ナタリー PowerPush - BIGMAMA
2ndシーズンの幕開け告げる新作「Roclassick」堂々完成
楽曲以外でも「自分たちはこういうバンドなんだ」って主張したい
──あと当然ですが、いいメロディっていうのは心掛けてますよね?
そうですね。
──でもいい曲があればOKというバンドではない。例えば今作もクラシックという入口があったり、ライナーノートやDVDをつけたりすることで、いい曲をどうやって聴かせるかってことを考えてるわけで。
やっぱり多くの人に聴いてもらいたいし、だったらどうすれば聴いてもらえるかを考えますよね。まあ僕が好きなんですね、いろいろ考えたりするのが。ただやるだけじゃ面白くないって思っちゃうタイプなんで。音楽といろんなものを結び付けられたら面白いと思うし、そのためにアイディアや仕掛けを考えて。音楽を通していろんなものに興味が広がったり、いろんな仕掛けがあるから音楽がより近く感じたり。そういうことがCDを買う購買意欲になっていくんだと思うんです。
──どういうことですか?
単純に今はCDの売上が落ちていて、今まではいろんなCDを買ってた人が、今はトップ3、もしくは一番好きなバンドのCDしか買わなくなって、あとは配信やレンタルで聴くって状況になっていってますよね。CDのプライオリティがどんどん下がってる。でも一番好きなバンドのCDなら買うって人は多いと思うんです。だったら自分たちがその人の一番好きなバンドになれる努力をしたい。それには楽曲はもちろん、自分たちが持ちえる情報や思いを作品に入れて、聴き手と共有できるものを少しでも多くすることだなって。そういう作品を作れば、実際にライブハウスにも足を運んでくれるはずだし。やっぱりライブに来てほしいんですよね。一緒に音楽を楽しみたいし、一緒に楽しむためにも仕掛けは必要だし。仕掛けっていうのはつまり聴き手が共有できる情報。それがあれば僕らと聴き手の距離がより近くなると思う。
──曲だけじゃなく、やり方も含めて見せていきたいっていうことですね。
そうですね。楽曲以外のところでも「自分たちはこういうバンドなんだ」っていう主張をしていきたいんです。面白いこと、やれることはどんどんやっていきたい。
──じゃあCDに対して思い入れがある反面、配信などへの可能性も感じてますか?
僕は配信自体にアレルギーを持ってるわけではなくて。ただ今作は、配信という安価で手軽に手に入る形があってもわざわざCDを買ってくれる人たちに対して何か応えたいと思って、だからライナーノートのような文章を入れたしミュージックビデオも作ったし。配信では得られない楽しみをCDに込めた。それは配信に反対するためにやってることではないんです。音楽ってエンタテインメントだと思うんで、それを楽しんでもらう方法として、そのときの自分たちの作品に一番マッチするやり方を選んでいけたらなって。
──そうですよね。CDと配信を対立するものとして考えるより、やり方が増えたって考えたほうが楽しいですよね。
配信で聴いてもCDで聴いても音楽が好きだっていう気持ち自体は変わらないわけで、今はそれもやり方の1つだと思ってます。でもだからこそCDも今まで以上に価値のあるものにしていきたいなって。
バンドの歴史ごと好きになってもらいたい
──それにしても、今作はこういうコンセプチュアルな作品になりましたが、この作品だけ突出しているわけではなくて、BIGMAMAの場合とても自然に聴けるんですよね。
カバーアルバムではないですからね。クラシックの曲を取り入れてるけどクラシックのカバーではない。クラシックの力を借りたオリジナルなんですよね。カバーアルバムとは言いたくなかったのでコンセプトアルバムって言い方をしてて。
──うん。今日お話を聞いて、ちゃんと先を考えて長い目でバンドのことを考えてるんだなって思いました。
そうですね。僕らは変化してると思うし変化していきたいんですけど、それはバンドが活動してきた流れがあるからこそだと思うんですよね。急に変化するんじゃなく、今までがあったから変化できる。だからバンドの歴史ごと好きになってもらえたらすごくありがたいし、そういうバンドになっていきたいんです。
CD収録曲
- 走れエロス(ヴィヴァルディ『春』)
- 虹を食べたアイリス(ベートーヴェン『運命』)
- テレーゼのため息(ベートーヴェン『エリーゼのために』)
- 英雄を抱いてマリアは眠る(バッハ『フーガト短調』他)
- ツルギが無い(ハチャトゥリアン『剣の舞』)
- 荒狂曲“シンセカイ”(ドヴォルザーク『交響曲第9番“新世界より”』)
- 計算高いシンデレラ(パッヘルベル『カノン』)
DVD収録内容
- 走れエロス(ヴィヴァルディ『春』)
- 虹を食べたアイリス(ベートーヴェン『運命』)
- テレーゼのため息(ベートーヴェン『エリーゼのために』)
- 英雄を抱いてマリアは眠る(バッハ『フーガト短調』他)
- ツルギが無い(ハチャトゥリアン『剣の舞』)
- 荒狂曲"シンセカイ"(ドヴォルザーク『交響曲第9番"新世界より"』)
- 計算高いシンデレラ(パッヘルベル『カノン』)
BIGMAMA(びっぐまま)
2001年に結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、現在は金井政人(Vo,G)、柿沼広也(G,Vo)、リアド偉武(Dr)、安井英人(B)、東出真緒(Violin)の5人編成で活動中。2006年7月にミニアルバム「short films」をUKプロジェクト傘下のレーベル・RX-RECORDSからリリース。同年10月には一時的に活動休止するも、2007年2月に安井と東出の加入を機に活動を再開した。ロックを基軸に紅一点の東出によるバイオリンが楽曲に華を添え、他のバンドとは一線を画する個性を放っている。また、一聴した瞬間に耳を捉える良質なメロディ、心を高揚させるアグレッシブなバンドサウンドはライブで特に映え、毎回フロアを盛り上げている。