「この曲が入ることでアルバムがダメになるかも」

田邊　あと、「LIVER」は俺が「面白くない」と感じていた一番の原因だったかも。サビのフレーズはだいぶ前からあったよね？

江口　2年前くらいからあった。

──タイトル通り“ライブ”“オーディエンス”に向けられたアッパーチューンですよね。

田邊　そうですね。でも「この曲が入ることで、アルバムがダメになるかもしれない」くらいに思ってたんですよね、最初は。すげえ安易というか……。それを打破するべく取り掛かった結果、今のアレンジができたんですよ。

──間奏のパートで意外な展開を見せるし、すごくエッジが効いてますよね。

辻村　かなり時間がかかってますけどね。みんな基本的にマジメだから、普通にやったら普通の曲になっちゃうんです。だからと言って、どうやって面白いことを取り入れればいいかもわからなくて。とりあえずベースにエフェクターをかけてみたり……。

田邊　そういうことを1日かけてやってたよね（笑）。いろいろ試していく中で、音色をいじるんじゃなくて、流れを気持ちよくぶっ壊すことが大事なんだなっていうことが見えてきたというか。「KICKASS」ができたこともすごくよかったんですよね。この曲の歌詞、メンバーみんなで考えたんですよ。それも初めてだったんですけど、「アルバムの1曲目のサビの歌詞にふさわしい言葉をみんなで挙げていこうぜ」って話し合って。その中で最後に残ったのが「KICKASS」というフレーズだったんですけど、それを基にして俺がアコギでメロディを付けて。

江口　レコーディングの最中だったんですよ、それも。俺がギターを録り終えて戻ってきたら「いいのができた。聴いて」ってアコギで歌ってくれて。

田邊　そのあたりからイヤな感じが抜けたよね。

江口　いやーそうでもないよ。その後、別の曲でギターのフレーズを考えていったときも、すごい勢いでダメ出しされて……。

田邊　え、どの曲？

江口　「TAKEN」。

田邊　あ、そうだ。すげえキレたわ、俺（笑）。

辻村　確かに怒ってた。よく覚えてるよ。

江口　そこで喝を入れられた感じもあったんですよね。「これじゃイカン」と思って、ギターのアレンジも練り直して。

1stアルバムなんだから絶対に後悔したくない

──田邊さんの「このままじゃダメだ」っていうモードはしばらく続いてたんですね。

田邊　“ポイズン田邊”の時期ですね（笑）。何かに憑り付かれたように毒を吐いてたから。

高村　めちゃくちゃ不機嫌だったんですよ。

江口　そう、ずっとイライラしてたよね。どうした？って思うくらい。

田邊　ずっと言ってましたからね。「今、何をやっても楽しくない」って。

辻村　人生的につまずきかけてたのかもね（笑）。

江口　その時期って、レコーディングも大変だったし、ライブでもうまくいかないことがあって。わりと4人とも負のオーラを出してたんですよね。

辻村　しかも田邊はずっと怒ってるし。さすがにみんなシュンとしてたよね。

田邊　普段はみんなポジティブで「大丈夫だよ」って言ってくれるんだけど、そのときは僕のネガティブに同調しちゃってたから。

──メジャーデビューして、注目度が高くなって、ライブの動員も増えて。「このタイミングで絶対にすごいアルバムを出さなくちゃいけない」という思いが強かったんでしょうか。

田邊　それはあんまりなかったんですよね、実は。「このタイミングだから」ということよりも、俺らの1stアルバムなんだから、絶対に後悔したくないというか。もがき苦しんで作った過去の曲に対しても、「今の自分たちが負けるわけにはいかない」という気持ちがあったし。とにかく自分たちのテンションが上がるようなアルバムを作りたいっていう……。だから、すごく主観的なことなんですよね。

江口　そうだね。

田邊　ポイズン田邊も出てきちゃいましたけど（笑）、今まで以上に面と向かってみんなと話せたし、それがバンドの足かせになることもなかったので。バンドの状態はすごくいい状態だったと思うんです、振り返ってみると。あと、衝動だけでじゃなくて、この先にある未来を見据えながら作っていたところもあって、それも大変だったんですよ。そのことを一番考えたのは「SMILE」なんです。収録するかどうか、最後まで躊躇してましたからね。

高村　曲調的にもね。

田邊　そう、めちゃくちゃポップだから。これを入れないで、10曲で完結させることも考えたんですけど……。

高村　それだと最後の「もっと光を」にうまくいけない感じがあったんですよ。

田邊　「もっと光を」をラストにするっていうのは決めていたので。その前にもう1曲入れたいな、と。

──すごくポップだし、ポジティブな曲ですよね。田邊さんがネガティブな状況を抜けて、さらに前に進み始める感情の動きもそのまま歌われていて。

田邊　さわやかですよね。仮タイトルが「ポカリ」ですから（笑）。

江口　CMに使ってほしいよね（笑）。

田邊　でも、「SMILE」を入れてホントによかったです。BLUE ENCOUNTらしいノンジャンル感にもつながってるし。さっき言った“衝動”と“未来を見据える”の間をつないでくれる曲じゃないかなって。