時代を切り開く音楽ってあるんだな
──HISASHIさんは10年以上前から凛として時雨をプッシュされていますが、どういったところにグッときたんでしょうか。
HISASHI 僕は常に新しいものに出会うことを大切にしていて。そうしないと、自分の中の鋭い部分がどんどん丸くなっていっちゃいそうだから。そんな中で出会ったバンドが、凛として時雨。彼らに出会って、時代を切り開く音楽ってあるんだなと思った。3人それぞれに、衝動的な音の叫びみたいなものと信念があって。しかも、それがすごくリアル。それで凛として時雨のライブに行くようになって、(ピエール)中野くんと一緒にセッションするようにもなりましたね。
TK 僕らはGLAYから影響を受けてるんですけど、最初に凛として時雨の音を聴いていただいたときに「あ、この人たちGLAYを聴いていたな」とわかりましたか?
HISASHI いやー、それはわからなかったかも(笑)。ただ、さっき収録で話して、TKくんはいろんなJ-POPの音楽を聴いてきて、変拍子や転調に自然と触れてきた世代なんだなって思った。「ロックとはこういうものだ!」という観念がなく、自由に音楽をやれている。そういうところが僕に刺さったような気がする。
──収録ではTKさんが学生時代にGLAYの曲をコピーしていたことを話していましたが、どんな曲を弾いていたんですか?
TK 僕らの世代は「誘惑」「SOUL LOVE」「Winter, again」をコピーする人が多かったんですが、僕は「カナリヤ」という曲もすごく好きで。
HISASHI アルバムの曲ですね(1996年11月発売のアルバム「BELOVED」収録)。
TK あと、「summer FM」(1999年8月発売のシングル「ここではない、どこかへ」カップリング曲)も好きでした。GLAYの新曲が出るたびに、HISASHIさんはどんなソロを弾いているのかなと楽しみにしていましたね。
HISASHI えっ、そんなGLAYの聴き方があるんだ(笑)。
TK そういえば、今日HISASHIさんに話そうと思っていたことがあるんです。今言った通り僕はHISASHIさんのギターソロを、願わくばあまり難しくありませんように、速弾きじゃありませんようにと思いながら楽しみにしていたんですけど、最近は業界的にギターソロがあんまりいらない風潮になっているみたいで。僕もこの前スタッフさんから「ギターソロ、もうちょっと短くなりませんか?」というお話があったんですよ。
HISASHI マジで!?
TK 「そういう時代だよな」と思いつつ、僕はそのまま長いギターソロを弾いたんですけど(笑)。
HISASHI あははは。
TK 今はイントロが8秒あると聴いてもらえない時代らしく、最近プロデュースのお仕事をしていても、もともと4小節しかないイントロを、2小節にしてもらえないかというお話があったり。
HISASHI そんなこともあるんだ……! でも、そう聞くと逆にトライしてみたくなるな(笑)。
大事にしているのは、とことん固執すること
──TKさんが作る楽曲は、「PSYCHO-PASS サイコパス」しかり「東京喰種トーキョーグール」しかり、各アニメ作品とものすごく深いところでリンクしている印象がありまして。TKさんの中で、アニメのテーマソングを作るときに大切にしていることはありますか?
TK アニメ主題歌のオファーをいただくことは多いんですが、なぜ自分にこんなにたくさん依頼してくださるのか、正直あまりわかっていないところがあって。ダークなアニメが自分の音楽性に合うのかな、というのはわかるんですが……。僕の中で唯一大事にしているのは、目の前にあるアニメ作品と音楽がよくなるように、とことん固執することですかね。どうしたらもっと作品がいいものになるかを考え抜く。今日の収録で自分のことを“あきらめ悪男”と表現したんですけど、「この人の音楽は、アニメと親和性がある」と思ってもらえているなら、この執着心があるからかもしれません。そもそも僕はアニメの内容をうまく汲み取れる人ではなくて、むしろ下手なほうなんですよ。3回くらい観ないと内容が頭に入ってこない。例えば本でも、「こういう話ね」ってスラスラ読める方もいると思うんですが、僕はなかなかそういうふうには読めなくて。
HISASHI 読みながら違うことを考えちゃう?
TK 文字が頭から飛んでいっちゃうんですよね。「あれ? 今何を考えていたっけ?」って。時間をかけて物語の内容が頭の中に浸透したときに、やっと入口に立って自分の言葉を考えられるようになる。だから歌詞を書き始めるまでが長いですね。
HISASHI でも、TKくんのその熱は絶対にリスナーやアニメの視聴者に伝わる。それだと思うよ、やっぱり。“あきらめが悪い”ということは、物事に対してまっすぐぶつかっているということ。普通、人間ってまっすぐぶつかるのは嫌じゃん。痛いしさ。でも、TKくんはそれができる人なんだよね。しかも楽しんでやっている。それはすごいことだよ。
──今後お二人でやってみたいことはありますか?
HISASHI 対バンだよね。GLAYはギタリストが2人いるけど、そこにゲストでTKくんにも加わってもらって、ギターを弾いてほしい。
TK そんなことがあったら僕は“恥ずかし死”しますよ、ステージで(笑)。
HISASHI (笑)。何か一緒にやれたらいいね。
TK うれしいです。もうすでに中野くんはGLAYでドラムを叩いていて、片足を突っ込んでると思うので(笑)。
HISASHI あははは。
このアニメを観てくれ!
HISASHIからTKへのイチオシ作品
「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」
ドタバタラブコメの「うる星やつら」を、押井守監督がシリアスなSFにガラリと変えた作品です。いわゆる“ループもの”なんですが、その頃はまだそういったジャンルがあまりなかったので、当時のアニメファンにとってはすごく衝撃的で驚いたんですよね。僕もこの作品から、それまで聴いてきた音楽と同じくらい大きな影響を受けました。
プロフィール
HISASHI(ヒサシ)
北海道函館市出身の4人組ロックバンドGLAYのギタリスト。高校2年生の頃に同じ高校に通っていたTAKUROと出会い、GLAYに加入した。個人としてもさまざまアーティストの作品に参加し、藍井エイル、遠藤ゆりか、三森すずこ、緒方恵美、日笠陽子らに楽曲を提供。メディアに関心があり、アニメや映画などサブカルチャーに造詣が深い。バラエティ番組に幅広く出演し、自身のYouTubeチャンネル「HISASHI TV」でも精力的に活動中。2012年に結成されたバンドACE OF SPADESのリーダーおよびギタリストも務めている。GLAYとしては、デビュー30周年を迎える2024年5月にアニバーサリーシングル「whodunit / シェア」をリリース。6月に埼玉・ベルーナドームでワンマンライブ「GLAY 30th Anniversary GLAY EXPO 2024-2025」を開催する。
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TK(ティーケー)
3ピースバンド・凛として時雨のフロントマン。ボーカルとギターのほか、全楽曲で作曲と作詞、エンジニアを担当している。ソロプロジェクトであるTK from 凛として時雨では、ピアノやバイオリンを取り入れたバンドスタイルから、単身でのアコースティックまで幅広い表現形態をとっている。2021年10月に斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN、XIIX)、阿部芙蓉美、miletといった面々を迎えた初のベストアルバム「egomaniac feedback」をリリース。2022年3月に学生時代からリスペクトしていたというB'z・稲葉浩志を迎えたシングル「As long as I love / Scratch(with 稲葉浩志)」、11月にテレビアニメ「チェンソーマン」のエンディングテーマ「first death」をリリースした。2023年12月にNHK「みんなのうた」の放送曲「クジャクジャノマアムアイア」を発表。2024年4月から全国ツアーを行い、5月にアニメ「僕のヒーローアカデミア」のオープニング主題歌「誰我為」を配信リリースする。そのほかに安藤裕子、Aimer、アイナ・ジ・エンドといったアーティストへの楽曲提供や、エンジニアリングを含めたサウンドプロデュースなども精力的に行っている。
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