これまでの活動の暫定の答え

──シングルのカップリング曲についても聞かせてください。まず2曲目の「君の恋人になったら」は明るさと切なさが共存するポップなナンバー。

清水　「スーパースターになったら」という曲があるのに、また「なったら」を使うっていう（笑）。この曲のタイトルは「君の恋人になったら」しかないと思って、無邪気につけました。あと歌詞で「アイラビュー」という言葉を初めて使ったんです。back numberはずっと英語は歌ってなかったんですけど……まあ「アイラビュー」はカタカナ英語だし、このメロディに合うと思った。それにカッコ悪い感じになっているから、むしろいいかなと思って。

小島　依与吏が持ってきたデモにホーンが入っていたんですよね、この曲。

清水　「寿、吹奏楽部だったよね？ 吹ける？」って聞いたんだけど、無理ってことになって、ミュージシャンの方に来てもらって（笑）。以前だったらホーンのメロディは人に任せていたと思うんですけど、今回は自分の耳を頼りにして書いてみたんです。セルフプロデュース欲が強いというか、あまり人に頼りたくない時期なのかもしれないですね、自分自身が。メンバーに対しても「こうしてほしい」という意思表示をしっかりしたいと思ってるんですよ。そのほうが思いの強さが伝わると思うので。

──3曲目の「魔女と僕」からも、メンバー3人の生々しいバンド感が伝わってきました。

清水　これも「ハッピーエンド」とほぼ同じタイミングでできた曲です。「愛する君の為に」という歌詞があるんですけど、これって皮肉なんですよね。恋の歌なんだけど、「愛する君」って大げさに言ってみるっていう。「君からもらっているのは、どうせ愛じゃないから」みたいな気持ちもあるし。簡単に「愛」っていう言葉を使ってしまうような、そういうチープな感じもいいなって思ってるんですよ。

──前作「僕の名前を」に収録されていた「パレード」「ひとくいにんげん」もそうですが、カップリング曲もすごく充実していますよね。

清水　年末にベストアルバムが出るタイミングでもあるし、今回のシングルに関しては「ここで手を抜いたら、マジで終わるな」って思ってたんですよ。これまでにもアルバムの直前にシングルを出すことが多かったんですけど、そこで絶対に手を抜かなかったから今のback numberがあると思っていて。ここで「今までのシングルで一番高いクオリティだね」と言われるようなシングルを作れたら、もっと先に行けるはずだという気持ちもあったし。それがちゃんとできたのは本当によかったと思います。

──back numberにとって重要なタイミングのシングルということですね。

清水　そうですね。前回のシングルのカップリング曲あたりから、自分たちの気持ちとしては新しいフェーズに向かっているんですよ。今回のカップリング曲も新しいback numberの予告編という感じなので。

小島　曲を作ってるときのスタジオの空気感も違ってきてますからね。まだ誰も満足していないし、半年間のツアーを終えて、自然と次に行こうという雰囲気になっているというか。

栗原　毎回シングルを作るたびに「今回もいいものができた」と思っていて。そうやって更新することで、前に進んでいけるんだと思いますね。

──新しい変化を求めている時期なのかもしれないですね。

清水　ただ、いきなり音楽性が変わってしまうのはよくないですからね。「（5thアルバムの）『シャンデリア』はよかったけど、いきなりジャズっぽくなっちゃった」みたいなことはやりたくないし、今まで自分たちがやってきたことにも責任を持ちたいので。もちろん「自分たちに飽きたくない。次に行きたい」という気持ちもあるから、その暫定の答えが今回のシングルということだと思います。これを気に入ってもらえたら、僕らとしても助かりますね。