BLUE ENCOUNTが映画「映画刀剣乱舞-黎明-」の主題歌として新曲「DESTINY」を書き下ろした。
現在公開中の「映画刀剣乱舞-黎明-」は、名立たる刀剣が戦士へと姿を変えた“刀剣男士”を率い、歴史を守るために戦うゲーム「刀剣乱舞ONLINE」を原案にした実写映画の第2弾。「アベンジャーズ/エンドゲーム」など数々のヒット作を手がけてきたチームがビジュアルエフェクトを手がけた今作では、ハリウッドクオリティのスケール感のある映像で刀剣男士の熱い戦いが描かれている。監督は2019年1月に公開された映画の第1弾「映画刀剣乱舞-継承-」に引き続き、耶雲哉治が務めた。
音楽ナタリーではBLUE ENCOUNTの田邊駿一(Vo, G)と耶雲監督に映画と主題歌について語り合ってもらった。また「映画刀剣乱舞-黎明-」オフィシャルサイトに未掲載分のテキストと写真が掲載されているので、そちらもぜひチェックしてほしい。
取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / YOSHIHITO KOBA
メガネの話から入っちゃってすみません(笑)
田邊駿一(BLUE ENCOUNT) 試写会で初めてお会いして、そのあとブルエンの日本武道館公演に来ていただいたので、こうしてお会いするのは今日で3回目ですね。
耶雲哉治 はい。まだ3回目なので、街ですれ違ってもたぶんお互い気付かないですよね(笑)。
田邊 そうですね(笑)。それに僕は街を歩いているときはメガネを外しているから、本当に誰にも気付かれないんですよ。BLUE ENCOUNTのバンドTシャツを着ているファンにすら気付かれないですから。
耶雲 メガネの効果、絶大ですね。メガネはいつからかけているんですか?
田邊 高校生の終わりくらいからですね。今かけているのは伊達なんですけど、高校のときは本物でした。夜中に「バイオハザードⅡ」をしすぎて目が悪くなって(笑)。
耶雲 あははは!
田邊 それ以来ずっと度のあるメガネをかけていたんですけど、ライブ中、大事なMCのときにメガネが曇るという事象が発生してしまいまして。それで10年以上前、今のチーフマネージャーさんと出会ったときに「コンタクトにしたら?」と提案してもらったんです。とはいえ群雄割拠のバンド時代ということで「キャラ立ちは大事だ」「やっぱりメガネは必要だろう」という話になり、伊達メガネに至りました。
耶雲 フレームは昔からそういう形だったんですか?
田邊 メジャーデビューのタイミングでこの形に変えたんですよね。ZOZOTOWNで買ったフレームです。
耶雲 そうなんだ!(笑)
田邊 ファンの方から「そのメガネはオリジナルですか?」とよく聞かれるんですけど、「いや、ZOZOTOWNです」という(笑)。
耶雲 というか、メガネの話から入っちゃってすみません(笑)。
田邊 いやいや! むしろ普段のインタビューではなかなか聞かれないことなので。
耶雲 あ、そうなんですか。トークがすごく仕上がってたから、もう何百回もしゃべったことがある話なんだと思ってました(笑)。
1日3回「ノッティングヒルの恋人」
田邊 映画監督の方とお話しするのは初めてなので、とても楽しみにしてました。僕の中で映画監督という職業は全職業の中でトップなんですよ。そのくらい尊敬しています。
耶雲 監督になってよかったな(笑)。さっき撮影中に雑談していたとき、今日は「エブエブ」(「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」)を観てきたとおっしゃっていましたよね。映画はお好きなんですか?
田邊 大好きです! 幼少期に「スピード」の1作目を父と観に行って以来、ずっと好きですね。空手を10年やっていたのもあって、マーシャルアーツ的な、アクション映画から入りました。父と一緒に観るのはだいたいジャッキー・チェンの作品か、ハリウッドアクションか、極妻(「極道の妻たち」)か、仁義(「仁義なき戦い」)。中学生になってからスティーヴン・ソダーバーグに出会って、「エリン・ブロコビッチ」あたりの作品を観始めました。
耶雲 急に大人っぽくなりましたね。
田邊 思春期に入って色気付いたんでしょうね(笑)。父がDVD再生機能付きパソコンを持っていたので、地元のTSUTAYAでDVDを借りてきて、B級から超大作まで、1週間で20本観たりしていました。王道のラブストーリーも好きなので、「ノッティングヒルの恋人」を1日3回観たこともありましたし。
耶雲 すごい! 変人じゃないですか!(笑)
田邊 変人です(笑)。おじいちゃんからは香港映画を教えてもらいましたし、母も映画好きなので2人で「Ray/レイ」を観に行ったことがありました。街で待ち合わせて、「今日は『Ray/レイ』を観に行くから洋食を食べよう」とちょっとおしゃれなものを食べてから映画館に行って。
耶雲 すごく文化的なご家庭ですね。ご出身は熊本でしたよね? 行定勲監督もそうだけど、映画界で第一線で活躍している人には熊本出身の人が多いし、熊本には「熊本映画祭」もあるから、映画文化が根付いている地域なのかなと今お話を聞きながら思いました。
田邊 熊本市内にはDenkikanとか、シネコンがいくつかありますしね。自治体が作ってくれていたスタンプラリーみたいなものがあったんですよ。高校生は1本1000円で観られて、5回見ると1回タダになる、みたいな。そう考えると、熊本市は映画に力を入れていたのかもしれないです。
耶雲 デートのときも映画ですか?
田邊 そうですね。デートも映画だったし、ケンカした友達と仲直りをしたあとに映画を観に行ったこともありました。まだ付き合ってないけど、いい雰囲気の女の子が2人いた時期があって、2週連続同じ曜日に「ラブ・アクチュアリー」を観に行ったこともありました。あれは1回で十分だろって感じのお祭り映画なので、さすがに、頭から湯気が出そうになって(笑)。
耶雲 水曜日でしょ?
田邊 はい、1000円の日。
耶雲 ですよね! その環境はうらやましいなー。ジャンルにとらわれずにいろいろな映画を観ていると、自分の中にライブラリとしてどんどん溜まっていきますよね。
田邊 そうですね。ふとした瞬間に「これ、あの映画のあのシーンみたいだな」と思ったり、「この監督、昔はインディー映画を撮っていたのにこんなに巨大な作品を撮れるようになったんだ!」という楽しみ方をできるようになったり。[Alexandros]の川上洋平さんたちと映画クラブを結成しているんですよ。LINEで洋平さんから映画のワンシーンの写真が送られてきて、「これはなんの映画でしょう?」というクイズが突然始まることがあるんですけど、そのたびに自分のライブラリが試される感じがあって(笑)。
耶雲 それぞれが持っている映画知識のストックがバレちゃいますね。
田邊 そうなんですよ。僕と洋平さんは歳が近いんですけど、僕らが青春時代を送っていた頃に熱かったのは、さっきも挙げた「スピード」とか、ヤン・デ・ボンのはちゃめちゃアクションとか、トニー・スコットとか……。
耶雲 詳しいなー。俺、そこまで映画に詳しくないので、今めちゃめちゃ焦ってます(笑)。
田邊 いやいや。しゃべっていたら白熱しちゃって、汗かいてきちゃいました(笑)。
主題歌も映画の一部
耶雲 今回、「主題歌は誰にお願いします?」という話になったとき、映画にちゃんと寄り添ってくれる人にお願いしたいなと思ったんですよ。「主題歌はエンドロールのBGMじゃない、映画の一部なんだ」という気持ちで一緒に制作してくれる人がいいなと。なので、映画のことをこんなに汗だくで語るような方にお願いできて、本当によかったなと思っています。
田邊 そう言っていただけてうれしいです。
耶雲 BLUE ENCOUNTはいろいろな映画やドラマ、アニメの主題歌をたくさん作ってこられたじゃないですか。僕はアニメやドラマに詳しくないけど、BLUE ENCOUNTがこれまで手がけてきた主題歌を聴いたとき、どの主題歌も映画やアニメ、ドラマの世界観にすごく寄り添っているので、「これは、オープニング映像を作っているスタッフもきっと楽しかっただろうな」と感じたんです。それで今回実際に主題歌をお願いできて、上がってきたデモを聴いたとき、「めっちゃ寄り添ってくれるやん!」と思って。なんなら寄り添いすぎて、ちょっと近いと思っちゃうくらい(笑)。
田邊 近すぎてちょっと嫌がるレベルですよね(笑)。
耶雲 びっくりするくらいのストレートで、ドンとストライクゾーンに来てくれて。歌詞を読んだとき、これだけで1つの物語ができているなと感じました。
田邊 うれしい。今日「エブエブ」を観に行ったのは主演のミシェル・ヨーが小学生の頃からずっと好きだからなんですけど、そのミシェル・ヨーがボンドガールの座を射止めた「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」がきっかけで映画音楽、特に主題歌が好きになったんですよ。BLUE ENCOUNTを始めてからは、タイアップでもそうじゃなくても、全曲なんらかの主題歌のつもりで作っているので、そう言ってもらえて本当にありがたいです。
耶雲 全曲主題歌のつもりというのは?
田邊 「トム・クルーズ主演で、スパイもので、こういう結末の映画があるとして、そのエンドロールで流れる曲」みたいな。
耶雲 ああ、妄想映画の主題歌を制作するということですね!
田邊 はい。メンバーにも今言った感じで説明しているし、高校時代から今までずっとこのやり方です。主題歌を作ることは自分にとってライフワークのようなもので、だからこそ「主題歌なら誰にも負けない」と思えている。僕がメガホンを取ることは絶対にないけど、才能豊かな方々がさまざまな作品を撮り続けてくれているからこそ僕もずっと映画ファンでいられているし、この映画愛のおかげで「作品に寄り添ってくれる」と言ってもらえるような曲を書くことができているのかもしれないです。
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