音楽ナタリー PowerPush - BOOM BOOM SATELLITES
川島道行(BOOM BOOM SATELLITES)×細美武士(the HIATUS)対談
ストイックな姿勢
──細美さんは「SHINE LIKE A BILLION SUNS」を聴いてどんな印象を持ちましたか?
細美 「全曲いいから各楽曲がスタンドアウトしなくなるんじゃないか」なんて心配になるような、素晴らしいアルバムだと思いました。心配は冗談ですけどね(笑)。
川島 ははは(笑)。
細美 自分も今作曲してるんですけど、トニック系のサビを作るのがなかなか難しくなってきてて。そんなタイミングでこのアルバムを聴いたので、いい刺激を受けました。メジャーコードの使い方がすごく新しいですよね。
川島 中野のアレンジでいろいろ様変わりしてあの形に落ち着いてるんです。
細美 めちゃくちゃ凝ってるのに全然難しく聴こえてこないし、キャッチー。あと音がとにかくいい。
川島 音は、うん。いいですよね(笑)。
細美 マスタリングも自分たちのスタジオでやったって話を聞いてたんで、仕上がった音を聴いて驚きました。あれを自分たちだけでやるとなると本当に音楽やってる時間しかないんじゃないですか?
川島 うん。中野はごはん食べるときと、俺と話すとき以外ずっとパソコンの画面に向かってる感じだった(笑)。
細美 もはや修行ですね(笑)。俺は3日くらいやったら1回抜けないとそこから先を追っていっても燃えカスみたいになっちゃいますもん(笑)。
川島 はははは(笑)。中野は13~14時間くらい作業したらお酒を飲み始めて、それで1日を終了させるって感じだよ。また出直すってなると、俺はその日の途中経過を家に持って帰って何度も聴き直しつつ作業を続けるっていうのを繰り返してました。中野は家にスタジオがあるからずっとこもってるし。
音楽活動をまっとうしたい
──ちなみにアイリッシュパブではどんなお話をしたんですか?
川島 俺はこの2年、ほかの人とは違う経験をしたので、主に病気の話をしてましたね。
──昨年の12月に中野さんがブログを更新しましたね(参照:BOOM BOOM SATELLITES、川島の病状を報告「どうか安心してください」)。去年3月のツアー直後に川島さんは4度目の脳腫瘍を発症していたにも関わらず、アルバム制作やライブをキャンセルすることなく活動していたという事実を知って、とても驚きました。
川島 ミュージシャンがあの状況になったら、絶対制作もライブもやるはずだと俺は思うな。
細美 そうなのかなあ。
川島 うん、これまで10数年やってきたことだからさ。「自分の人生ってなんだったのかな」って振り返ると、主に音楽を作ってライブをやるってことだった。しかもこれからもずっと音楽をやっていこうと思ってた矢先にそんなことになったから、少しでも音楽活動をまっとうして、1個でも多くの作品を作って周りの人にありがとうと言って死ぬことを選びたいと思ったんです。ドラマみたいに「あと余命2年ですよ」って宣告されて、ショックを受けて涙を流すとかそういう感じじゃないんですよ。なんかスッと背筋が伸びて「あとは何をしようかな」って考えてた。俺はちょっと特殊な経験をしたけど、こうやってピンピンしてるからさ、話せることは話して、「こんな人もいるんだ」くらいにみんなに知ってもらえたら面白いなっていうか。
前向きなメッセージ
──最後に歌詞についてもお聞きしたいんですが、川島さんはどういったスタンスで聴き手にメッセージを届けたいと思っていますか?
川島 僕は前向きなメッセージを伝えてきたつもりですよ。内面の葛藤であったり、憂いを帯びた表現だったりを使ってカタルシスを生み出すことは「TO THE LOVELESS」(2010年発売の7thアルバム)以降、禁じ手としているところがあるんです。それはどちらかと言えば得意な手法なんですけど、今回は特に自分の病気のこともあって、病気に負けたくないっていうポジティビティのほうが葛藤よりも強くて、前向きな言葉が先に出てるってことでもある。
──細美さんは川島さんの書いた歌詞から何か思うことはありましたか?
細美 俺は歌詞に書いてあることがイコールその人の考えかどうかはわからないので、どんなものでもやっぱり作品として聴いてます。純粋にカッコいいものはカッコいいし、グッとくるものはグッとくるっていう感じで。だから「川島さんは今こんなモードなんだ」っていうふうには読んでなかったですけど、でも今の話を聞いてそういう読み方をしてもいいんだって思うと、うれしい気持ちになりますね。
川島 うん。普段黙って座ってても、自分の横には“死ぬ”っていう黒い溝がドーンとあって、ちょっと気を抜くとストンと落ちてしまうんです。そんな不安を音楽で伝えても聴く人からしたらなんのことやらだと思うし、葛藤を歌にしてもなんのために音楽をやってるのかってことが自分でもわからなくなるんですよ。希望のある明日、そしてあさってを迎えられるような前向きな気持ちが歌詞になってる。まあそこまで深く考えてるわけじゃないけども、そういう姿勢は出てると思うな。
- ニューアルバム「SHINE LIKE A BILLION SUNS」2015年2月4日発売 / Sony Music Records
- 初回限定盤 [CD+CD-ROM] 3780円 / SRCL-8688~9
- 通常盤 [CD] 3240円 / SRCL-8690
CD収録曲
- SHINE
- ONLY BLOOD
- COMPLICATED
- A HUNDRED SUNS
- VANISHING
- BACK IN BLACK
- THE MOTH(attracted the flame)
- BLIND BIRD
- OVERCOME
- STAIN
- EMERGENCE
初回限定盤CD-ROM収録内容
- SAMPLING DATE DISC A HUNDERED SUNS -STEM-
BOOM BOOM SATELLITES(ブンブンサテライツ)
中野雅之(Programming, B)、川島道行(Vo, G)によるロックバンド。エレクトロニックサウンドとロックを融合させた独自の音楽性で、類をみないオリジナリティを誇示している。1997年にベルギーのレーベルからマキシシングル「JOYRIDE」を、1998年には初のフルアルバム「OUT LOUD」を発表。日本国内だけでなく海外でも絶大な人気を集めており、海外ツアーを開催するほか、著名なフェスティバルにも多数出演している。2013年1月にはオリジナルフルアルバム「EMBRACE」を発表。自身の楽曲のパーツを提供し、リミックスコンテストを開催するなど型にはまらない活動を展開するも、川島の脳腫瘍治療のため5月の日本武道館公演までライブ活動を休止。11月に同公演の模様を収めたCD+DVD / Blu-ray「EXPERIENCED II -EMBRACE TOUR 2013 武道館-」をリリースした。2014年3月はワンマンツアー「TOUR 2014 STARTING OVER」を実施。その後4度目の発症となる川島の脳腫瘍の治療と並行し、数々のフェスやライブイベントに出演。2015年2月には2年ぶりのオリジナルアルバム「SHINE LIKE A BILLION SUNS」をリリース。3月にレコ発ライブをEX THEATER ROPPONGIにて開催し、5月には全国ツアー「FRONT CHAPTER Vol.4」を展開する。
the HIATUS(ハイエイタス)
現在活動休止中のELLEGARDENのフロントマン・細美武士を中心に結成され、ウエノコウジ(B)、柏倉隆史(Dr)、masasucks(G)、伊澤一葉(Key)らが参加するバンド。2009年4月にパンクロックフェス「PUNKSPRING 09」で初ライブを披露し、同年5月に1stアルバム「Trash We'd Love」をリリースした。その後もオルタナティブ、アートロック、エレクトロニカへ傾倒しつつジャンル不問の新しい音楽を追究。2011年11月に3rdアルバム「A World Of Pandemonium」が発売される。そして2012年9月にレーベルをNAYUTAWAVE RECORDS(現EMI RECORDS)へ移籍し、「A World Of Pandemonium」にストリングスとホーンアレンジを加えたスタジオセッションドキュメンタリーDVD / Blu-ray「The Afterglow - A World Of Pandemonium -」を発表し話題を集めた。同年11月からは、総勢17人編成で全国を回る初のホールツアー「The Afterglow Tour 2012」を開催。この東京公演の映像を収めたライブDVD / Blu-ray「The Afterglow Tour 2012」と、ライブ音源を収めた同名のライブアルバムを5月に同時発売した。7月には約1年8カ月ぶりの新作CD「Horse Riding EP」をリリースし、2014年3月に約2年4カ月ぶりのフルアルバム「Keeper Of The Flame」を発表。同年12月には日本武道館でワンマンライブ「Closing Night - Keeper Of The Flame Tour 2014 -」を開催した。