音楽ナタリー PowerPush - BiSH
BiSの呪いとBiSHの希望
BiSHは僕との戦いの物語
──先日「BiSH-星が瞬く夜に-」のMVが公開されました。最初からけっこうつらそうなことをメンバーにやらせてるなとは思ったのですが。
渡辺 あのクソまみれMVですけど、監督とは意見が合わなかったんですよ。BiSのときは僕も何も考えずに「変なことをやったら話題になるんじゃね?」くらいで作ってたんですけど、今回はメンバーたちをけっこう見せたかったんですよね。でも監督としては本人たちを見せるんじゃなくて、例えばゲロのタワーを作ってそこの中に入れよう、とか。それだとメンバーがあまり際立たないので、本人たちがクソまみれになって歌ってるほうがいいなと。もしかしたらBiSでやってるときよりも僕自身がメンバーの気持ちをちゃんと考えられるようになってきたのかなと、ちょっと思っちゃいましたね。
──メンバーのことを思って、アレなんですね(笑)。
渡辺 あれ? そんな感じですか?
グミ 撮影のときはつらかったけど、作品としてできあがっちゃえば他人事として観られる。なんか汚いなーって思いながら。
渡辺 現場ではテンションも訳わかんなくなって、叫びながら変なものをぶっかけて「歌え!」とか言いながら僕もちょっと泣いてるという(笑)。
──完全に変態ですね。
渡辺 最初からこんなことやらされて、みんな「がんばってるなあ」とか言われてさ、注目されてるし恵まれてるといえばそうかもしれない。でもここからが一番つらいと思います。BiSよりもつらいと思う。失うもののほうがきっといっぱいあると思うんだよ。例えば間違えて彼氏の写真をTwitterに上げちゃうとかさ。
一同 あはははは(笑)。
渡辺 「うわっ」ってなったときにもう取り返しがつかないほどみんなフォロワーがいるし。だから何かやっちゃったらそれだけもうどうにもならない状況ってことを理解しててほしいね。そういう意味では最初から恵まれてるけど恵まれてないと思います。4月30日にやった初ライブも、ものすごい歓声が起こる中でいきなりライブができるっていう状況はまずあり得ないし、調子乗っちゃうだろうなって思うんですよ。でもこんなんで調子乗ってたら絶対に武道館なんて行けない。だからそんな状況は理解しつつも彼女たちが天狗にならないように僕がいかに鼻を折っていくかという戦いなんだろうなと。BiSHは僕との戦いの物語になる(笑)。
BiSの呪い
──メンバーは渡辺さんのことをどう思いました?
グミ 最初に男関係を聞かれたので、すごいヤバい人だなって。
渡辺 あはははは(笑)。
──そういうの一応聞くんですね。
渡辺 まあ聞いておかないと。みんなクリーンだと思ってますよ。僕は信じてます(笑)。
アイナ 私のお母さんを見るときが超楽しそうでしたね。私のお母さん、超かわいいので。
渡辺 あはははは(笑)。そうだね、お母さんのほうがはるかにかわいいね!
アイナ だからこれからもっとかわいくならないと落とされるかもしれないって、面接のときに本気で思いました。
グミ 私も思った。だから1回1回を大切にしないといけないって。さすがにMV撮ったからもう落とされることはないと思うけど。
渡辺 あはははは(笑)。
ミィ 私はつかみどろこがないなって思いました。ただBiSHの活動に対してはすごく真剣にうちらと向き合ってくれるし、モチベーション上げるようなことも言ってくれます。一緒に仕事しててすごい楽しいって思える大人の人だなって。
チッチ でも興味ない人への対応がめっちゃわかりやすいよね(笑)。
渡辺 マジで?
──チッチさんには興味を示してくれましたか?
チッチ 私はそう思ってます(笑)。
渡辺 なんかこの間面接してまだ2、3カ月しか経ってないのに、もう1年くらい一緒にいる気がするよね。……え、しない?
一同 あはははは(笑)。
渡辺 僕は今のこのメンバーがベストメンバーだと思ってるので、辞めないでほしいなあ。
グミ Twitterのフォロワー数が一定数に達したら顔出しできるっていう企画をやってたんですけど、私だけ解禁するのが遅かったんですよね。そのとき一瞬だけ辞めたいって思った。なんかそのときは尾崎豊を流して部屋でろうそく点けて嗚咽してた。
──でもそれってBiSHが嫌でそうなってるわけじゃないから本気で辞めたいってことじゃないですよね。
グミ そうですね。本気で辞めたいっていうのは、まだない。
チッチ 私もないですね。
渡辺 この状況で辞めたいって言われたら僕はビックリしますよ(笑)。でも僕自身は何度か辞めたいって思っちゃったなあ。
──それはなぜです?
渡辺 めんどくせえなあって(笑)。
──やりたかったんですよね?
渡辺 やりたかった(笑)。でももうずっとめんどくせえっていうのはあるんですよ。だけどやっちゃう。これは呪いみたいなもんですから。
──BiSの呪い?
渡辺 ですね。BiSの呪いです。亡霊ですよ。
──その呪いにかかってしまっているから続けなきゃいけないと。
渡辺 そうですね。でも今回は目標が武道館で解散ではないので。言ってしまえば、それ以上のスーパーグループを目指さないといけない。東京ドームまで行かなきゃいけないんじゃないですかね。
──それすごいですね。日本で現在活動してる女性アイドルグループで東京ドームでライブやってるのってAKB48くらいですよ。
渡辺 横浜アリーナの10倍ですからね。でも東京ドームを最終目標とするかはまだわかんない。だから僕としてはまず武道館をリベンジしたいとは思ってます。ただ武道館はやっぱり神聖な場所ですから、やれることが限られるのでね。もしかするとまた寸前でやらないって選択をするかもしれないです。
BiSからは一度離れようと思った
──そして皆さんのデビュー盤、1stフルアルバム「Brand-new idol SHiT」が完成しました。BiSと同じく松隈さんがすべて手がけてますが、最初からアルバムっていうのもBiSのときと同じですね。
渡辺 やっぱりシングルでスタートしちゃうと、以降はどんどんシングルを出し続けなきゃいけなくなるんですよ。曲を作らなきゃライブも満足にできないし。プラニメはそれで失敗したなって思って。
──アイドルは特にシングルのリリースサイクルが早いですからね。ライブも頻繁にありますし。
渡辺 体力がもたなくなるっていうのはプラニメをやってて感じました。むしろBiSでわかってたはずなのにね。だから最初の進め方をBiSのときに戻したっていうことですね。
──楽曲の方向性についてもBiSに寄せようと思いました?
渡辺 それについては離れようと思いました。でも模索した結果、無理だねって話になって。まあ作ってるチームが同じだからっていうのもありますけど。でもBiSの後期のアルバムのような、いわゆる「ラウドロックみたい」と言われるようなものからは一度離れようと、そういうものを目指しました。
──その象徴が1曲目の「スパーク」だと思うんですけど。
渡辺 そうですね。「スパーク」はBiSにはなかった曲調だし、これを1曲目にしたのはBiSとはちょっと違うんだよっていう意図があります。あとは生っぽいものを目指そうとしました。曲の中にはデジタルっぽいものもありますけど、それよりも感情を込めて叩き込んでいきたいっていう思いもあって、ギターとかもわざとグシャグシャと鳴らしてたり。というところで未完成感をわざと出そうと思ったんです。
──拙い部分はBiSの初期を彷彿とさせるような?
渡辺 まさしくその通りです。
──メンバーによる作詞もそういうところを狙ってのことでしょうか?
渡辺 アイナ以外は歌詞を書くってやったことないメンバーばかりだったから、いい経験になるんじゃないかと思いまして。
──アイナさんは「Is this call??」を作詞しましたが、感情がストレートに出てますね。
アイナ 渡辺さんから「みんなでがんばっていこう」みたいなテーマをもらったんですけど、それにしては曲調が明るくなくて。全然思い浮かばないからバイト中もずっと考えてたんですよ。本当はダメなんですけど、作業中にイヤフォン付けながら考えてて。
──なんの作業をやってたんですか?
アイナ おじさんががんばって柱とかを持ち上げてて、私は木を釘で打つという作業です。
──まさかのガテン系(笑)。
アイナ そんなことをしながら考えてたんですけど、ありがちな言葉しか思い浮かばなくて。そのときに「つらいわー」とか「泣きたい」とか思っちゃって、その感情をそのまま書きました。
──そこから歌詞を広げていったんですね。
アイナ それに本当にお金がなくて昼ごはんは3日間くらい何も食べれなかったんですよ。だから「泣きたい」とか「食べたい」っていうのはストレートな感情だと思います。
渡辺 ええ歌詞だと思うよ。
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- 1stアルバム「Brand-new idol SHiT」 / 2015年5月27日発売 / 2500円 / SUB TRAX / DDCZ-2029
- 1stアルバム「Brand-new idol SHiT」
収録曲
- スパーク
[作詞:JxSxK / 作曲:松隈ケンタ] - BiSH-星が瞬く夜に-
[作詞:BiSH×JxSxK×松隈ケンタ / 作曲:松隈ケンタ] - MONSTERS
[作詞:ユカコラブデラックス / 作曲:松隈ケンタ] - Is this call??
[作詞:アイナ・ジ・エンド / 作曲:松隈ケンタ] - サラバかな
[作詞:竜宮寺育 / 作曲:慎乃介(蟲ふるう夜に)] - SCHOOL GIRLS, BANG BANG
[作詞:セントチヒロ・チッチ / 作曲:Mad sounds] - DA DANCE!!
[作詞:モモコグミカンパニー / 作曲:松隈ケンタ] - TOUMIN SHOJO
[作詞:ユカコラブデラックス / 作曲:松隈ケンタ] - ぴらぴろ
[作詞:モモコグミカンパニー / 作曲:松隈ケンタ] - Lonely girl
[作詞:ユカコラブデラックス / 作曲:真田巧] - HUG ME
[作詞:ハグ・ミィ / 作曲:コジマミノリ] - カラダ・イデオロギー
[作詞:YUKARI / 作曲:Limited express(has gone?)] - Story Brighter
[作詞:セントチヒロ・チッチ / 作曲:松隈ケンタ]
BiSH(ビッシュ)
アイナ・ジ・エンド、モモコグミカンパニー、ハグ・ミィ、セントチヒロ・チッチの4人からなるアイドルグループ。BiSを作り上げた渡辺淳之介と松隈ケンタが再びタッグを組み、彼女たちのプロデュースを担当する。自らを“新生クソアイドル”と称し、「ファンの総称は“清掃員”」「ライブの写真撮影は可能。なお録画、録音は禁止」「自由。ただしほかのお客さんの迷惑になる行為は禁止」という“クソアイドルの3箇条”を4月30日に東京・TSUTAYA O-nestで行ったライブで発表した。2015年5月27日に1stアルバム「Brand-new idol SHiT」をリリース。同年5月31日には東京・中野heavy sick ZEROにて初のワンマンライブ「THiS IS FOR BiS」を開催する。