「ウケる」という感覚を一番大切にしている
──ところで小出さんって、アイドルであったり、ホラー映画であったり、異常なまでに見識の深い分野がいくつもあるじゃないですか。そういった日常的な膨大のインプットと、Base Ball Bearでのアウトプットというのは、どれだけリンクしているんですか?
完全に趣味のやつと、自分の創作のエネルギー源にしたいやつ、気持ちとしてそこははっきりと分けたいんですけど、結局お互いがそこに滲んできてしまいますね。今回書いた歌詞の中にも、映画についての連載の中で自分が言ったことが、そのまま反映されているものがあったりして。
──音楽的にも、例えば「寛解」は、1980年代のアイドルポップのようなアレンジで、ここまで振り切った曲はこれまであまりなかったですよね。
この取材で、ここまで青春というテーマについてたくさん話してきましたけど(笑)、今回の作品をレコーディングするとき、圧倒的に最優先したのは、僕ら3人が心の底から「楽しい!」「新鮮!」って思えることをやろうってことで。それだけでアルバム1枚突っ走ったような作品なんですよ。とにかく今の自分たちが本当に欲しているもの、フレッシュに感じるものを作りたかった。1曲目の「すべては君のせいで」とかまさにそうで、サウンドのフレッシュさを目指すとかじゃなくて、演奏している僕らがもっともフレッシュにできる曲、「このコード進行、ウケる!」とか「このソロ、ウケる!」とか「なにこの音色(笑)」とか、そういう感覚を一番大切にしていて。音楽を作りながら、僕らが超笑っているような感じ。
──結果、仕上がり自体もフレッシュなものになっていますね。
そうだといいんですけど(笑)。
間奏は反町隆史、コード進行はCHAGE and ASKA
──ウケるという意味で、最高にウケたのは最後の「Darling」でした。途中でいきなりBOØWYみたいなビートロックになったと思ったら、最後はThe Stone Rosesの2ndアルバムみたいなブルースロックで終わるっていう。
あれ、ビートロックというか、本田美奈子なんですよ。「Oneway Generation」みたいな。
──本田美奈子、確かに! というか小出さん、本当は何歳なんですか(笑)。
(笑)。あと、間奏でちょっと反町隆史みたいになって、全体のコード進行はCHAGE and ASKA。途中で関根がボソボソって囁くところは、2000年代に入ったばかりくらいのモーニング娘。のイメージですね。そういうガヤだらけの曲(笑)。
──でも、それがちゃんと最終的にはカッコいい曲になっていますからね。このアルバムの中でも屈指の1曲だと思います。
ありがとうございます。
──そういう小出さんのミュージシャンシップって、同世代のミュージシャンの中でも本当に独特ですよね。いわゆる音楽至上主義のバンドではないけれど、そこらへんの音楽至上主義的バンドよりもよっぽど音楽のことを知ってるし。クールな態度を取ってるようでいて、妙に熱いところがあるし。
わかりにくいですよね。今言ってきたような「ウケる」みたいな態度も、わかる人にはわかってもらえるんだろうけど。自分がすっごく好きな音楽に対しても、どこかでその対象との距離を測っているようなところはあるんですよ。
──あんまりいないですよね、そういうバンド。音楽に詳しいバンドほど、自分が音楽好きであることに関してまっすぐだったりするから。
言われてみると、そうかも。その視点は面白いですね。
“ウケるマイレージ”を貯めて、作品に還元していく
──日本のバンドに限らず、例えばロールモデルにしてきたバンドっているんですか?
ロールモデル……うーん、最初の頃は「目指すはXTC」と思ってやってたんですよね。
──最初がXTCって時点で、これ以上なくひねくれてますよ(笑)。
彼らって1stアルバムから最新作まで、やってることが全部違うじゃないですか。それって、本当にすごいことだなって。もちろん、同じことをずっとやり続けてるバンドのよさっていうのもあるし、それもいくところまでいけば素晴らしいことだなって思うんですけど。ただ、そのときに好きな音、そのときに歌いたいこと、それによって作品がどんどん変質していくほうが、僕にとっては人間として自然なことに思えて。僕らも、これまでそうやってきた気がするし、言ってみればそのときそのときの「ウケる」をずっと探してきたような気がするんですよね。
──なるほど。そういう意味では、音楽好きからわりと誤解されやすい、ちゃんと理解されるまである程度時間が必要なバンドだったのかもしれませんね。
自分たちのやっていることをすごく引きで見ている視線と、思いっきりノッてやっていること、きっとその落差が激しいんだと思います。その2つの間で揺れている感じが常にあって。だから、思いっきり入り込んで泣きながら歌詞を書くようなときもあるし、曲を作っているPCの画面が見えないくらい遠くから眺めているようなときもあって。
──自分も「C2」を聴いて改めて「おおっ!」と前のめりになって、今回の「光源」を聴いて、こうして小出さんと話をして、ようやくBase Ball Bearというバンドがわかってきた気がします。
わかりにくいことをやってきたんですよ(笑)。
──もちろんバンドとの出会い方って、その時期も、きっかけも、人によってそれぞれまったく違うわけですけど、自分みたいにだんだんBase Ball Bearの「凄み」のようなものに気付くリスナーって、潜在的にもっともっとたくさんいる気がします。
そうかもしれませんね(笑)。僕らとしては、これからも面白いものを探していって、そこで“ウケるマイレージ”を貯めていって、それが貯まったところでまた作品に還元していく。それを続けていくしかないですけど。
──さっき「4人から3人になったことを肯定化したいわけではない」と言っていましたけど、Base Ball Bearは3人になったことで、これからますますどこにでも行けるバンドになったと思うんですよ。レコーディングでもライブでも実際に今そうなっていますけど、ゴリゴリの3ピースバンドの音を鳴らしていくわけじゃなくて、3人の基本形に、いろんなサウンドやいろんなプレイヤーが加わることによって、結果的に表現のレンジが大きく広がっている。
うん、めちゃめちゃ広がりましたね。
──そういう音楽的な自由さって、現在のロックバンドにとって一番重要なことだと思います。
そうですね。「10年後にどうありたい」とか、そういうことを僕はあまり考えないので(笑)、今やりたいことを、これからも立ち止まらずにこのままやっていきたいと思っています。
- Base Ball Bear「光源」
- 2017年4月12日発売 / EMI RECORDS
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初回限定盤 [CD+DVD]
3780円 / UPCH-29252 -
通常盤 [CD]
3000円 / UPCH-20448
- CD収録曲
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- すべては君のせいで
- 逆バタフライ・エフェクト
- Low way
- (LIKE A)TRANSFER GIRL
- 寛解
- SHINE
- リアリティーズ
- Darling
- 初回限定盤DVD収録内容
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- "COUNTDOWN JAPAN 16/17" at GALAXY STAGE 2016.12.31
- Tour「バンドBのすべて 2016-2017」ドキュメント
- ツアー情報
Base Ball Bear Tour「光源」 -
- 2017年6月11日(日)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2017年6月13日(火)三重県 club chaos
- 2017年6月15日(木)京都府 磔磔
- 2017年6月17日(土)石川県 Kanazawa AZ
- 2017年6月25日(日)宮城県 Rensa
- 2017年10月6日(金)北海道 CASINO DRIVE
- 2017年10月7日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2017年10月9日(月・祝)北海道 函館club COCOA
- 2017年10月14日(土)青森県 青森Quarter
- 2017年10月15日(日)岩手県 Club Change WAVE
- 2017年10月21日(土)山口県 LIVE rise SHUNAN
- 2017年10月22日(日)広島県 CAVE-BE
- 2017年10月27日(金)千葉県 千葉LOOK
- 2017年10月28日(土)茨城県 mito LIGHT HOUSE
- 2017年11月3日(金・祝)山梨県 甲府CONVICTION
- 2017年11月23日(木・祝)鳥取県 米子 AZTiC laughs
- 2017年11月25日(土)岡山県 IMAGE
- 2017年12月2日(土)群馬県 高崎club FLEEZ
- 2017年12月3日(日)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
- 2017年12月9日(土)新潟県 新潟LOTS
- 2017年12月10日(日)長野県 Sound Hall a.C
- 2017年12月16日(土)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
- 2017年12月17日(日)神奈川県 Yokohama Bay Hall
- 2017年12月23日(土・祝)香川県 高松MONSTER
- 2017年12月24日(日)高知県 X-pt.
- 2018年1月6日(土)大阪府 なんばHatch
- 2018年1月14日(日)愛知県 DIAMOND HALL
- 2018年1月20日(土)宮崎県 SR BOX
- 2018年1月21日(日)福岡県 DRUM LOGOS
- Base Ball Bear Tour
「日比谷ノンフィクションVI~光源~」 - 2017年9月30日(土)東京都 日比谷野外大音楽堂
- Base Ball Bear(ベースボールベアー)
- 2001年に小出祐介(Vo, G)、関根史織(B, Cho)、湯浅将平(G)、堀之内大介(Dr, Cho)という同じ高校に通っていたメンバーによって、学園祭に出演するために結成されたロックバンド。2006年4月にミニアルバム「GIRL FRIEND」でメジャーデビューを果たし、2010年1月には初の東京・日本武道館単独公演を実施。近年は他アーティストとのコラボレーションも盛んになり、2012年7月に発表したミニアルバム「初恋」でヒャダインや岡村靖幸と、2013年6月リリースのミニアルバム「THE CUT」ではRHYMESTERや花澤香菜と、それぞれ共演している。2015年は「シリーズ“三十一”」と題して8月から3カ月連続で“エクストリーム・シングル”を発表したあと、バンドの結成記念日である11月11日に6thフルアルバム「C2」をリリースした。2016年3月に湯浅がバンドを脱退し、現在はサポートメンバーを迎えて活動を行っている。2017年4月に新体制初のオリジナルアルバム「光源」を発売した。