「星の鳥からの視点」を描いた8%のクリエイティブ
──ツアーのアートディレクションやグラフィックデザイン、グッズなどプロダクトデザインのクリエイティブは8%が担当したわけですが、これはどういう経緯で決まったんでしょうか?
直井 これは僕が8%のファンで。いろんなグッズの制作だけじゃなくてアート表現であったり、キュレーターであったり、幅広い活動をしているチームだから、いつか何かができればいいなとずっと願っていたんです。それでトイズファクトリーのスタッフも同じように思っていたということだったので、メンバーも含めて満場一致でお願いすることに決まって、みんなで会いました。
──8%さんが最初に依頼を受けたときの印象はいかがでしたか?
8% 僕は今34歳なんですけど、BUMP OF CHICKENの曲は高校生や大学生のときに普通に青春の1ページにあった曲たちで。特に「orbital period」の曲がそうだったんです。だからまずリバイバルツアーをやること自体にいちファンとしてめちゃくちゃ興奮して。それに携わることができる、一緒に作ることができるというのもとても光栄でした。それに加えて、時を経て28年の周期に自分もいたんだな、と感じられたというか。そこがリンクして「自分の番が来たんだ」みたいな感じがすごくうれしかった。巡り合わせを勝手に感じました。
──ビジュアルやアートワークを作っていく中で、どういうアイデアやコンセプトがありましたか?
藤原 もともと16年前のチャマ(直井)がデザインしたグッズのビジュアルがありまして。これをまず見てもらいました。
直井 僕らからオーダーしたのは、これを現代的にしてもいいし、ゼロベースでやっていただいてもいいので、好きにしてくださいという話でした。でも8%も話が早かったですね。山田監督もそうでしたけど、俺らのことをすごく理解してくれていて。
藤原 最初に彼らが出してきてくれたのが、まず当時のチャマのデザインを現代風にアレンジしたもの、あとはもう1つ、当時のデザインと視点が変わったものだったんです。当時のデザインは地表に家があって、その上に衛星があるのを横から見た絵なんですけれど、それをさらに上空から俯瞰で見ているという。これはすごいとなりました。
8% もともとのビジュアルはバンドにとっても、当時のライブに来た人にもすごく思い入れのあるビジュアルで。だから僕らがまったく新しいものを作るのは今回のリバイバルツアーのコンセプトとしては違うんじゃないかな、と最初に思ったんです。そこで、どうアップデートすればいいか考え、当時の絵を違う角度から見たらどんな景色が見えるんだろうと思い制作を始め、最終的に衛星の上から見た視点で作った絵にたどり着きました。
藤原 これはめちゃくちゃドキドキしました。情報は少ないんだけど、物語を感じるし、どこか物悲しくて寂しくて。僕らの28周年には「星の鳥」という概念が存在するんです。「星の鳥ってなんだろう?」と思った方は、こちらについてもぜひ特設サイトを見ていただければ幸いなんですけど、僕らとしては「星の鳥からの視点だな」と解釈しました。これがキービジュアルになったら映画のポスターみたいじゃないですか。あと、16年前と同じ構図で記号的になったバージョンのほうは、ほかのところでいっぱい使っていけるよねって。どちらも捨てがたくて、両方使わせてくださいということになりました。
──グッズにはいろんなバリエーションがあり、ツアーに来た人が手に取って「ホームシック衛星」や「星の鳥」の物語を持ち帰れるようなアイテムになっているように思います。このあたりもいろいろディスカッションしながら作っていった感じなんですか?
直井 基本的には8%チームにお願いしました。「orbital period」の中には藤くんが描いた「星の鳥」という絵本形式のブックレットがあって、その中に登場するキャラクターがたくさんいるんですけど、そのグッズって当時はなかったんですよ。なぜならアルバムを発売してすぐのツアーで、連動してグッズを出すことは不可能だったので。リバイバルツアーをせっかくやるんだったら、当時の藤くんの絵のキャラクターを使って出したら絶対うれしいんじゃないかという。あと、キッズTだけは前回のTシャツのデザインを使っているんですよ。
8% そこについては、時間が経って子供ができて、それぞれの生活もあって、だけど今回のツアーでもう1回BUMP OF CHICKENのライブに行こうと決めた人がたくさんいるだろうな、と思って。その時の流れを考えたら、例えば20代のときにライブに行ってた人が親になって、自分の子供に同じTシャツを着せられたら素敵だなと。それがリバイバルツアーである意味だし、そういうのを形にしたらいいんじゃないかと思って提案しました。
いつでも思い出せるカタチあるものになれば
──映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR ホームシック衛星2024 at ARIAKE ARENA」についても伺わせてください。こちらもかなりスペシャルなパッケージになっていますが、このリリースの話はどういうところから始まったんでしょうか?
直井 まず有明アリーナ公演の2日目に関してはアルバム「Iris」の初回限定盤のBlu-rayに収録されているので、「初日はどうしよう?」という話から始まったんです。ちゃんとパッケージにしてリスナーに届けたいというトイズチームの思いがあって、メンバーとしても「ぜひそうしたい」と思って。そこから8%にお願いして、太田さんと8%に形にしてもらった感じですね。
──パッケージデザインにはどんなコンセプトがありましたか?
8% もちろんメインはBlu-rayのライブ映像だと思うんです。でも、ツアー全体、ひいてはもとのツアーも全て含めてパッケージングできたらいいな、というのがコンセプトとしてありました。ツアーに参加しなかった方にはこのツアーの雰囲気、熱量が最大限伝わる形で、ツアーに参加した人にとっては記念になるものとして、いつでも思い出せるカタチあるものになったらいいなというところから組み立てていった感じです。
藤原 これ、とても親切なつくりなんですよ。フタを開けると、これにまつわるインタビューで我々がいつも困っている“28”にまつわる説明が、最初に図解でわかるようになってる。
8% ここが一番大事な部分なので。デザイン的に、グラフィカルにカッコよく溶け込むような伝え方をしようと思って、この図に落とし込みました。わかりやすく伝えるにはどうすればいいかという考えで。
増川 宇宙船に貼り付けてあるメッセージみたいな感じだよね。仮に文字が読めなくてもなんとなくわかりそうな。
8% 宇宙船の中にこういうものが入ってたらいいな、というような考えもありました。あとは開けたときの喜びとドキドキ感を意識しました。
増川 この大きさでいこうと思ったのは?
8% 大きな形でBUMP OF CHICKENの音楽を飾れたらいいなと思い、音楽と親和性の高い大きなサイズというところからLPサイズがいいのではないかとなりました。
藤原 このキービジュアルが好きな俺たちとしては本当にうれしいです。