2019年にデビュー50周年を迎えるCarpentersとロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の共演によるアルバム「カーペンターズ・ウィズ・ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団」がリリースされた。リチャード・カーペンターが全曲をオーケストラアレンジで書き直し、名門ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団を自ら指揮、Abbey Road Studiosで録音した本作。「Yesterday Once More」「I Need to Be in Love」「Top of the World」といった名曲を豊潤なオーケストラサウンドと共に堪能できる歴史的な作品と言えるだろう。
このアルバムのリリースを記念して、音楽ナタリーでは本作のプロモーションのために9年ぶりに来日していたリチャード・カーペンターと西寺郷太(NONA REEVES)の対談をセッティングした。半世紀に渡って世界中の音楽ファンを魅了し続けるCarpenters。その本質に触れるような貴重なトークが繰り広げられた。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 相澤心也 通訳 / 染谷和美
彼女もNONA REEVESかい?
西寺郷太 はじめまして。西寺郷太と言います。ミュージシャンです。
リチャード・カーペンター 君が「Horizon」を持った写真をTwitterで見たよ。
下北沢のフラッシュ・ディスク・ランチにレコード買いに行ったら、山口君に会ったw。 pic.twitter.com/XC8U0TehyK
— 西寺郷太 (@Gota_NonaReeves) 2018年12月11日
西寺 ほんとですか!? ありがとうございます! 僕はNONA REEVESというバンドで22年前にデビューしました。まずは僕たちのアルバムをプレゼントさせてください(とNONA REEVESの最新アルバム「MISSION」を渡す)。
リチャード ありがとう。(CDジャケットのイラストの女の子を指さして)彼女もNONA REEVESかい?
西寺 いえ、女の子はいません(笑)。大学時代に友人2人とバンドを組みました。僕の役割はシンガーソングライターです。
リチャード なるほど。あとで聴かせてもらうよ。
西寺 今日はお会いできて本当にうれしいです。僕の父親は英語の教師で、彼自身の英語の勉強のために、Carpenters、The Beatles、ボブ・ディランなどのレコードを家の中で繰り返し聴いていたんです。僕は言葉を覚える前からずっとCarpentersの曲を聴いていて。
リチャード そうなんだね。カレンの発音はきれいだから、英語の勉強にも役立つのかも。特に「Horizon」の頃の発声はすごくクリーンだよね。
西寺 そうなんです。僕は物心がつく前からCarpentersの音楽に親しんでいたから、まずは「お会いできてうれしい」という気持ちを伝えたくて。
リチャード ありがとう。
憧れのAbbey Road Studiosでのレコーディング
西寺 僕はThe Beatlesもすごく好きで、中学1年生、12歳のときにAbbey Road Studiosに初めて行ったんですよ。
リチャード スタジオの中には入れた?
西寺 セキュリティの人が「小さい子が遠くから来たんだから」って、内緒で入れてくれたんですよ。だから、リチャードさんがCarpentersの楽曲をAbbey Road Studiosで録音された今回のアルバムは、個人的にもいろいろなことを感じたし、とてもうれしい作品なんです。
リチャード 僕にとってもうれしい作品になったし、憧れが詰まってるんだよね。Abbey Road Studiosのスタジオ2でレコーディングするのは、本当に特別なことだから。スタジオ2にも入った?
西寺 いえ、そこまでは行かせてもらえませんでした。
リチャード 体育館みたいに広いスタジオなんだよ。音響も素晴らしいしね。
西寺 以前にもAbbey Road Studiosで録音したことがありましたよね?
リチャード そうだね。最初は「Christmas Portrait」(1978年発売の“クリスマスアルバム”)のとき。そのアウトテイクを中心にしたアルバム(1984年発売の「An Old-Fashioned Christmas」)もAbbey Road Studiosで録ったんだけど、そのときはピーター・ナイトと一緒にアレンジしたんだ。
Carpentersの入り口としてちょうどいいアルバム
西寺 今回のアルバムも素晴らしかったです。リチャードさんはライブでも限りなく原曲に近い演奏をメンバーに要求していた印象があって。アドリブではなく、きちんと完成されたアレンジで演奏してきたリチャードさんが、Carpentersの楽曲をもう一度アレンジし直したことに感動しました。もちろん、いいところはしっかり残しながら。
リチャード そうだね。今回のアルバムの制作は、ユニバーサル ミュージックのトップから持ちかけられたんだよ。これまでの成功例(The Beach Boys、ロイ・オービソンなどもロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団とのコラボレーション作品をリリースしている)を踏まえて、「Carpentersの楽曲なら、必ずいいアルバムができる」と。原曲にもオーケストラを使っているんだけど、もっとスケールの大きい編成で録音できるのは、僕にとってもすごく魅力的だったしね。あと、リリースから長い年数が経って、「この曲のアレンジは、こうしたほうがよかったかな」と思っていた部分もいくつかあって。それをやり直せる機会でもあったんだよ、今回のアルバムは。変えたいと言っても、ほんのちょっとだけどね。イジればいいというものではないから。
西寺 そうですよね。
リチャード 実際、「Top of the World」はほとんどそのままだし、「(They Long To Be) Close To You」も原曲に近い。だけど、制作を続けているうちにどんどん楽しくなってきて(笑)。カレンと僕の作品として、誇りに思えるアルバムになったね。
西寺 このアルバムをきっかけにして、Carpentersを改めて聴く若いリスナーも多いと思います。
リチャード そう、入り口としてちょうどいいよね。
西寺 後期のアルバム「Passage」(1977年)、「Made in America」(1981年)からも選曲されていて。
リチャード なるべく各アルバムからセレクトしたいと思っていたんだ。カレンの歌とハーモニー、僕のアレンジをショーケースできる曲を選んだんだよ。
- Carpenters「カーペンターズ・ウィズ・ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団」
- 2018年12月7日発売 / UNIVERSAL MUSIC
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[SHM-CD] 2700円
UICY-15801
- 収録曲
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- Overture
- Yesterday Once More
- Hurting Each Other
- I Need to Be in Love
- For All We Know
- Touch Me When We're Dancing
- I Believe You
- I Just Fall in Love Again
- Merry Christmas, Darling
- Baby It's You
- (They Long To Be) Close To You
- Superstar
- Rainy Days And Mondays
- This Masquerade
- Ticket to Ride
- Goodbye to Love
- Top of the World
- We've Only Just Begun
- Please Mr. Postman
日本盤ボーナストラック
- NONA REEVES「未来」
- 2019年3月13日発売 / Warner Music Japan
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[CD] 3240円
WPCL-13008
- NONA REEVES ツアー情報
THE FUTURE 2019 -
- 2019年5月3日(金・祝) 東京都 新代田FEVER
- 2019年5月4日(土・祝) 東京都 新代田FEVER
- 2019年5月11日(土) 大阪府 Music Club JANUS
- 2019年5月12日(日) 愛知県 ell.FITS ALL
- 2019年5月18日(土) 北海道 札幌KRAPS HALL
- 2019年5月25日(土) 福岡県 DRUM SON
- 2019年6月1日(土) 東京都 渋谷CLUB QUATTRO
- Carpenters(カーペンターズ)
- アメリカ・コネティカット州ニューヘイブンで1946年10月15日に生まれたリチャード・カーペンターと1950年3月2日に生まれたカレン・カーペンターの兄妹デュオ。音楽好きの両親のもと、9歳からピアノのレッスンをスタートしたリチャードは、1964年にカリフォルニア州立大学ロング・ビーチ校音楽専攻入学しコーラス部に加入する。一方のカレンも同年マーチングバンドに参加し、ドラムを始めた。1965年以降、リチャードとカレンはRichard Carpenter TrioやSummerchimesといったグループを友人と共に立ち上げるも、Summerchimesから改名したSpectrumの1968年の解散により、兄妹2人で活動していくことを決意。1969年11月にThe Beatlesのカバー「Ticket to Ride」でシングルデビューを飾ると、翌1970年にリリースした「(They Long To Be) Close To You」がBillboardのランキングで4週連続1位を獲得し一躍スターダムへとのし上がる。その後も「Top of the World」など大ヒット曲を連発した。1970年代半ばから体調を崩しがちになったカレンは、1983年2月4日に32歳という若さで帰らぬ人に。リチャードは1987年に「Time」、1997年に「Pianist, Arranger, Composer, Conductor」といった作品を発表し、ソングライターおよびプロデューサーとして活動を続けている。
- NONA REEVES / ノーナ・リーヴス
- 西寺郷太(Vo)、奥田健介(G, Key)、小松シゲル(Dr)の3人からなる“ポップンソウル”バンド。1995年に結成し、1997年11月に「GOLF ep.」でメジャーデビューを果たす。初期はギターポップ色の強い楽曲を得意としていたが、1999年のメジャー2ndアルバム「Friday Night」を機にディスコソウル的なサウンドを追求し始める。その後も精力的に活動を続け、コンスタントに作品を発表。ポップでカラフルなメロディと洗練されたアレンジによって、国内でほかに類を見ない独自の立ち位置を確立する。西寺は文筆家としても活動し、80'sポップスの解説をはじめとする多くの書籍を執筆。さらにメンバーは3人とも他アーティストのプロデュースや楽曲提供、ライブ参加など多岐にわたって活躍している。2017年3月にメジャーデビュー20周年を記念したベストアルバム「POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES」を、10月には通算13枚目となるオリジナルアルバム「MISSION」をリリース。2019年3月にはニューアルバム「未来」を発売し、5月からレコ発ツアー「THE FUTURE 2019」を行う。