Bitfan特集 あらき×小久保知洋インタビュー|アーティストとファンをつなぐプラットフォームの魅力とは (2/2)

あらきがBitfanに求めるもの

──あらきさんからBitfanに対して、何か要望などはありますか?

あらき それはもう、いっぱいありますよ。

小久保 (笑)。

あらき もっとも使い道が謎なのがグループチャット機能なんですけど……いい使い道が思い浮かばなくて、開設以来ずっとオフにしているんです。お客さん同士でコメントしあうことができても、そもそも自分のコメントをほかの人に見られたくないって人は多いし、よく発言する人だけで回ってもなあ……という思いがあって。

小久保 そこはアーティストのポリシー次第でもあるのかなとは思います。ファン同士で大いに交流してほしい人もいれば、そうでない人もいますので。例えば、期間限定でグループチャットを開放するような運用もあり得るでしょうし。

あらき それはちょっと考えてるんですよね。例えば、缶バッジなどのグッズをコンプリートしたい人同士で交換交渉の場として使ってもらうとか。現状はだいたいみんなTwitterとかで交渉してるんですけど、それだと詐欺の危険性もあるじゃないですか。だから、まあファンクラブ内だけにはなっちゃいますけど、そういう目的の掲示板として使えたら機能するのかなあなんて。

小久保 期間と用途を限定すれば、あらきさんにも使い道が生まれるということですよね。今のBitfanでは1つのファンクラブにつき1つのグループチャットしか開設できないんですが、複数スレッドを持てるよう開発を進めているところです。「各スレッドに開設期間の設定もできたらいいよね」という話も出ていますね。

小久保知洋

小久保知洋

──グループチャット以外の機能についてはどうでしょう?

あらき 今、ライブ会場ではコロナ対策でお手紙やプレゼントを一切受け取れないんです。昔からみんなお手紙をよく書いてくれていたんですけど、ここ数年はまったく受け取れていない。だから、その代わりにファンクラブのフォーム機能を使ってお便りを募集しているんですね。ただ、いかんせん問い合わせ用のフォームなんで、エクセルのシートみたいな形に出力されたものを俺は確認することになるわけですよ。

──すごく事務的な情報になってしまうんですね。

あらき しかも、それが今すごい長さになっていて(笑)、スクロールするだけでも大変なんです。これを例えば、メールを読むみたいに横スワイプとかで1件1件見られたら、多少は“お手紙感”が出るかなと。たぶん、フォーム機能をそんな使い方しているのは俺だけだろうから(笑)、かなりニッチな要望だとは思うんですけど。

──例えばですけど、ファンレターを送ることだけに特化した新機能が1つあってもいいのかもしれないですね。

あらき 確かに、それに特化するのも面白いかも。

小久保 それ、いいですね! テンプレートをいくつか用意したりして……。

あらき なるほど。便箋のデザインを選ぶみたいな感じで。ブログを書くときみたいにフォントや文字色を選べたり、アンダーラインとかで装飾なんかもできると楽しそう。それができたら、うちのお客さんはけっこう使ってくれそうな気がします。

小久保 新機能が1つ決まりましたね(笑)。

ファンと一緒に年を重ねていきたい

──あらきさんにとって、そもそもファンとはどういう存在なんでしょうか。

あらき それはもう、ファミリーですね。最初、ノリでファンクラブ名を「あらき組」と付けたんですけど、そうしたら知らないうちに「組長」という呼び名が定着していて(笑)。だから組長らしく、みんなを見守りつつ一緒に年を重ねていきたい。在り方としてはファミリーですよね。

──ファン同士の交流については、どんなふうに考えていますか?

あらき そうですねえ……とりあえず争ってほしくはないです(笑)。もちろん規模は拡大していきたいと思っていますけど、今の距離感を保ったまま大きくなれたらいいなと思っていますね。例えばファンクラブの話で言えば、規模の大きなアーティストの場合、そのファンクラブの運営にアーティスト本人が直接関わっているとは誰も思わないですよね。誰もが「スタッフがやってんだろうな」と考えると思うんですけど、俺はたぶんずっと自分でやると思うんですよ。ずっと俺の目が光っている状態というか(笑)。そうなっていれば、あまりお客さんも変なことはできないだろうし、揉め事も起きにくいんじゃないかなと思っていて。

小久保 先ほどのグループチャットのお話もそうですけど、けっこうファン同士のトラブルについて懸念されているんですね。あらきさんの活動自体にギスギスしたイメージがまったくないから、ちょっと意外な感じがします。

あらき もちろん実際に揉めているところを見たわけではないんですけど、そのリスク管理は必要だと思いますよ。目に見えないところでは実際に起こっているかもしれないですし、起こってしかるべきものだと考えていますから。

小久保 例えば、仮にあらきさんがグループチャットを開放したとして、そこが平和に楽しく交流できる場としてうまく機能していたとしますよね。そこに輪ができすぎることによって、新しくファンになった方が入ってきづらくなるのが嫌だったりはします?

あらき まさにそうですね。音楽界隈に限った話じゃなく、「古参がマウントを取っている界隈は廃れる」とよく言われる話なんです。それが一番よくない。

小久保 なるほどなあ。それを聞くと納得ですね。

あらき かと言って、古参をないがしろにするのもよくないので……絶妙なバランスで成り立たせていきたいですね。

あらき

あらき

ファンに喜んでもらうためにできることの1つ

──ところで、あらきさんがBitfanを利用していることについて、周りのアーティスト仲間からはどんな反応がありました?

あらき こういうファンクラブサービスの利用に、なぜか否定的な人も一定数いるんですよね。「ファンを囲って会費を取ってクローズドにやっていくのって、売れなくなってからやるやつですよ」と言われたこともあります。そう考えるのももちろん自由だけど、ちょっと凝り固まりすぎかなあとは思いますね。

小久保 そうした意識がファンクラブ開設の障壁になっているのは、僕らも感じています。「囲ってどうするの?」じゃなくて、「ファンに喜んでもらうためにできることの1つだよね」という感覚が普通になればいいんですけどね。

あらき そうですよね。少なくともファンは喜ぶはずだし、「ファンクラブがあるなら入りたい」と考える人は多いと思うんですよ。これが例えば、アーティスト本人の稼働をなるべくしない方針のファンクラブとかで、ほとんど何も更新されない、チケット先行販売のためだけにファンが籍を置いているようなところであれば、「囲って」的に言われるのも仕方ないかなと思いますけど。俺はそうならないように、いろいろと……。

──“家族サービス”をしていると。

あらき そうです(笑)。

小久保 こまめにファミリーを楽しませている。あらきさんって、マメですよね。

あらき マメじゃない人にはファンクラブ運営は向いてないかもしれないな、とは思いますね。

──そうなってくると、小久保さんとしては“マメじゃない人”でも活用しやすい、停滞しづらいサービスを作っていきたいところですよね。

小久保 そうですね。「マメじゃない私でも続けられる!」みたいな。

あらき ダイエット広告みたい(笑)。

あらき

ネットミュージックシーンを中心に活躍するアーティスト。2013年に精力的な活動を開始し、これまで大型のフェスやイベントに出演してきた。2022年6月に全国ワンマンライブツアー「ARAKI LIVE ARK -撃壌之歌(げきじょうのうた)-」を開催。活動9周年記念日となる同年8月10日にはニューアルバム「IDEA」をリリースする。

小久保知洋(コクボトモヒロ)

埼玉県入間市出身。富士写真フイルム株式会社(現:富士フイルムホールディングス株式会社)、株式会社オン・ザ・エッヂ、NHNJAPAN株式会社(現:LINE株式会社)、株式会社Diverseなどを経て、株式会社SKIYAKIへ入社。2020年に同社の代表取締役に就任した。「Bitfan」のプロダクト開発責任者も務めている。