音楽ナタリー Power Push - back number

追い込んだ先に見えた、back number流クリスマスソング

「ど真ん中に投げよう」と思った

──ちなみに皆さん、好きなクリスマスソングってありますか?

清水 やっぱり山下達郎さんの「クリスマス・イブ」ですよね。あとはマライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」とか。クリスマス、嫌いじゃないんですよ。小学校の頃のクリスマス会も楽しかったし(笑)。大人になってからは、そんなに派手なことはやってないですけどね。

栗原寿(Dr)

栗原 高校のときにT.M.Revolutionが好きなヤツがいて、隣の席でずっと「Burnin' X'mas」を聴いてたことがあって。その思い出が強いですね。

清水 今思い出したけど、広瀬香美さんの「promise」もすごい好きだった。クリスマスソングというより、冬の歌なんですけどね。

小島 冬の歌はたくさんあるよね。GLAYの「Winter,again」とか、globeの……。

清水 「どこまでも♪」(「DEPARTURES」)だね。あの曲も「JR SKISKI」のキャンペーンソングなんだよね。俺たちの「ヒロイン」も10年後くらいに若いバンドの好きなウインターソングとして、名前が挙がることを祈ってます(笑)。

──冬の歌、名曲が多いですからね。そういえば山下達郎さんの「クリスマス・イブ」はもともとアルバム「MELODIES」(1983年)の収録曲で、当初はシングルではなかったんですよね。その後シングルカットされて、たまたまCM(1986年放送のJR東海「ホームタウン・エクスプレス(X'mas編)」)の曲に選ばれて大ヒットして。

清水 あ、やっぱりそうなんですね! ヒット曲は作ろうとして作るものじゃないんだなって、今回すごく感じたので。だって、それは結果論じゃないですか。

──まあ、ヒット曲って自分でコントロールできないものですよね。

清水 そうそう。だからこそ今回も「ど真ん中に投げよう」と思ったんですよね。売れるかどうかはわからないけど、とにかくど真ん中に投げるぞって。もちろん「売れたい」という気持ちもあるんだけど、まずは自分たちがいいと思ってることをやるのが重要だなっていう……。そこに辿り着くまでにだいぶ右往左往しちゃいましたけどね(笑)。「こんなチャンスは二度とないぞ。売れる曲を書くんだ」「うるさいよ! そういうことじゃないだろう」って、ずっと頭の中で首脳会談をしていて。

栗原 ハハハハハ(笑)。

清水依与吏(Vo, G)

清水 でも、最後は「これは俺たちの曲だ」と思えるものができたので。いろいろ迷うこともあるけど、全部オファーしてくれる側の言うことを聞くわけではないし、結局は自分たちの作品になるっていう……。そういう環境を作ってくれている周りの人にも感謝したいですね。

「Hey!Brother!」に救われた

──カップリング曲の「Hey!Brother!」はロックバンドとしての生々しさが強く感じられて、ライブでも盛り上がりそうだなと。

清水 そうですよね。これ、ギリギリでできたんですよ。「レコーディングまで残り3日。曲は何もありません」みたいな状態から、スタジオでワーッと作って。アルバム制作の最後の時期になると、そういうことがあるんですよね。前回のアルバム(4thアルバム「ラブストーリー」)に入ってた「頬を濡らす雨のように」という曲もそうだったんです。曲がない状態でスタジオに入って「(目を閉じ、頭を上げて)ああ、俺の才能は終わった。もともと、そんなものがあったんだろうか……」みたいになっていて。それを2人(小島、栗原)が「この人、大丈夫だろうか」っていう目で見ているっていう。

小島 ハハハハハ(笑)。

清水 「もう終わった。これは公開処刑だ……」というときにいきなりコード進行を思い付いて、「あ、いける。ドラムのリズムはこう!」って言いながら一気に作って。

小島和也(B)

小島 たまにあるんですよね。レコーディングが決まっているのに、曲が何もないっていう状況が。そういうときは「待ちます!」っていう空気なんですけど、そこから(清水が)復活して曲を作り始めると、今度は速すぎてついていけないんです。「コードはこれ! リズムはこう! よし、やるぞ」「え、ちょっと待って」という感じで。

栗原 そういうことがあると「制作も佳境だな」って思いますね。

小島 “そろそろ師走”みたいになってるけど(笑)。

清水 (笑)。今回は「クリスマスソング」の制作でストレスが溜まってたんですよね。「Hey!Brother!」の歌詞も、そのときの自分が自分に向かって言いたいことを言ってる歌なので。

──歌い出しが「疲れた これはもう限界だなぁ」でサビが「そこをなんとか 君の為に歌わせてよ」ですからね。

清水 今年は「このテーマで書いてください」ということが多かったですからね。もちろんありがたいことなんですけど、一方で「支離滅裂でもつながってなくてもいいから、思いがあふれたものを歌いたい」という気持ちもあって。

小島 うん。

清水 例え話みたいになりますけど、生活するっていうのは価値観の違う誰かと一緒に暮らすということじゃないですか。今の活動もそれと似ているんですよね。バンドの中はノーストレスですけど、僕らだけでやっているわけではなくて。レコード会社や事務所の人がいて、「こういう曲を作ってください」ってお願いしてくれる人がいて。いろいろな人が1つのチームとして動いているわけですよ。いい物を作りたいと思っているのは同じだから、喧々諤々にもなるし……。それは楽しいことなんだけど、その分、負のオーラみたいなものも出てくるんですよね。いろいろと話しながら進めていくうちに「これ、別に俺じゃなくてもいいんじゃないか?」と思ってしまったり。物作りをしている人間としては、どうしてもそういう感情が出てきてしまうんだけど、その気持ちさえも曲にできるのは本当によかったなって。俺自身が「Hey!Brother!」という曲に救われたし、もしこの曲を聴いて「救われた」と思う人がいたらすごくうれしい。その人はきっと、俺と似てるんだと思いますね。

back number
ニューシングル「クリスマスソング」/ 2015年11月18日発売 / UNIVERSAL SIGMA
初回限定盤 [CD+DVD] / 1620円 / UMCK-9775
通常盤 [CD] / 1080円 / UMCK-5585
CD収録曲
  1. クリスマスソング
  2. Hey!Brother!
  3. 助演女優症2
  4. クリスマスソング(instrumental)
  5. Hey!Brother!(instrumental)
  6. 助演女優症2(instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
  • 「クリスマスソング」music video
  • 「クリスマスソング」making of studio recording & music video & photo session
back number tour 2016 “ミラーボールとシャンデリア”
ホール公演
2016年1月24日(日)千葉県 市川市文化会館 大ホール
2016年1月28日(木)東京都 たましんRISURUホール
2016年2月4日(木)大分県 iichikoグランシアタ
2016年2月6日(土)宮崎県 宮崎市民文化ホール
2016年2月11日(木・祝)奈良県 なら100年会館
2016年2月12日(金)三重県 四日市市文化会館 第1ホール
2016年2月19日(金)広島県 上野学園ホール
2016年2月21日(日)岡山県 岡山市民会館
2016年2月25日(木)神奈川 神奈川県民ホール
2016年2月28日(日)茨城県 茨城県立県民文化センター
2016年3月3日(木)北海道 ニトリ文化ホール
2016年3月4日(金)北海道 旭川市民文化会館 大ホール
2016年3月12日(土)兵庫県 神戸国際会館こくさいホール
2016年3月13日(日)京都府 ロームシアター京都
2016年3月20日(日・祝)新潟県 新潟県民会館
2016年3月21日(月・祝)富山県 富山オーバード・ホール
2016年3月25日(金)静岡県 静岡市民文化会館 大ホール
2016年3月27日(日)埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール
2016年4月1日(金)愛媛県 松山市民会館 大ホール
2016年4月3日(日)香川県 香川県民ホール アルファあなぶきホール 大ホール
2016年4月8日(金)福島県 郡山市民文化センター 大ホール
2016年4月9日(土)長野県 ホクト文化ホール
2016年4月15日(金)宮城県 仙台サンプラザホール
2016年4月17日(日)青森県 青森市文化会館 リンクステーションホール青森
2016年4月23日(土)沖縄県 ナムラホール
2016年4月24日(日)沖縄県 ナムラホール
アリーナ公演
2016年6月4日(土)愛知県 日本ガイシホール
2016年6月5日(日)愛知県 日本ガイシホール
2016年6月18日(土)千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
2016年6月19日(日)千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
2016年6月29日(水)大阪府 大阪城ホール
2016年6月30日(木)大阪府 大阪城ホール
2016年7月9日(土)福岡県 マリンメッセ福岡
2016年7月23日(土)群馬県 ヤマダグリーンドーム前橋
2016年7月24日(日)群馬県 ヤマダグリーンドーム前橋
back number(バックナンバー)

back number

2004年に清水依与吏(Vo, G)を中心に群馬県で結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、2007年に小島和也(B, Cho)と栗原寿(Dr)を加えた現在の編成に。2009年に発売した初のミニアルバム「逃した魚」は大手レコード店で絶賛され、全国的に話題となる。2010年にフルアルバム「あとのまつり」を発表し、美しいメロディに切ない歌詞を乗せるというスタイルを確立。2011年4月にシングル「はなびら」でメジャーデビューした。2013年には東京・日本武道館でワンマンライブを成功させ、その後もコンスタントに作品を発表。2015年11月に14thシングル「クリスマスソング」をリリースし、12月には5thアルバム「シャンデリア」を発売する。