「カーペンターズ・ウィズ・ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団」特集 リチャード・カーペンター×西寺郷太(NONA REEVES)|Carpentersが今もなお愛され続ける理由

2019年にデビュー50周年を迎えるCarpentersとロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の共演によるアルバム「カーペンターズ・ウィズ・ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団」がリリースされた。リチャード・カーペンターが全曲をオーケストラアレンジで書き直し、名門ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団を自ら指揮、Abbey Road Studiosで録音した本作。「Yesterday Once More」「I Need to Be in Love」「Top of the World」といった名曲を豊潤なオーケストラサウンドと共に堪能できる歴史的な作品と言えるだろう。

このアルバムのリリースを記念して、音楽ナタリーでは本作のプロモーションのために9年ぶりに来日していたリチャード・カーペンターと西寺郷太(NONA REEVES)の対談をセッティングした。半世紀に渡って世界中の音楽ファンを魅了し続けるCarpenters。その本質に触れるような貴重なトークが繰り広げられた。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 相澤心也 通訳 / 染谷和美

左からリチャード・カーペンター、西寺郷太(NONA REEVES)。

彼女もNONA REEVESかい?

西寺郷太 はじめまして。西寺郷太と言います。ミュージシャンです。

リチャード・カーペンター 君が「Horizon」を持った写真をTwitterで見たよ。

リチャード・カーペンター(左)にNONA REEVESのアルバム「MISSION」を手渡す西寺郷太(右)。

西寺 ほんとですか!? ありがとうございます! 僕はNONA REEVESというバンドで22年前にデビューしました。まずは僕たちのアルバムをプレゼントさせてください(とNONA REEVESの最新アルバム「MISSION」を渡す)。

リチャード ありがとう。(CDジャケットのイラストの女の子を指さして)彼女もNONA REEVESかい?

西寺 いえ、女の子はいません(笑)。大学時代に友人2人とバンドを組みました。僕の役割はシンガーソングライターです。

リチャード なるほど。あとで聴かせてもらうよ。

西寺 今日はお会いできて本当にうれしいです。僕の父親は英語の教師で、彼自身の英語の勉強のために、Carpenters、The Beatles、ボブ・ディランなどのレコードを家の中で繰り返し聴いていたんです。僕は言葉を覚える前からずっとCarpentersの曲を聴いていて。

リチャード そうなんだね。カレンの発音はきれいだから、英語の勉強にも役立つのかも。特に「Horizon」の頃の発声はすごくクリーンだよね。

西寺 そうなんです。僕は物心がつく前からCarpentersの音楽に親しんでいたから、まずは「お会いできてうれしい」という気持ちを伝えたくて。

リチャード ありがとう。

憧れのAbbey Road Studiosでのレコーディング

西寺 僕はThe Beatlesもすごく好きで、中学1年生、12歳のときにAbbey Road Studiosに初めて行ったんですよ。

リチャード スタジオの中には入れた?

西寺郷太(NONA REEVES)

西寺 セキュリティの人が「小さい子が遠くから来たんだから」って、内緒で入れてくれたんですよ。だから、リチャードさんがCarpentersの楽曲をAbbey Road Studiosで録音された今回のアルバムは、個人的にもいろいろなことを感じたし、とてもうれしい作品なんです。

リチャード 僕にとってもうれしい作品になったし、憧れが詰まってるんだよね。Abbey Road Studiosのスタジオ2でレコーディングするのは、本当に特別なことだから。スタジオ2にも入った?

西寺 いえ、そこまでは行かせてもらえませんでした。

リチャード 体育館みたいに広いスタジオなんだよ。音響も素晴らしいしね。

西寺 以前にもAbbey Road Studiosで録音したことがありましたよね?

リチャード そうだね。最初は「Christmas Portrait」(1978年発売の“クリスマスアルバム”)のとき。そのアウトテイクを中心にしたアルバム(1984年発売の「An Old-Fashioned Christmas」)もAbbey Road Studiosで録ったんだけど、そのときはピーター・ナイトと一緒にアレンジしたんだ。

Carpentersの入り口としてちょうどいいアルバム

西寺 今回のアルバムも素晴らしかったです。リチャードさんはライブでも限りなく原曲に近い演奏をメンバーに要求していた印象があって。アドリブではなく、きちんと完成されたアレンジで演奏してきたリチャードさんが、Carpentersの楽曲をもう一度アレンジし直したことに感動しました。もちろん、いいところはしっかり残しながら。

リチャード・カーペンター

リチャード そうだね。今回のアルバムの制作は、ユニバーサル ミュージックのトップから持ちかけられたんだよ。これまでの成功例(The Beach Boys、ロイ・オービソンなどもロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団とのコラボレーション作品をリリースしている)を踏まえて、「Carpentersの楽曲なら、必ずいいアルバムができる」と。原曲にもオーケストラを使っているんだけど、もっとスケールの大きい編成で録音できるのは、僕にとってもすごく魅力的だったしね。あと、リリースから長い年数が経って、「この曲のアレンジは、こうしたほうがよかったかな」と思っていた部分もいくつかあって。それをやり直せる機会でもあったんだよ、今回のアルバムは。変えたいと言っても、ほんのちょっとだけどね。イジればいいというものではないから。

西寺 そうですよね。

リチャード 実際、「Top of the World」はほとんどそのままだし、「(They Long To Be) Close To You」も原曲に近い。だけど、制作を続けているうちにどんどん楽しくなってきて(笑)。カレンと僕の作品として、誇りに思えるアルバムになったね。

西寺 このアルバムをきっかけにして、Carpentersを改めて聴く若いリスナーも多いと思います。

リチャード そう、入り口としてちょうどいいよね。

西寺 後期のアルバム「Passage」(1977年)、「Made in America」(1981年)からも選曲されていて。

リチャード なるべく各アルバムからセレクトしたいと思っていたんだ。カレンの歌とハーモニー、僕のアレンジをショーケースできる曲を選んだんだよ。

Carpenters「カーペンターズ・ウィズ・ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団」
2018年12月7日発売 / UNIVERSAL MUSIC
Carpenters「カーペンターズ・ウィズ・ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団」

[SHM-CD] 2700円
UICY-15801

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収録曲
  1. Overture
  2. Yesterday Once More
  3. Hurting Each Other
  4. I Need to Be in Love
  5. For All We Know
  6. Touch Me When We're Dancing
  7. I Believe You
  8. I Just Fall in Love Again
  9. Merry Christmas, Darling
  10. Baby It's You
  11. (They Long To Be) Close To You
  12. Superstar
  13. Rainy Days And Mondays
  14. This Masquerade
  15. Ticket to Ride
  16. Goodbye to Love
  17. Top of the World
  18. We've Only Just Begun

日本盤ボーナストラック

  1. Please Mr. Postman
NONA REEVES「未来」
2019年3月13日発売 / Warner Music Japan
NONA REEVES「未来」

[CD] 3240円
WPCL-13008

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NONA REEVES ツアー情報
THE FUTURE 2019
  • 2019年5月3日(金・祝) 東京都 新代田FEVER
  • 2019年5月4日(土・祝) 東京都 新代田FEVER
  • 2019年5月11日(土) 大阪府 Music Club JANUS
  • 2019年5月12日(日) 愛知県 ell.FITS ALL
  • 2019年5月18日(土) 北海道 札幌KRAPS HALL
  • 2019年5月25日(土) 福岡県 DRUM SON
  • 2019年6月1日(土) 東京都 渋谷CLUB QUATTRO
Carpenters(カーペンターズ)
アメリカ・コネティカット州ニューヘイブンで1946年10月15日に生まれたリチャード・カーペンターと1950年3月2日に生まれたカレン・カーペンターの兄妹デュオ。音楽好きの両親のもと、9歳からピアノのレッスンをスタートしたリチャードは、1964年にカリフォルニア州立大学ロング・ビーチ校音楽専攻入学しコーラス部に加入する。一方のカレンも同年マーチングバンドに参加し、ドラムを始めた。1965年以降、リチャードとカレンはRichard Carpenter TrioやSummerchimesといったグループを友人と共に立ち上げるも、Summerchimesから改名したSpectrumの1968年の解散により、兄妹2人で活動していくことを決意。1969年11月にThe Beatlesのカバー「Ticket to Ride」でシングルデビューを飾ると、翌1970年にリリースした「(They Long To Be) Close To You」がBillboardのランキングで4週連続1位を獲得し一躍スターダムへとのし上がる。その後も「Top of the World」など大ヒット曲を連発した。1970年代半ばから体調を崩しがちになったカレンは、1983年2月4日に32歳という若さで帰らぬ人に。リチャードは1987年に「Time」、1997年に「Pianist, Arranger, Composer, Conductor」といった作品を発表し、ソングライターおよびプロデューサーとして活動を続けている。
NONA REEVES / ノーナ・リーヴス
NONA REEVES
西寺郷太(Vo)、奥田健介(G, Key)、小松シゲル(Dr)の3人からなる“ポップンソウル”バンド。1995年に結成し、1997年11月に「GOLF ep.」でメジャーデビューを果たす。初期はギターポップ色の強い楽曲を得意としていたが、1999年のメジャー2ndアルバム「Friday Night」を機にディスコソウル的なサウンドを追求し始める。その後も精力的に活動を続け、コンスタントに作品を発表。ポップでカラフルなメロディと洗練されたアレンジによって、国内でほかに類を見ない独自の立ち位置を確立する。西寺は文筆家としても活動し、80'sポップスの解説をはじめとする多くの書籍を執筆。さらにメンバーは3人とも他アーティストのプロデュースや楽曲提供、ライブ参加など多岐にわたって活躍している。2017年3月にメジャーデビュー20周年を記念したベストアルバム「POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES」を、10月には通算13枚目となるオリジナルアルバム「MISSION」をリリース。2019年3月にはニューアルバム「未来」を発売し、5月からレコ発ツアー「THE FUTURE 2019」を行う。