ナタリー PowerPush - BLUE ENCOUNT
4人の“気にしい”が鳴らす 超共感型エモロック
ライブでは超ポジティブ! 普段は……
──皆さん、徹底的にリスナーの立場に立ってますね。
田邊 “気にしい”で、心配性なんですよ(笑)。
江口 去年はお客さんがいっぱいいる場所でライブをやらせてもらってたんですけど、一昨年は全然いなかったので。まだ「自分たちのライブにはお客さんが入る」という確信がないんですよね。
田邊 一昨年の時点では「1年後(2013年)のワンマンツアーが全公演ソールドアウトする」なんて全然想像できなくて。
江口 チケットが売り切れたって聞いても、まだ不安だったんです。
田邊 「来ないんじゃないか?」って(笑)。
──ひどい心配性ですね(笑)。ライブの状況が変わってきたのは、いつ頃ですか?
田邊 やっぱりフェスに出させてもらうようになって、興味を持ってくれる人が増えましたね。自分たちのライブというものを信じてやってきて、ホントによかったなって思います。フェスの場合、20分とか25分しか持ち時間はないんだけど、その中で「どれだけ爪跡を残して、どれだけの人にCDを買ってもらえるか?」ということを考えながらやってきたことが結果につながったというか。ただそれはフェスに出るようになってから考え始めたことでもなくて、昔から、例えばお客さんが10人しかいないような状況であっても、だったら「10人、全員に買ってもらおう」って話したりはしてたんです。
江口 そういうことは毎回話してたよね、ホントに。
田邊 そのポジティブさやハングリーさは今も変わってないですね。メンバー全員普段はこんなにネガティブなのに、ライブに関してはなぜか自分たちを信じられるというか、ポジティブなんですよ。ステージに立ったら、メンバーの攻撃力がアップするというか(笑)。
ファンと一緒に泣いて笑う“風呂上がりの自分”
──音源を聴くとめちゃくちゃパワフルだし、皆さん堂々としてるイメージしかないんですけどね。
田邊 でも周りからは「腰が低いね」ってよく言われるし、自分自身、カリスマ性のあるボーカリストだなんて全然思ってないんです。ライブのMCのときもこのまんまだし。不安なときは「不安です」って言っちゃうので。「俺が引っ張ってやるぜ」ではなくて、「ひとつ屋根の下で一緒に闘いましょう」って感じなんですよ。そうやって、一緒に闘う同志を集めてるというか。実際、お客さんに助けられたこともたくさんありますからね。こっちの心が折れそうなとき、お客さんの歌声に力をもらったり。そうやって一緒に泣いて、一緒に笑えるバンドでいたいな、と。
──そういう意識は「BAND OF DESTINATION」にも反映されていそうですね。
田邊 そうですね。やっぱり強い人間がやってるバンドではないんですよね。弱いからこそ活動を続けていく中で生まれたメンバー同士の絆やお客さんとの絆を大切にしたいし、みんなで一緒に強くなりたい。だからどうしたら強くなれるか、必死で考える。そういう人が書いてる曲ですから。
──バンド活動を始めた当初から、現在のようなスタンスだったんですか?
田邊 いや、結果的にこうなったんだと思います。
辻村 「これしかなかった」っていう。
田邊 「こういう感じでバンドをやっていこう」みたいなことを話し合ったこともないですからね。今とはまったく逆の時代もあったんですよ、実は。僕がカリスマを演じようとしていて……。
──ええっ?
田邊 (笑)。ライブ中、僕は何もしゃべらなくて、MCはベースの辻村がやってましたから。
辻村 ホントに何もしゃべらなかったよな。
田邊 最後に(聞き取れないほど小声で)「どうもありがとうございました」って言うだけ(笑)。
辻村 共演したバンドマンもすげえ驚いてましたからね。楽屋とライブのテンションが全然違うから。
江口 「ステージでも素を出したほうがいい」って言われることもあって。
田邊 言われてたね。昔、先輩に「風呂上がりのおまえでいろ」ってアドバイスしてもらったことがあるんですよ(笑)。「あとは布団に寝転ぶだけ」みたいな無防備な状態でステージに上がったほうが、おまえは絶対に売れるって。
──それを実践してみた、と。
田邊 素の自分でステージに立つようになったのは、半ばヤケクソだったんですけどね。カリスマを演じようとしてる自分にも虫唾が走ってきて、ある日からいきなり「もういいや。このままの感じでライブをやろう」と思って。そうすると、ライブが楽しくなってきたんですよね。カッコつけないで、思ってることを全部さらけ出そうっていう。
──田邊さんのスタンスが変われば、バンド全体の雰囲気も変わってきますよね。
辻村 最初は少し差があったんですけどね。ボーカルのテンションに俺らがついていけなかったり。
江口 一心同体というか、ボーカルのエンジンがかかった瞬間、それに負けないくらいの気持ちで着いていかなくちゃいけないんだけど、それがうまくいかなくて、田邊がイラつくこともあったり。
田邊 4人で1つのことができないと意味がないですからね。やっぱり、去年の経験が大きかったんですよ。大切なライブが増えたし、それが自分たちの血となり、肉となって、メンバー全員すごく成長したと思います。僕のテンションを読み取る力もアップしたと思うし、僕自身、メンバーに助けられることも増えたので。すごく歌いやすくなりましたね。
- ニューアルバム「BAND OF DESTINATION」 / 2014年2月5日発売 / 2300円 / BounDEE by SSNW / XQLS-1003
- ニューアルバム「BAND OF DESTINATION」
収録曲
- opening~B.O.D~
- DESTINATION
- アンバランス
- HALO
- HANDS
- GO CRAZY
- T.K
- YOU
- JUST AWAKE
- THANKS
- ONE
- D.N.K
- 声
- VOICE
- PLACE
BLUE ENCOUNT(ぶるーえんかうんと)
田邊駿一(Vo, G)、江口雄也(G)、辻村勇太(B)、高村佳秀(Dr)の4人からなるロックバンド。2007年、田邊、江口、高村が地元熊本でバンドを結成し、2009年、3人の進学先である都内の音楽専門学校で辻村と出会い現体制となる。2010年の1stミニアルバム「the beginning of the beginning」を、2012年には2ndアルバム「HALO EFFECT」をリリース。「HALO EFFECT」収録の「HALO」がYouTubeで70万回以上再生されるなど、この頃よりライブハウスシーンで頭角を現すように。2013年にはライブ会場限定CD「SIGNALS」やミニアルバム「NOISY SLUGGER」、MY FIRST STORY、SWANKY DANK、AIR SWELLとのスプリットアルバム「BONEDS」を発表。年末には初のワンマンツアー「NEXT DESTINATION」を開催し、全公演ともソールドアウトさせている。またその一方で同8月の「SUMMER SONIC 2013」や、12月の「COUNT DOWN JAPAN 13/14」「GT2014」と大型フェスにも立て続けに出演。そして2014年2月に初のフルアルバム「BAND OF DESTINATION」をリリースした。