音楽ナタリー Power Push - BUMP OF CHICKEN

結成20周年を飾る新作と20年の礎たるルーツミュージック

EDMを作ろうという感覚はなかった「Butterfly」

──「Butterfly」などの曲では、エレクトロニックな音色がかなり前面に出ていますよね。

増川 この曲はどこかに連れていってくれるような高揚感のある曲なんですけれど、僕としてはすごくバンド感を感じる曲でもあるんですよ。グルーヴがちょっとでもズレたら曲の持っているムードが損なわれてしまう難しさがある。

直井 「Butterfly」は打ち込みをリズムのメインにして、いろんなパートがスウィングしてるんです。だから、僕らがリズムに合わないことをするとハマらないんですよね。なので今回はそのグルーヴを練習したり、1990年代のポップスとか、昔の曲でリズムがハネているものをたくさん聴いたりもしました。

──「Butterfly」のアレンジは、曲を作るときにはイメージしていましたか?

藤原 いや、全然イメージしていなかったです。僕が1人で最初に作るデモは、すべての曲において、だいたいがアコギの弾き語りの状態なんです。でも、そこまでできていれば「曲ができた」と僕は言っていいと思っていて。逆の言い方をすると、どれだけアレンジがしっかり完成していても、メロディが仮のものだったり、歌詞がラララだったら、僕の中では「曲ができた」とは言えない。だから、曲を作るときにはメロディと歌詞をちゃんと完成させるところまでしか考えないんです。

──「Butterfly」はEDMっぽいシンセのフレーズにまずは耳がいくけれど、よくよく聴くと生々しさもある。不思議な深みのあるサウンドだと思います。

藤原 結果的にいわゆるEDM的な音選びになりましたけど、必ずああいう音で入れたかったわけではなかったんです。まずはあのフレーズを入れたくて、どの音で入れるのが一番効果的なのかを選んでいった結果という。

直井 だから僕らからすると、今回はどの曲も等しくバンドで作った感じですね。EDMを作ろうって感覚はまったくなかった。

藤原 曲に対して適切な音を選んでいったらああなったんだよね。

──この曲のメロディと歌詞を紐解くと、強い孤独感がありますよね。でもアレンジが加わったことですごく高揚感のある聴き応えになり、そのダイナミズムが曲の魅力になっているんじゃないかと。そのあたりはどうでしょうか?

藤原 本当にその通りだと思います。で、意識的ではないんですけれど、自分たちのやってきたことにはそういう対比がとても多いと思いますね。この曲で言うと、きっかけとしては、僕がアコースティックギターの伴奏で歌ったデモテープを聴いて、その歌の中に16ビートのノリを感じられる箇所がいくつかあったので、そこに合うようなアレンジを付けていったんです。「あ、この曲は16ビートなんだな」っていうのはだんだんわかっていった感じです。

うれしいことも悲しいことも、生も死も等しく存在する音楽

──「GO」「Butterfly」「流星群」「宝石になった日」「大我慢大会」「孤独の合唱」という6曲が、このアルバムの書き下ろしの新曲ですよね。これが藤原さんからデモの形で届いたときというのは、皆さんとしては、どういう印象だったんでしょうか?

増川 毎回こんなことしか言ってないんですけど、やっぱり、すごい驚きと感謝と感動があって。特に、さっき直井くんが言ってた、深夜3時に聴かせてもらった曲が「宝石になった日」なんです。脳みそがちょっとハイになってる状態だったせいかもしれないけれど、そのときのことはすごく印象深く覚えていますね。

 今回のアルバムに関しては、デモを聴かせてもらう段階でアレンジがしっかり見えているものが特に多かった気がします。ただ、逆にそれにどうバンドサウンドとしてパワーを付けていくかを意識させられましたね。自分のことで言うと、打ち込みが入ってるものに対して、どう生のドラムを叩くのか。この6曲に限らず、それは今回の全体的なテーマだった気はします。

直井 僕は「GO」を初めに聴いたとき、「これ、アルバムのリードになるんだろうな」って思ってたんですね。もう、すごくいい曲だったから。で、次に「Butterfly」を聴いたときにも、「これ、アルバムのリードになるだろうな」と(笑)。

──はははは(笑)。うん。

直井 「宝石になった日」を聴いたときもそうだったし、僕にとっては全部が等しく輝いているんですけど、その中でも「Butterfly」はキラキラと光っているイメージですよね。でもさっき柴さんが言ったように、根幹にあるメロディや言葉はやっぱり暗いのに、そういうものがキラキラして見える。「ray」や「虹を待つ人」もそうだけど、そういう曲が僕らの歌なんじゃないかなと思うんです。うれしいことも悲しいことも、生も死も等しく存在している。僕らの歌にも、それが常に混在し続けている。そういうことだと思うんです。

ニューアルバム「Butterflies」/ 2016年2月10日発売 / TOY'S FACTORY
初回限定盤
初回限定盤A [CD+DVD] / 4860円 / TFCC-86550
初回限定盤B [CD+Blu-ray] / 5940円 / TFCC-86551
通常盤
通常盤 [CD] / 3240円 / TFCC-86552
CD収録曲
  1. GO
  2. Hello,world!
  3. Butterfly
  4. 流星群
  5. 宝石になった日
  6. コロニー
  7. パレード
  8. 大我慢大会
  9. 孤独の合唱
  10. You were here
  11. ファイター
初回限定盤A付属DVD・初回限定盤B付属Blu-ray
-Music Video-
  1. You were here
  2. ファイター
  3. パレード
  4. Hello,world!
  5. コロニー
-Special Live 2015 at Yokohama Arena-
  1. パレード
  2. Hello,world!
  3. ハンマーソングと痛みの塔
  4. 才悩人応援歌
  5. morning glow
  6. ファイター
  7. 太陽
  8. ギルド
  9. ハルジオン
  10. embrace
  11. 虹を待つ人
  12. 乗車権
  13. supernova
  14. ガラスのブルース
  15. ray
  1. EN1. コロニー
  2. EN2. メーデー
BUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)

藤原基央(Vo, G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によって結成。地元・千葉や下北沢を中心に精力的なライブ活動を展開し、1999年に1stアルバム「FLAME VEIN」、2000年に2ndアルバム「THE LIVING DEAD」をリリースする。これが大きな話題を呼び、同年9月にシングル「ダイヤモンド」でメジャーデビュー。2001年にはシングル「天体観測」が大ヒットを記録し、ロックファンを中心に熱狂的な支持を集めた。その後順調にキャリアを重ねていき、2014年には7枚目のオリジナルアルバム「RAY」の発表をはじめ、初音ミクとのコラボレーション、初の東京ドーム公演などでも話題を集める。2014年12月に全国ツアー「WILLPOLIS 2014」を追ったドキュメンタリーとオープニングムービーで構成された映画「BUMP OF CHICKEN "WILLPOLIS 2014" 劇場版」が全国の劇場で公開され、2015年2月にはDVD / Blu-ray化された。同年4月にはテレビアニメ「血界戦線」の主題歌「Hello,world!」と映画「寄生獣 完結編」の主題歌「コロニー」を収録した両A面シングルをリリース。結成20周年となる2016年2月、約2年ぶりのフルアルバム「Butterflies」を発表し、地元・千葉県の幕張メッセにて「BUMP OF CHICKEN結成20周年記念Special Live『20』」を開催。4月からは「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 "BFLY"」を行う。