avengers in sci-fiが4月14日より東名阪ツアー「Club Nowhere」を開催する。
ライブ全編にわたってVJによる映像演出をフィーチャーした内容となるこのツアー。会場では打ち込みとサンプリングを多用したハウスミュージックに仕上げた新曲「Nowhere」の名を冠した限定CDが発売される。また初日の東京・WWW X公演の模様はアベンズ初のライブ映像作品「Live at Club Nowhere」としてDVD化されることが決定している。
音楽ナタリーでは、アベンズのメンバー全員にインタビュー。2017年に自身のクリエイティブベース「SCIENCE ACTION」を設立し、2018年に結成15周年イベントを成功させるなど、より自由な表現に向かって突き進んでいる彼らに現在のバンドのモードを聞いた。
取材・文 / 秦理絵 撮影 / 後藤倫人
SCIENCE ACTION立ち上げ以降、向き合う対象が増えた
──2017年からメジャーを離れて、自分たちのレーベル兼事務所「SCIENCE ACTION」を動かしてきたわけですけど、実際にどんな手応えを感じてますか?
木幡太郎(Vo, G, Syn) どうしてレーベルやマネジメントの仕事が存在するのかがわかりました。やっぱり自分たちで回していくのは大変なんですよ。スタジオで練習すると言っても、10時間こもるわけじゃないし、長くても1日のうち5~6時間だから、その片手間で運営できるんじゃないかと思っていたけど、舐めてました。「なんとかなるかな?」という感じはあったけど、そんなに簡単ではなかったですね。自分たちで100%の責任を負うわけだから、「プロモーションってなんだろう? ビジネスってなんだろう?」とか考えつつ、お金のことや、誰かに聞いてもはぐらかされちゃうようなことに、ちゃんと向き合えてます。
稲見喜彦(B, Vo, Syn) 最近は自分たちでミュージックビデオも撮るようになりましたから。時間が余計にかかるんです。
木幡 ビデオを撮ってる専門の人じゃないから大変ですよ。
稲見 それはそれで悪い気はしないですけどね。
長谷川正法(Dr, Cho) 自分たちで常に何かしなくちゃいけない状況なので、気持ちは引き締まります。
──自分たちで舵を切れるという身軽さも実感できるんじゃないですか?
木幡 うん。そこは昔よりいいですよね。
稲見 15年間でいろいろな人と知り合ったから、助けてくれる人、相談できる人が増えたのも大きいですね。
木幡 人とのつながりですべてが回っていると思いました。ずっと人に頼っちゃいけないという気持ちがあったんですよ。人って、いつ裏切ってもおかしくない。最後は自分1人なんだっていう感覚がこれまでは強くあったんです。でもこの1、2年ぐらいでいろいろな人に助けてもらって、人とのつながりで何事も成立していくんだな、と勉強になっちゃいましたね。昔からやってきた奴らは裏切らないし、僕らがどんな状況になっても「はい、さようなら」という人はいなかったですからね。
「こんなに友達がいたのか」
──去年3月に新木場で開催した15周年イベントでは、代わる代わるアベンズに縁のあるアーティストが出演しました。かなり感慨深い1日だったんじゃないでしょうか(参照:avengers in sci-fi、盟友集結した結成15周年ライブ「SCIENCE MASSIVE ACTION」)。
長谷川 イベント最後の自分たちの出番までがすごく早く感じました。全アーティストのステージを観てたんですけど、「こんなに友達がいたのか」と。
稲見 普段呼んだら出てくれなかったと思いますよ(笑)。
長谷川 (笑)。まあ15周年だからというのは大きいよね。
──今まですべての周年をスルーしてきたアベンズだから、出てくれたアーティストも「ここぞ」という感じだったんだと思います。
稲見 できれば周年イベントなんかを開催せず、そっとしておいてほしいバンドですから。でもやってよかったです。正直、自分たちのステージの1曲目で泣きそうになりましたもん。泣こうか泣くまいか迷ったんですけど、こらえました(笑)。こんな気持ちになれるだけ、バンドを続けてきてよかったと思いました。
木幡 こんなに俺たち歓迎されてるんだなという気持ちはありましたよ。お客さんは目当てのバンドを観たら帰ってもいいわけで。みんな、僕らより人気のある人たちだから。
──そんなこと……。
長谷川 そんなことありますよ(笑)。遠慮しなくて大丈夫です。
一同 あはははは!(笑)
木幡 まあほかのバンドのお客さんが全部帰っちゃって、結局いつもの僕らのお客さんだけの前でやる、みたいな光景も予想してたというか、頭の片隅に置きつつだったんですけど、思った以上にみんなが歓迎してくれてうれしかったです。
──また周年イベントをやりたいと思いましたか?
稲見 やりたいですよ。やれるなら、毎年やりたいぐらい。
長谷川 でも、毎年やってたら、ああはいかないんじゃないかなあ(笑)。
木幡 あの規模を毎回やってたら死人が出るんじゃないかなと思いますよ。けっこう消耗するから(笑)。毎年イベントをやってる人たちは尊敬します。
稲見 僕らは特別なときにやるのがいいんでしょうね。
アルバム制作は必ずしも今やるべきことじゃない
──アベンズは4月の東名阪ツアーがVJ帯同のものになることを発表していて、ツアー初日の渋谷公演をDVD化するクラウドファンディングもスタートしています。これはどういう経緯で?
稲見 太郎と飲んでるときに、「4月にアルバムを出そう」と話してたんですよ。そのリリースツアーにはVJを付けたいという話もしていて。そのタイミングで僕らの友達がクラウドファンディングのスタッフと知り合ったんです。そこでそのスタッフの人から僕らのことを紹介してほしいと言われたらしくて。その流れから始まりました。
──じゃあ最初はアルバムを出して、ツアーをする予定だったんですか?
稲見 その予定でした。でも結局アルバムは出さないほうがいいんじゃないかという話になり。
木幡 なんとなくアルバムを出して、プロモーションをして、ツアーをするみたいなプロセスって、「そうしなきゃいけない」と思わされてる節があるけど、あまりにもテンプレ的だよなあと。必ずしも今やるべきことじゃないような気がしたんです。
稲見 アルバムに関してはもっとタイミングが遅くてもいい気がしたよね。シングルやEPを、Spotifyとかでストリーミング配信したほうが現代的だろうと思ったし。
木幡 今まで当然のように思われてた音楽業界のシステムを全部疑っていいタイミングなんじゃないかと思ったんです。
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VJは重要、オマケではない