音楽ナタリー Power Push - back number

追い込んだ先に見えた、back number流クリスマスソング

back numberがニューシングル「クリスマスソング」をリリースする。フジテレビ系月9ドラマ「5→9 ~私に恋したお坊さん~」の主題歌としてオンエアされているこの曲は、好きという気持ちを伝えられずに逡巡する男性を主人公にしたラブソング。「JR SKISKI」CMソングの「ヒロイン」、「ポカリスエット イオンウォーター」CMソングの「SISTER」、NTTドコモCMソングの「手紙」と大型タイアップによる話題曲を次々と発表してきた2015年のback numberだが、月9ドラマの主題歌として制作された「クリスマスソング」によって、その知名度はさらに上がることになりそうだ。

今回もメンバー3人にインタビューを実施。清水依与吏(Vo, G)が「本当にいい曲なのかどうかもわからなくなるほど自分を追い込んで作った」という「クリスマスソング」についてじっくりと聞いた。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 須田卓馬 ヘアメイク / 関田泰典 スタイリスト / 松崎彩子

“冬の片思い”のストックを使い果たした

──「クリスマスソング」を初めてラジオ(ニッポン放送「back numberのオールナイトニッポン」)でオンエアするとき、かなり緊張していたそうですね。

清水依与吏(Vo, G) そうですね。緊張感なのかなんなのか、すごく不思議な気持ちでした。もうね、自分でこの曲がいいのかどうか、それさえもわからなくなるくらいまで追い込んで作ったので。全然客観視できてなかったし、「これを聴いてホントにいいって言ってくれるのかな」というのが今まで以上にあったんですよね。

──どうしてそこまで追い込まれたんですか?

清水依与吏(Vo, G)

清水 「ヒロイン」という曲を作ったことで、自分の中にある“冬の片思い”のストックというか、「冬に恋したら、こうなるよね」っていう“自分流あるある”を使い果たしていた感じがあったんです。だから今回は、もともとあったものをパッケージするというより、今の自分で臨むしかなかったんですよね。月9の主題歌というのもあって、試されている感覚というか、自意識過剰になるようなシチュエーションもいっぱいあったし……。そういうことがたくさん重なって、ドギマギしてたんでしょうね。

──月9の主題歌というプレッシャーもありました?

清水 ありましたね。あまり意識しないでやりたかったんですけど、どうしても意識せざるを得なかったというか。

栗原寿(Dr) 月9のドラマはもちろん観てましたからね。僕が10代の頃はテレビが一番の情報源だったので。

──しかも数々のヒット曲を生み出してきた枠ですからね。

清水 うん、その意識が強かったですね。ドラマのスタッフの方からも、売れる売れないみたいなワードが出てきてて。そこにはドラマを作るチームの美学も感じたし、自分が逆の立場だったら同じことを言うかもしれないなとも思って。そこから何曲も作ったんですけど、結局、選ばれたのはそういう話をする前に書いてあった曲なんですよ。ヒットを意識しすぎちゃダメってことですね。

──歌詞についてもドラマ側とやりとりがあったんですか?

清水 「クリスマスソングをお願いします」ということでした。「SISTER」も「手紙」もそうなんですけど、今年は自分発信ではないというか、「このタイミングで誰かにお願いされなかったら、こういうテーマでは書こうとしなかっただろうな」という曲が多かったから、クリスマスソングもいい機会だと思って取り組みました。

──すごく清水さんらしい歌詞ですよね。ロマンティックでもハッピーでもなく、クリスマスの雰囲気を少し斜めから眺めながら、でも自分はどうしようもなく恋をしているっていう。

小島和也(B)

小島和也(B) きっとリア充ではないですよね、この曲の主人公は。それを依与吏の“らしさ”って言うとちょっと失礼かもしれないけど(笑)、根っから明るい曲だったり、ホントに幸せなクリスマスソングだったら、そっちのほうが違和感を感じたと思うんですよ。「back numberがクリスマスソングをやるとしたら、こうだろうな」という感じがしましたね。

清水 楽しくもあるんですけどね、クリスマスの空気感は。実はそこに乗っかってみたいとも思ってるんだけど「でも、トナカイの角を付けて歩くのはちょっとな……」っていう。自意識が強いというか、「そんなの誰も見てないよ。楽しんだもの勝ちじゃない」ってわかってるんだけど、心も体もそうはいかないっていう。みんながみんなそうではないと思うけど、僕らの世代の人たちは恋すること自体に冷めてるところがあるんじゃないかなって思っていて。ドラマのスタッフの方からも「(劇中で山下智久が演じる)お坊さんの気持ちを歌詞にしてほしい」というリクエストがあったんですけど、彼もそういうタイプですし。

──なるほど。そういうリアリティも反映されているわけですね。

清水 「ヒロイン」はもっと若い頃の自分の目線だったんですけど、「クリスマスソング」は今の自分に近いので。恋している自分を鼻で笑いながらも、恋愛してるときはいつも同じだから「好きだって言いたいけど、言えない」という気持ちもあって。それはもう、今の自分の感覚でしかないんです。

バンドを始めて10年経って、1周した

──いつかはクリスマスソングを書いてみたいという気持ちもあったんですか?

清水 いや、あんまりなかったですね。「クリスマス」とか「サンタクロース」っていう歌詞を思い切り歌いながらギターをギャンギャン鳴らすカッコいいバンドもいると思いますけど、俺らに求められているのはそういうことではないなって。バンドだけでクリスマスソングを作るのも難しいと思ったし、その中で小林(武史)さんにお願いすることになったという。それも3人で話し合ったんですけど、この1年は小林さんともすごく縁があったし、今年の最後も一緒にやりたいな、と。

──小林武史さんがback numberの楽曲のアレンジを手がけるのは、「ヒロイン」「手紙」に続いて3曲目でした。今回もロックバンドの骨太な部分とポップスとしての質の高さがバランスよく共存してますよね。

栗原寿(Dr)

栗原 デモの音源を基にプリプロをやっていくんですが、途中の段階でも小林さんから「こうしてみよう」ってアイデアがどんどん出てくるんです。その過程も勉強になりますね。

小島 レコーディング中にアレンジが変わることも多いですからね。新しいリズムを加えたり、もともとベースが入っていなかったパートで「弾いてみようか」ということになったり。

清水 実はこっちからもけっこう言ってるんですけどね。全部お任せしてますと言いつつ、(レコーディングの)映像をあとで観てみると「もっとこんな感じにしたいんですけど」とか、わりと口を出していて。例えばストリングスのフレーズに対して、ギターを弾きながら「こういうメロディのほうがよくないですか?」とか。そうすると小林さんも「あ、いいね」って言ってくれたりするんですよね。知識量や経験値、センスみたいなものは圧倒的ですけど、僕らからも「こっちのほうがいいと思うんですけど」って言えるような関係を築けてる……というか、小林さんに作っていただいてるんですけどね。

──back numberの楽曲なんだから、プロデューサーとの関係は対等であるべきですよね。

清水 対等ではないですけどね、全然(笑)。ただ、小林さんもいちアーティストとしてスタジオにいてくださるし、楽しそうにやってくれるんですよ。あと小林さんと一緒に制作を進めながら感じたことをセルフプロデュースのカップリング曲やアルバムの曲にも反映できるのも大きいですね。学んだことをそのまま使うというより、その精神を受け継ぐという感じで。(12月9日発売の)アルバムのレコーディング中も「もっとロックでいいんじゃないか」とか「好きにやっちゃおうよ」みたいな話を3人でしてたし、そういう意味でもプロデューサーは偉大だなと思います。その場で得られることだけではないですからね。

──小林さんとの関係、清水さんのソングライティングの広がりを含めて、このタイミングでクリスマスソングをリリースするのはちょうどよかったのかもしれませんね。

清水 うん、そうですね。デビュー1年目だったら「クリスマスソングは無理ですよ」って断ってたかもしれないし。バンドを始めて10年経って、1周した感じもあるんですよ。今回の「クリスマスソング」もバンドを始めたばかりの頃に「こういうことをやりたい」と思っていた曲の1つなんですよね、確実に。「ストリングスがバーン!と鳴っていて、でも、しっかりバンドの音が聞こえる曲っていいよな」って思ってましたから。結局、やりたいことをやってるんだなっていう感じもありますね。

ニューシングル「クリスマスソング」/ 2015年11月18日発売 / UNIVERSAL SIGMA
初回限定盤 [CD+DVD] / 1620円 / UMCK-9775
通常盤 [CD] / 1080円 / UMCK-5585
CD収録曲
  1. クリスマスソング
  2. Hey!Brother!
  3. 助演女優症2
  4. クリスマスソング(instrumental)
  5. Hey!Brother!(instrumental)
  6. 助演女優症2(instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
  • 「クリスマスソング」music video
  • 「クリスマスソング」making of studio recording & music video & photo session
back number tour 2016 “ミラーボールとシャンデリア”
ホール公演
2016年1月24日(日)千葉県 市川市文化会館 大ホール
2016年1月28日(木)東京都 たましんRISURUホール
2016年2月4日(木)大分県 iichikoグランシアタ
2016年2月6日(土)宮崎県 宮崎市民文化ホール
2016年2月11日(木・祝)奈良県 なら100年会館
2016年2月12日(金)三重県 四日市市文化会館 第1ホール
2016年2月19日(金)広島県 上野学園ホール
2016年2月21日(日)岡山県 岡山市民会館
2016年2月25日(木)神奈川 神奈川県民ホール
2016年2月28日(日)茨城県 茨城県立県民文化センター
2016年3月3日(木)北海道 ニトリ文化ホール
2016年3月4日(金)北海道 旭川市民文化会館 大ホール
2016年3月12日(土)兵庫県 神戸国際会館こくさいホール
2016年3月13日(日)京都府 ロームシアター京都
2016年3月20日(日・祝)新潟県 新潟県民会館
2016年3月21日(月・祝)富山県 富山オーバード・ホール
2016年3月25日(金)静岡県 静岡市民文化会館 大ホール
2016年3月27日(日)埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール
2016年4月1日(金)愛媛県 松山市民会館 大ホール
2016年4月3日(日)香川県 香川県民ホール アルファあなぶきホール 大ホール
2016年4月8日(金)福島県 郡山市民文化センター 大ホール
2016年4月9日(土)長野県 ホクト文化ホール
2016年4月15日(金)宮城県 仙台サンプラザホール
2016年4月17日(日)青森県 青森市文化会館 リンクステーションホール青森
2016年4月23日(土)沖縄県 ナムラホール
2016年4月24日(日)沖縄県 ナムラホール
アリーナ公演
2016年6月4日(土)愛知県 日本ガイシホール
2016年6月5日(日)愛知県 日本ガイシホール
2016年6月18日(土)千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
2016年6月19日(日)千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
2016年6月29日(水)大阪府 大阪城ホール
2016年6月30日(木)大阪府 大阪城ホール
2016年7月9日(土)福岡県 マリンメッセ福岡
2016年7月23日(土)群馬県 ヤマダグリーンドーム前橋
2016年7月24日(日)群馬県 ヤマダグリーンドーム前橋
back number(バックナンバー)

back number

2004年に清水依与吏(Vo, G)を中心に群馬県で結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、2007年に小島和也(B, Cho)と栗原寿(Dr)を加えた現在の編成に。2009年に発売した初のミニアルバム「逃した魚」は大手レコード店で絶賛され、全国的に話題となる。2010年にフルアルバム「あとのまつり」を発表し、美しいメロディに切ない歌詞を乗せるというスタイルを確立。2011年4月にシングル「はなびら」でメジャーデビューした。2013年には東京・日本武道館でワンマンライブを成功させ、その後もコンスタントに作品を発表。2015年11月に14thシングル「クリスマスソング」をリリースし、12月には5thアルバム「シャンデリア」を発売する。