか、通常盤にはThe Rolling Stones「As Tears Go By」のカバーが収録される。歌謡テイストを軸にしつつも、さまざまな挑戦が詰まった今作に込めた思いについて、彼女に聞いた。

取材 / 成松哲 文 / 丸澤嘉明 撮影 / 佐藤類

筒美京平さんは歌謡曲を掘り下げる上で外せない

──タイトルトラックの「好きで好きで好きすぎて」ですが、筒美京平さんへのオマージュというのが大きなテーマとしてあるそうですね。「makeup 80’s」(2013年1月発売のカバーアルバム)もそうなんですけど、chayさんって1980年代をリスペクトしている方なのかなって。

そうですね。

──筒美さんにオマージュを捧げたのは、どういう理由からだったんですか?

今年の2月に「あなたに恋をしてみました」をリリースしたときに、聴いてくださる方の世代の幅がすごく広がったと感じました。今までは同世代の女の子が多かったのですが、あの曲を出してから、私の父や母くらいの年齢の方がライブに来てくださるようになって。それがすごくうれしくて、プロデューサーの多保(孝一)さんとも、次回作ではより昭和歌謡テイストの強い作品にしたいねって話をしていたんです。それで「あなたに恋をしてみました」よりもさらに歌謡曲テイストの世界観を掘り下げていく上で、筒美京平さんは外せないだろうということになったんです。

──なるほど。

chay

私の両親は音楽が大好きで、幼い頃からいろんな音楽を聴いて育ったのですが、私は80年代の洋楽が大好きだったんです。でも自然と、筒美さんが作る音楽も聴いていたようで。昭和歌謡は「あなたに恋をしてみました」のタイミングで勉強し、いろいろ聴くようになったのですが、そのときにもともと知ってた曲がたくさんあることに気付きました。そこから、もっともっと歌謡曲にハマっていったんです。

──chayさんが好きな筒美先生の曲は?

平山三紀さんの「真夏の出来事」です。あの曲には絶妙な切なさや色気があるんですよね。ほかには松本伊代さんの「センチメンタル・ジャーニー」の明るい感じも好きですし、郷ひろみさんの「男の子女の子」にしてもアニメ「サザエさん」の曲にしても、1回聴いたら忘れられないメロディなんですよね。いいなと思う歌謡曲のクレジットを見ると筒美さんであることが多いですね。

──筒美京平という名前で掘っていったわけではなくて、好きな曲を羅列していったら、あれもこれも筒美さんが曲を書いていたという感じだったんですね。

そうですね。

耳だけではなく目でも楽しんでもらえるアーティストになりたい

──話が前後してしまうんですけど、「あなたに恋をしてみました」のときに、そもそもなんで昭和歌謡テイストの曲をやろうというお話になったんですか?

あの曲は「デート~恋とはどんなものかしら~」という月9ドラマの主題歌だったのですが、ドラマの世界観に合わせて「昭和テイスト」というテーマが最初にあったんです。

──ドラマの内容に寄せていったわけですね。

はい。それまで自分が作ってきた曲は歌謡テイストではなかったのですが、多保さんにあの曲を作っていただいて実際に歌ってみたら、曲の世界観だったり、メロディやサウンドが自分の声に合ってるのかなと思ったんです。私はずっと自分の声にコンプレックスがあったのですが、やっと自分に合うものを見つけられたような気がして。chayならではのスタイルを築きたいという気持ちがずっとあって、「自分らしさってなんだろう?」って模索しながら曲を作ってきたのですが、歌謡テイストのレトロな世界観というのが、自分にしっくりきたというか……。これが自分らしさなのかなと思えました。

──なるほど。

私は耳だけではなく目でも楽しんでもらえるアーティストになりたいとずっと思っているので、「あなたに恋をしてみました」をきっかけに、衣装やパフォーマンスもレトロな雰囲気に寄せたものにしていったんです。そういうスタイルが自分らしさにつながるのかなと思って。それで、次作もこのスタイルでいきたいなと思ったんです。

──多保さんはなんでchayさんにはレトロな雰囲気が似合うって気付いたんでしょうね。

もともと多保さんは歌謡曲が大好きな方で。「あなたに恋をしてみました」のイントロのワクワクするようなストリングスのリフは、最初に私と会ったときに思い付いたとおっしゃっていて。

──へえ。

初めて私と会ったとき、多保さんは私のことを思っていたよりも明るい印象を受けたみたいなんです。そういう印象が意外で、あのイントロにしてくださったみたいです。実は私、デビュー前から多保さんに曲を書いてもらいたい気持ちがあったんです。Superflyさんが好きでずっと聴いていたので、「いつかこの方に曲を書いてほしい」と思っていて。そうしたら念願叶ってご一緒できたんです。その前にも、何度かご挨拶程度でお話しさせてもらったり、多保さんが私のライブを観てくださったり、そういうご縁があって。

──多保さん的にも何か惹かれるものがあったんでしょうね。chayさんは普段モデルとして世の中の半歩先を行くトレンドを紹介するようなお仕事をされているわけですけど、そんなchayさんを見て、多保さんが昭和レトロなテイストを思い付いたっていうのが興味深いなと思います。しかも、楽曲がちゃんと2015年的な昭和レトロ感になっていて。

そこはお互いこだわっているところなんです。もちろん昭和歌謡をリアルに体験している方たちには懐かしいなと思っていただける楽曲にしたかったのですが、一方で同世代のリスナーにとってはレトロ過ぎないものにしたかったので。レトロ過ぎず、新しくなりすぎずという、昭和と平成の架け橋になるような曲を目指しました。

chay ニューシングル「好きで好きで好きすぎて」/ 2015年10月21日発売 / Warner Music Japan
初回限定盤 [CD+DVD] / 1620円 / WPZL-31095~6
通常盤 [CD] / 1296円 / WPCL-12235
CD収録曲
  1. 好きで好きで好きすぎて
  2. 笑顔のグラデーション
  3. Celebrate You
  4. As Tears Go By(Acoustic Ver.)
    ※通常盤のみ収録
初回限定盤DVD収録内容
  • chayのON&OFF 密着映像
  • extra~ハートクチュールツアー@AKASAKA BLITZ digest

chayメリクリツアー2015
~みんなのことが好きで好きで好きすぎるから~

2015年12月17日(木)
大阪府 なんばHatch
OPEN 18:00 / START 19:00
2015年12月19日(土)
東京都 ステラボール
OPEN 17:00 / START 18:00
2015年12月25日(金)
愛知県 DIAMOND HALL
OPEN 17:30 / START 18:30
chay(チャイ)
chay

1990年生まれの女性シンガーソングライター。小学生の頃からピアノで曲を作り、大学に入学すると同時にギターを始めて路上ライブなどの活動をする。2012年10月にロッテ「ガーナミルクチョコレート」のCMソング「はじめての気持ち」でワーナーミュージック・ジャパンよりCDデビュー。2013年10月から2014年3月までフジテレビ系「テラスハウス」にレギュラー出演し話題になる。2014年5月から雑誌「CanCam」の専属モデルとしての活動もスタート。2015年2月にフジテレビ系月9ドラマ「デート~恋とはどんなものかしら~」の主題歌シングル「あなたに恋をしてみました」、同年10月に筒美京平作品のオマージュを散りばめたシングル「好きで好きで好きすぎて」をリリースした。