THE BAWDIES「POPCORN」インタビュー|4人がロックンロールし続ける理由 (2/3)

10年後、20年後に懐メロとして聴かれるものを作りたくない

──曲作りに関してはいかがですか? 先ほどROYさんがサビを意識したとおっしゃっていましたが。

ROY 今、日本にはこういう50年代、60年代にリスペクトを強く持った、シンプルなロックンロールバンドって少なくなっているじゃないですか。そんな中で、僕らはその時代へのリスペクトを伝えながら、普段ポップスしか聴かない人にも響くポップなサビを作れるところが大きな武器だと思うんです。そういうスタイルだから、時代や周りの流行りにあまり左右されないところがあるし、何歳になってもやっていることが変わっていない。別にほかのアーティストを否定するつもりはまったくないんですけど、僕らは10年後、20年後に懐メロとして聴かれるものを作りたくない。「この時代のこういう音楽ね」じゃなくて「これ、いつの時代の音楽なんだろう?」というように時代を選ばない、10年後、20年後も古臭くない……いや、やっていること自体は古臭いんですけど(笑)、時代に合わせてないからこそ古臭くならない、そういうものを作りたいと常に思ってます。

──GLIM SPANKYの松尾レミさんやOKAMOTO'Sのオカモトショウさんをフィーチャーした曲(「SCREAM feat. 松尾レミ」「GIMME GIMME feat. オカモトショウ」)が、アルバムにおいてすごくいいアクセントになっています。フィーチャリングボーカリストが複数参加したアルバムも初めてですよね。

ROY カバーアルバム「GOING BACK HOME」(2014年3月発売)ではプレイヤーの皆さんにたくさん参加してもらいましたけど、1つのアルバムに複数のゲストボーカルが参加するのはこれが初めてですね。曲作りに関しても本当にラッキーというか、例えばレミちゃんに「一緒にやりたい」とオファーしたらOKをもらえて、「じゃあどんな曲を作ろうか?」と考えていたときにポーンとこれが降りてきた。ショウのときもそうで、「ショウと一緒になるなら、どんな曲かな?」と考えたら「これ!」っていう曲が降りてきた。「FREAKS IN THE GARAGE-EP」という下地があってどちらの曲も自然と降りてきているので、やっぱりあのEPの存在は大きかったです。もちろん、それはほかの曲にも言えることで。「ガレージバンドがファンキーな曲をやったらどうだろう?」ってことで「POPCORN」が生まれたし、ガレージバンドがミドルテンポの曲をやったら「SUGAR PUFF」、ソウルの名曲をただカバーしたら「THIS OLD HEART OF MINE」みたいなパワーポップができた。「FREAKS IN THE GARAGE」で築いた土台の上に何を乗せるかをイメージしただけで、わりとポンポン楽曲が出てきたので……実はそんなに意識して作り込んだ感覚はないんです。むしろ、制作に向けた状況がちゃんとそろっていたことがすごく大きかったんじゃないかな。

ROY(Vo, B)

ROY(Vo, B)

JIM(G)

JIM(G)

──曲が降りてくるのにはちゃんと理由があるということですね。それにしても、「THIS OLD HEART OF MINE」のパワーポップ風カバーには驚かされました。The Isley Brothersの原曲はもちろん、Supremesやロッド・スチュワートのバージョンなどいろいろ聴いてきましたが、こういうアレンジは新鮮で。パワーポップバンドがこういうオールディーズをカバーすると、確かにこんな感じになりますよね。

ROY ちょっとパンクを経由していてね。

──前作「BLAST OFF!」でもThe Isley Brothersの「WHY WHEN LOVE IS GONE」をカバーしていますが、2作連続で彼らの曲をカバーした理由は?

ROY 「BLAST OFF!」のときもただ大好きな曲をカバーしたくて、大好きなノーザンソウルの中からモータウンの時期のアイズレーを選んだんですけど、凝ったアレンジをせずストレートにカバーしたら、それがたまたまパワーポップみたいになったんです。この感じいいなと思って、その流れでまた好きな曲をカバーしようという話になりました。普通に考えたら同じアーティストの曲を2作連続で選ばないところを「好きだからいいじゃん」と(笑)。The Sonicsもリトル・リチャードのカバーを何曲もやっているし、The Beatlesもそうだったじゃないですか。「好きだからやる」という理由でカバーするほうがいいものになると思いますね。

──バンドの成り立ちを知らない人がこのアルバムの流れで「THIS OLD HEART OF MINE」のカバーを聴いたら、オリジナル曲として受け取ってもらえるほど、THE BAWDIESに馴染んでいると思いました。

ROY それが一番うれしいですね。

THE BAWDIES

THE BAWDIES

THE BAWDIES

THE BAWDIES

ポップコーンっていいですよね

──歌詞においてはどうですか? 例えばバンドを始めた20年前やメジャーデビューした15年前と比べて、歌いたいことや伝えたいメッセージに変化はありますか?

ROY ないです。ないというか、よりシンプルになっている気がします。もちろんロックンロールの中にメッセージを込めたい瞬間は、どこかにあったりはするんですね。例えば震災のあとはそう考えたこともあったけど、僕らは英詞で歌っているし、ロックンロールって特に言葉云々じゃないと思ってるんです。聴いた瞬間に踊り出したくなる、それによって楽しくなる、笑顔になるというのがロックンロールが持っているパワーで。それが一番伝わりやすい形ってなんだろうなと考えると、歌詞であんまり頭を使わせたくないんですよ。キャッチーな言葉を選んだり韻を踏んだりしながら耳障りのいい響きを作っていくのが、リトル・リチャードやチャック・ベリーの時代からもともとあるロックンロールの楽しみ方。僕らもそこを常に心がけています。あとは、僕らの曲ではサビに難しい言葉を使わないほうがよりキャッチーになって、伝わりやすい。サビを「Ah~」だけでいくとか「Yeah~」だけで歌い通すとか、そういう意識は「IT'S TOO LATE」(2009年11月発売のメジャー1stシングル)あたりから持っていて。今作だと「POPCORN」はその系譜にあると思うんですけど、そういうシンプルなサビに関してまだ引き出しがあるんだという発見があったので、それをどこまでやり続けられるかなと面白がれているのも大きいと思います。

──節目のタイミングに発表されるアルバムに「POPCORN」というシンプルなタイトルを付けるところも、今のTHE BAWDIESらしくてとても潔いと思います。

ROY やっぱり……ポップコーンっていいですよね(笑)。

一同 (笑)。

TAXMAN(G, Vo)

TAXMAN(G, Vo)

MARCY(Dr)

MARCY(Dr)

ROY アメリカンで底抜けな明るさも伝わるし、ロックンロールの世界観にも合うじゃないですか。しかも、今回打ち出したかったポップなロックンロール、弾けるロックンロールを体現しているワードだと思って、タイトルに選びました。シンプルで覚えてもらいやすいですし。

JIM 確かに。小学生でも知っている単語だし。ほかの収録曲もシンプルで覚えやすいタイトルが多いよな。

ROY うん、今言われて気付いた。でも、バカっぽくていいじゃないですか(笑)。

2024年4月22日更新