ちゃんみな「Naked」特集|「ちゃんみなとは何者なのか?」すべてをさらけ出したニューアルバム (2/2)

ロックサウンドに接近

──音楽性のことを言い出すと、今もうラッパーはロックもダンスミュージックもなんでもやりますもんね。だからこそ、結局のところ精神性や価値観のところに定義が戻ってきていると思います。その点、今作ではちゃんみなさんもロックやパンクのサウンドを大きく取り入れています。

今回は、気分がそういった方向だったんです。もともと私はアヴリル・ラヴィーンが大好きで、聴く音楽もロックが多かった。パンキッシュにギターをかき鳴らしながらも歌がうまいアヴリルにずっと憧れていました。彼女のすごく毒々しいんだけどちゃんと技術があるという……“質のいいパンク感”と言えばいいのかな、そういうところが大好き。それに最近はマシン・ガン・ケリーのようなロックの流れもあって、世の中でリリースされる新譜にもそのあたりのムードが反映されるようになってきたじゃないですか。それこそアヴリルとマシン・ガン・ケリーが一緒に曲を出したり、ヤングブラッドが出てきたり、ロックの懐かしさにハマって「カッコいい!」って。

ちゃんみな

──2000年代前半のフィーリングがここ数年戻ってきていますよね。

そうそう。アヴリルの「Bite Me」のミュージックビデオを観たときとか、泣きそうになりましたもん。「これがアヴリルだよね!」と思ってうれしくなった。

──ロックのサウンドが増えたことに合わせて、歌唱表現についても大きな変化を感じました。

ロックが歌える歌唱力になってきたんです。音楽活動をしていくうえで、もちろん自分のスキルアップはしていかないといけないじゃないですか。本当はデビュー当初からこういう風に歌いたいという意識はありました。でも未熟だったからトレーニングを重ねたり場数を踏んだりすることで、少しずついろんな種類の声を出せるようになってきた。今までもこういったロックの曲調は作ってはいたんです。でも世に出すレベルまではまだ納得がいってなかったので、今回ようやく満足いくレベルに到達できました。

──そういった歌唱表現はリリックの内容とも相まって、これまでにない世界観を作っています。例えば、アルバム冒頭の「RED」から深くルーツを掘り下げる生々しい詞世界が展開されていて驚きました。

「RED」はセンシティブな内容なので、私自身リリースするか迷ったんですよ。「I'm a Pop」で近い内容を歌っていたけど、ここまで掘り下げてはいなかったから。でも、今回のアルバムのテーマが「自分のルーツをたどってさらけ出す」というものである以上、必要だと判断しました。その理由は昨年韓国でのデビューを果たすことができたというのも大きくて。逆に「ちゃんと韓国でもリリースしてからじゃないとこういったリリックは世に出せない」とも思った。でも、「RED」は単に事実としてこういうことがあったという話でしかないので、変に誤解されたくはないんですけどね。

ちゃんみな

人生とリンクした楽曲たち

──アルバム全体の構成として、後半に向かうにつれてドロドロした部分もあけすけに見せていますよね。

アルバムの流れとしては、1曲目から順に年齢を重ねていってるんです。「Good」を経て、「RED」では「過去だから今はもう気にしていないけど、あの経験があったからこそ今の私がある」という、あらすじをまとめるような感覚で作りました。「444」は韓国で従兄弟と一緒にいたときに遊びで録ったボイスメモで、「ここから始まっていく」という気持ちが表現されたインタールード。そのあとの「Wake up call」ではNY、LA、韓国でこんなふうにアルバム作っていたよということを示したのちに、「Don't go feat. ASH ISLAND」では韓国デビューして……というストーリーで進んでいくという。

──なるほど。

次の「サンフラワー」は、恋愛で初めて経験した感覚を歌っているんです。私はたくさんの恋愛をする中で「一緒にいて落ち着くけど、やっぱり愛せないかもしれない」という気持ちを感じることもあった。それをよしとして結婚する人もいるけど、「私はそうじゃなかったな」ということに「サンフラワー」で気付くんです。「You Just Walked In My Life」でまた恋に落ちてのめり込むんだけど、続く「naked now」では「私の元カレは全て私にくれた」と書いている。バッドボーイにも出会って、端から見たら悪い人なんだけど私にはこれくらいがちょうどいいかなという気持ちを歌っていて。

──時系列で連続性のあるストーリーになっていると。

そうです。それって、私の人生にリンクしていると思うんですよ。「Mirror」ではお互い相手がいるのに愛し合うという経験をしてみたり、「FUCK LOVE」では「もう愛なんて知らない!」ということを考えたりする。そこから「B級」「クズになったらしいじゃん」で「あいつもクズだ」と気付いて、最終的に「I'm Not OK」ではこの不安定な状態が私としてはOKなんだと気付くんです。この「I'm Not OK」というのが私にとっては生きていると感じる瞬間だし、そういう人生が好みなんだなと捉えて終わる。こんな中身だし、最低なこともしてきたし、こんな嫌なやつでいいという、なんとも自己中なアルバム(笑)。

──まさに“Naked”な感覚ですね。

私はどんどん変な人になってきている気がする。これはおかしくなっていっているのか、私という人間が完成されていってるのか。正直、そこはわかってないんですけど(笑)。

──「クズになったらしいじゃん」は、このリリックなのに曲調としてはけっこう明るいですよね。そのあたりの怖さも、ちゃんみなさんならではだと思いました。

「B級」もそうですが、意地悪なことを明るくアウトプットするアンバランス感が好きなんです。

ちゃんみな
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ふざけた自分も全部出していいかな

──アルバム全体を通して、特に難しさを感じた曲はありますか?

全編英語詞の「naked now」は難しかったです。アメリカで録ったんですけど、プロデューサーから私がわからないレベルの発音の違いを細かく指摘していただいて。ここまで細かく言われるんだ、とは思いましたけど、いい作品になるならそれに越したことはないのですごくがんばって録りました。あと、意外と「B級」の絵文字選びも難しかった(笑)。

──「B級」の絵文字は、気持ちに合うような絵文字を選ばれるのに苦労されたということですか?

というよりも、これは単にふざけたかったんですよ。ただのボケなので、深い意味はないです(笑)。でもそのボケにもこだわりたくて。

──この曲ではかなり赤裸々な気持ちをさらけ出しているので、最後にちょっと照れ隠しとして入れているのかなと深読みしてしまいました。

ここはあまり深い意味はなくて、ただ私はこういう人なんですよ。ボケてツッコまれると喜ぶタイプ(笑)。こういういたずら心も私らしいし、今作はもう「Naked」だから、ふざけた自分も全部出していいかなって。

セルフィッシュで、わがままで、自己中なアルバム

──さまざまなものを削ぎ落としたようなアートワークも、楽曲の内容を表していますね。フォントも刺々しくて、チクッとする詞世界に合っていると思います。ちゃんみなさんがご自身でディレクションしたんですか?

「Naked」ジャケット

「Naked」ジャケット

基本的には自分の意見は伝えさせていただきました。今回はデニス(・リューポルド)という大好きなフォトグラファーに撮ってもらったんですけど、LAでセッションのような形でご一緒することができて。「裸なのに尖っていてキラキラしている」というイメージがあって、それを表現できてよかった。

──今回のアルバムは日本語、韓国語、英語の3カ国語が入り乱れていますが、使い分けとして、こういう内容はこの言語で歌うというある程度のルールはあったのでしょうか?

そこはあまり考えなかったんですよ。なんとも自分勝手なアルバムですよね。本当にセルフィッシュで、わがままで、自己中なアルバムだと思う(笑)。

──タイトルも「Naked」ですし、自由で嘘偽りなく思うままに作った1枚という感じがしました。「B級」や「クズになったらしいじゃん」では、かなり強い言葉も使われています。リリックに使うワードとして躊躇や恐れはなかったですか?

いやあ、迷いましたね。本当にさらけ出しすぎですよね。特にそのあたりの曲は私の性格の悪いところや素行の悪いところが出ている。これ、出たあとどうしよう……今から心配です(笑)。

ちゃんみな

プロフィール

ちゃんみな

1998年10月14日生まれ。日本語、韓国語、英語を巧みに操るミレニアル世代のトリリンガルラッパー、シンガー。子供の頃から歌手デビューを夢見ており、幼少期よりピアノや歌、ダンスを習う。作詞作曲のみならずトラック制作、ダンスの振付などすべてをセルフプロデュースで⾏い、高校生の頃にアーティスト活動をスタートさせた。2017年2⽉にシングル「FXXKER」でビクターエンタテインメントよりメジャーデビューし、3月にメジャー1stアルバム「未成年」を発表。2018年にワーナーミュージック・ジャパンに移籍し、2019年8月に2ndアルバム「Never Grow Up」をリリースした。2021年10月に3rdアルバム「ハレンチ」を発表。2023年3月には神奈川・横浜アリーナでワンマンライブ「AREA OF DIAMOND」を開催した。最新作は2023年4月発表の4thアルバム「Naked」。