ナタリー PowerPush - BIGMAMA
2ndシーズンの幕開け告げる新作「Roclassick」堂々完成
バイオリンを擁する5人編成で、美しいメロディに躍動感ある演奏、そして寓話的な歌詞も印象的なBIGMAMA。3作のフルアルバムを経てリリースされた新作「Roclassick」は、そのタイトルが示すとおりロックとクラシックを融合させた、BIGMAMAならではのサウンドとアイデアに満ちた作品となった。
バンドの土台を作り上げた1stシーズンを終え、新たなチャレンジをしていく2ndシーズンに向かう第一歩となる本作は通常盤に加え、ボーナストラックに全曲のビデオクリップを収録したCD+DVD盤も同時発売。ボーカル&ギターの金井政人にこの新作について、そしてバンドのあり方について訊いた。
取材・文/遠藤妙子
クラシックというテーマでBIGMAMAの特徴を伝えたい
──新作はBIGMAMAならではの作品になりましたね。
はい、そうなったと思います。
──新作の話の前にちょっと振り返ってみたいんですが、BIGMAMAならではの個性がグンと出てきたのって2ndアルバムからですよね?
僕もそう考えてます。1stはそのときに好きなものをガムシャラに作った作品で、それを踏まえて2ndは音楽業界やシーンの中で自分たちの存在をどうアピールするかを考えた、その第一歩の作品だったと思うので。そういう意味では自我の確立というかアイデンティティの確立というか、そういう意味合いが2ndにはあった。で、その発展形が3rdで。
──バイオリン担当のメンバーがいるのもBIGMAMAの特徴の1つですが、これはどういう経緯で?
たまたまですね。高校時代、仲の良かった5人でバンドがやりたくて、その中の1人がバイオリンを弾けたっていう。でももともとYELLOWCARD(バイオリンを擁するアメリカのパンクロックバンド)が大好きで、文化祭でYELLOWCARDのコピーをやりたくて結成したんです。だからバイオリンがいたのはちょうど良くて。その後、そのバイオリンだった友人は抜けるんですけど、曲作りにおいてもバイオリンがいるのは当たり前になって。
──その後リリースされた1stアルバムは、メロディックパンクの要素がかなり強かったですね。
1stを出した頃は、正直まだそんなに考えてなかったんですよね。自分たちの中でカッコいいもの、やりたいものをガムシャラにやってるだけで、外に向いてない作業だったんです。で、いざCDがリリースされて自分たちがどう受け取られているか、自分たちの外側のことが見えてきて。だからこそ、YELLOWCARDに影響を受けたけど当然違うものを表現していかなければいけない。そこから日本語詞も歌い出して、僕らは僕らの音楽をやろうと意識した。それが2ndですね。
──2ndでは勢いだけでなく、曲の構成やアレンジ、歌詞に変化が出てきましたよね。ところでバイオリンってポストロックやアイリッシュパンクのバンドには多いと思いますが、BIGMAMAのようにポップスとしても成立するような楽曲の中で取り入れてるバンドはあまりいませんよね。
そうですね。でもそこが、BIGMAMAがいろんな人たちに聴いてもらえる一番のキーワードになってると思うし。そこを特化して見せたいって思ったときに今作の「クラシック」というテーマが出てきたんです。
「Roclassick」は2ndシーズンの第一歩
──ロックとクラシックを融合した楽曲自体は、以前からもやってましたよね。
はい。実際、2ndアルバムに「カノン」をモチーフにした「計算高いシンデレラ」という曲があって、それを作ったときに僕はすごく手応えを感じたんです。その時点で、いつか今作のようなロックとクラシックを融合させたアルバムを作ってやろうと思って。で、今そのタイミングが来たっていう。3rdまでは自分たちのステップアップの時期だと思ってたので、今作のようなことはまだできなかったし、やるべきではないと思ってたんです。でも3枚のフルアルバムを3年間かけて作り続けた後にひとつ区切りがついたと思えたし、3rdを作り終えてBIGMAMAの1stシーズンが完結したイメージが自分の中であった。だから2ndシーズンではもっといろんなチャレンジをしていきたくて。その第一歩がこの「Roclassick」だと思ってます。
──BIGMAMAには勢いや躍動感の中にも、バイオリンがいるせいか、もともとクラシック的な感触もあって、今作ではそこがはっきりと打ち出されていますね。そういうBIGMAMAの存在感をより強く出そうという意識もありました?
そうですね。僕が今作を作りたかった理由には、フェスなどで不特定多数のお客さんの前でライブをするときにハッキリした存在でいられるようにっていうのもあるんです。他のバンドに負けたくないって気持ちもあったし、初めて観る人たちに親しみを持ってほしい、僕らのことを覚えて帰ってほしいって気持ちもあって。そこで「人の記憶に強く残る方法はなんだろう」って考えたときにロックとクラシックの融合が浮かんだんです。多くの人が知っているクラシックのフレーズが曲の中にあったら、初めて観る人の印象にも残るだろうって。
CD収録曲
- 走れエロス(ヴィヴァルディ『春』)
- 虹を食べたアイリス(ベートーヴェン『運命』)
- テレーゼのため息(ベートーヴェン『エリーゼのために』)
- 英雄を抱いてマリアは眠る(バッハ『フーガト短調』他)
- ツルギが無い(ハチャトゥリアン『剣の舞』)
- 荒狂曲“シンセカイ”(ドヴォルザーク『交響曲第9番“新世界より”』)
- 計算高いシンデレラ(パッヘルベル『カノン』)
DVD収録内容
- 走れエロス(ヴィヴァルディ『春』)
- 虹を食べたアイリス(ベートーヴェン『運命』)
- テレーゼのため息(ベートーヴェン『エリーゼのために』)
- 英雄を抱いてマリアは眠る(バッハ『フーガト短調』他)
- ツルギが無い(ハチャトゥリアン『剣の舞』)
- 荒狂曲"シンセカイ"(ドヴォルザーク『交響曲第9番"新世界より"』)
- 計算高いシンデレラ(パッヘルベル『カノン』)
BIGMAMA(びっぐまま)
2001年に結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、現在は金井政人(Vo,G)、柿沼広也(G,Vo)、リアド偉武(Dr)、安井英人(B)、東出真緒(Violin)の5人編成で活動中。2006年7月にミニアルバム「short films」をUKプロジェクト傘下のレーベル・RX-RECORDSからリリース。同年10月には一時的に活動休止するも、2007年2月に安井と東出の加入を機に活動を再開した。ロックを基軸に紅一点の東出によるバイオリンが楽曲に華を添え、他のバンドとは一線を画する個性を放っている。また、一聴した瞬間に耳を捉える良質なメロディ、心を高揚させるアグレッシブなバンドサウンドはライブで特に映え、毎回フロアを盛り上げている。