音楽ナタリー PowerPush - BOOM BOOM SATELLITES
川島道行(BOOM BOOM SATELLITES)×細美武士(the HIATUS)対談
ここではBOOM BOOM SATELLITESの川島道行(Vo, G)とthe HIATUSの細美武士(Vo, G)の対談を企画。フェスの会場で知り合って約6年半、互いに“刺激的な存在”だという2人に新作を軸にしたトークを展開してもらった。
モヤイ像で待ち合わせ
──お2人はつい最近お会いしたばかりだそうで。
川島道行(Vo, G / BOOM BOOM SATELLITES) 4日ぐらい前ですね。渋谷のモヤイ像の前で待ち合わせして(笑)。いつも細美くんと会うのはフェスとかライブのバックステージだけだったから、初めて大衆的な場所で会って不思議な感じでした。
細美武士(Vo, G / the HIATUS) 作曲してるときにちょっと行き詰まってたんですけど、そんなタイミングでメールを開いたら川島さんから「お茶でも行かない?」って連絡が来てて。せっかくなんで「じゃあモヤイの前でどうですか?」って翌日に会う約束をしたんです。先輩との待ち合わせなのに5分遅れちゃって、まずいなと思ってたんですけど、モヤイ像の前で1人立っている川島さんを見たときはすごいテンション上がりましたね(笑)。で、一緒にアイリッシュパブに行って、いろんな話をしました。
──そもそもお2人が知り合ったきっかけってなんだったんですか?
川島 細美くんがELLEGARDENをやっていた頃、長崎の「Sky Jamboree 2008」の打ち上げで俺から話しかけたのが最初だったね。
細美 そうですね。もちろんそれ以前からブンブンは聴いてましたけど。Haciendaムーブメントとかアシッド系が好きだったんで、ドンズバで好きな音でしたね。
──具体的にどのあたりに魅力を感じますか?
細美 曲もライブももちろんいいなと思うけど、いわゆるチャートの上位に入るような音楽の中でも、決して安っぽい音を出さないところ。音楽以外で売れてる人たちの曲は別にして、多くの人に届く音楽って基本的にはフックがあるものが多い。その中でもよく聴くとすごくしっかり作られてるっていう楽曲が俺は好きで、ブンブンはそういうバンドだと思うし、オーソドックスでありつつもチージー(陳腐)さがまったくないバンドだと思う。結局ミュージシャンっていい曲書けてナンボなんだよなって思わされましたね。
──いい曲というのは売れ線でありつつ、しっかり作られている曲ってことですか?
細美 うん。でも俺は「メインフィールドと自分は関係ないんだ」とどこかで思ってる節もあるんだけど。
川島 なるほどね。例えば最近の宅録女子の進化系みたいな音楽、エレクトロバキバキで音もよくてエキセントリックすぎる女性アーティストの曲でも「ニューウェイブ感が強すぎてちょっとな」って思ってしまうものもあれば、メロディとコードがうっすら胸を打つようなものもあるし、バランス感覚って大事だなって思う。the HIATUSにはちゃんと自分の音楽を更新していこうっていうガッツがあるなって感じています。迎合したり守りに入ったりしようと思えばできるのにどんどん自分の音楽を更新していく姿勢に刺激を受けています。どのアルバムも好きだし、この間の「Keeper Of The Flame」(2014年3月に発売されたthe HIATUSの4thアルバム)はメロディが胸に直接届いてくる感じがしたな。
ゾクゾクさせられる音
──ブンブンの新作を聴いた感想を教えてください。
細美 先日会ったときにアルバムをいただいてからだから、まだ4日ぐらいしか聴けてないんだけど、「A HUNDRED SUNS」にハマってます。曲の途中なのに、頭に戻してもう1回聴きたくなる感じです。後半の「BLIND BIRD」から「EMERGENCE」までの流れもすごい好きです。ブンブンのお2人はドリームポップ以降の音もしっかり聴いてるんだろうなって思いました。
川島 でもチルウェイブ以降の作品は俺も中野もそこまで聴いてないんだよ。
細美 あ、そうなんですね。じゃあFour Tetとかもあんまり聴いてないんですか?
川島 うーん、あんまり聴いてないな。2010年代以降に出てきたフランク・オーシャンとかジェイムス・ブレイクとかをたまに聴いたりするくらい。
細美 ああそうなんだ。
川島 アンビエント、ドローン、インダストリアルとかは昔から聴いてたから、その原体験が今回のアルバムに影響してるのかも。
細美 あ、なるほど。あと音めちゃくちゃいいですよね。ミックスも分離がいいのに音圧があって、川島さんの声は相対的に小さいのに、フルレンジで聞こえるんですよね。
川島 作業中に中野(雅之)が「これどうかな?」って何度も音とかバランスを確認してくるんだけど、同じ音をずっと一緒に聴いてるから多少わからなくなることもあってさ(笑)。だから家で何度も聴いてから「大丈夫だった」って答えるときもあったな。
細美 川島さんの声って不思議だなって思います。普通ボーカルの声って歌っても聴いても気持ちいい音域のスイートスポットがあるんだけど、川島さんは高いキーだけじゃなくて低いところにも違ったカッコよさがありますね。
川島 「ハイトーンで歌わないと曲が盛り上がった気がしない」みたいなことがこれまで何回もあったんだけど、そうしなくても成立するような歌を考えようってずっと思ってるんです。トップノート(最高音)はGで、出せてG#かなあってところなんだけど、そのくらいの高さだとすごい体調管理しないとライブのときに出せなくなるから、最近は無理せずF#でアンパイを取る感じ(笑)。そんなに声を張らなくてもいい曲を作るってことは最近ずっと心がけてる。
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- ニューアルバム「SHINE LIKE A BILLION SUNS」2015年2月4日発売 / Sony Music Records
- 初回限定盤 [CD+CD-ROM] 3780円 / SRCL-8688~9
- 通常盤 [CD] 3240円 / SRCL-8690
CD収録曲
- SHINE
- ONLY BLOOD
- COMPLICATED
- A HUNDRED SUNS
- VANISHING
- BACK IN BLACK
- THE MOTH(attracted the flame)
- BLIND BIRD
- OVERCOME
- STAIN
- EMERGENCE
初回限定盤CD-ROM収録内容
- SAMPLING DATE DISC A HUNDERED SUNS -STEM-
BOOM BOOM SATELLITES(ブンブンサテライツ)
中野雅之(Programming, B)、川島道行(Vo, G)によるロックバンド。エレクトロニックサウンドとロックを融合させた独自の音楽性で、類をみないオリジナリティを誇示している。1997年にベルギーのレーベルからマキシシングル「JOYRIDE」を、1998年には初のフルアルバム「OUT LOUD」を発表。日本国内だけでなく海外でも絶大な人気を集めており、海外ツアーを開催するほか、著名なフェスティバルにも多数出演している。2013年1月にはオリジナルフルアルバム「EMBRACE」を発表。自身の楽曲のパーツを提供し、リミックスコンテストを開催するなど型にはまらない活動を展開するも、川島の脳腫瘍治療のため5月の日本武道館公演までライブ活動を休止。11月に同公演の模様を収めたCD+DVD / Blu-ray「EXPERIENCED II -EMBRACE TOUR 2013 武道館-」をリリースした。2014年3月はワンマンツアー「TOUR 2014 STARTING OVER」を実施。その後4度目の発症となる川島の脳腫瘍の治療と並行し、数々のフェスやライブイベントに出演。2015年2月には2年ぶりのオリジナルアルバム「SHINE LIKE A BILLION SUNS」をリリース。3月にレコ発ライブをEX THEATER ROPPONGIにて開催し、5月には全国ツアー「FRONT CHAPTER Vol.4」を展開する。
the HIATUS(ハイエイタス)
現在活動休止中のELLEGARDENのフロントマン・細美武士を中心に結成され、ウエノコウジ(B)、柏倉隆史(Dr)、masasucks(G)、伊澤一葉(Key)らが参加するバンド。2009年4月にパンクロックフェス「PUNKSPRING 09」で初ライブを披露し、同年5月に1stアルバム「Trash We'd Love」をリリースした。その後もオルタナティブ、アートロック、エレクトロニカへ傾倒しつつジャンル不問の新しい音楽を追究。2011年11月に3rdアルバム「A World Of Pandemonium」が発売される。そして2012年9月にレーベルをNAYUTAWAVE RECORDS(現EMI RECORDS)へ移籍し、「A World Of Pandemonium」にストリングスとホーンアレンジを加えたスタジオセッションドキュメンタリーDVD / Blu-ray「The Afterglow - A World Of Pandemonium -」を発表し話題を集めた。同年11月からは、総勢17人編成で全国を回る初のホールツアー「The Afterglow Tour 2012」を開催。この東京公演の映像を収めたライブDVD / Blu-ray「The Afterglow Tour 2012」と、ライブ音源を収めた同名のライブアルバムを5月に同時発売した。7月には約1年8カ月ぶりの新作CD「Horse Riding EP」をリリースし、2014年3月に約2年4カ月ぶりのフルアルバム「Keeper Of The Flame」を発表。同年12月には日本武道館でワンマンライブ「Closing Night - Keeper Of The Flame Tour 2014 -」を開催した。