angela|固定観念を“Beyond”するために

angelaがニューアルバム「Beyond」をリリースした。

今作は「angelaの、その先へ―」をコンセプトに制作された通算9枚目のオリジナルアルバム。fripSideとのコラボレーション楽曲「僕は僕であって」や、アニメ「アホガール」の主題歌「全力☆Summer!」、「蒼穹のファフナー」「K」といったangelaに所縁のあるアニメシリーズのタイアップソングなど、計11曲が収録されている。音楽ナタリーではangelaの2人にインタビューを実施。アルバムの詳細発表に合わせバナナの着ぐるみを着たアーティスト写真を発表するなど、これまでのユニットのイメージとは異なるアプローチを交えながら“Beyond”を図る2人に、アルバムについての話をじっくりと聞いた。

取材・文 / 須藤輝

「バナナでよかったのに」

angela

──お二人は11月に、ニューアルバムのリリースに向けてバナナの着ぐるみに身を包んだ新ビジュアルを公開しました(参照:angela、バナナすぎる新ビジュアルで従来のイメージを“Beyond”)。しかし翌日「大人なのにすごく調子に乗ってしまっていた」と謝罪したうえで改めて正式なビジュアルを公開するという……(参照:大人なのにはしゃぎすぎたangelaが謝罪、正式な最新ビジュアル公開)。

atsuko(Vo) そうだ、ナタリーさんにも記事を掲載していただいたんだ。お騒がせしました。

KATSU(G, Key) 巻き込み事故ですよね、ナタリーさんにしてみれば。ごめんなさい。今回、アルバムタイトルの「Beyond」を、つまり「angelaの、その先へ―」っていうテーマをビジュアルで打ち出すにあたって、「angelaらしい自由な表現とは?」みたいな会議をしたときに出た答えの1つが「バナナの着ぐるみを着る」だったんです。

──ははは(笑)。

KATSU まあ、アニメ「アホガール」のせいなんですけど。

atsuko 「アホガール」の“おかげ”ね。今回アルバムを出すにあたり、ちょっとした遊び心がほしかったと言うか。やっぱり観る人の感情を揺さぶらないといけないと思ったんですよ、表現者として。そういう意図でバナナの格好して「びよんど!」ってやったんですけど、いざそのビジュアルを公開したら、みんなに「ああ、angelaはやるよねそういうこと」って納得されてしまい……。

KATSU 「本人たちがいいならいいんじゃない?」とか「これはこれで可愛い」とかね。むしろ僕らが揺さぶられ。

atsuko だから「早めに謝ろう。このままバナナが受け入れられちゃったら、ちゃんとしたやつを出しづらいじゃん」って。で、改めて正式なビジュアルを公開したら、もちろん「安心した」「カッコいい」みたいな声もたくさんいただきましたけど、「バナナでよかったのに」という意見もあってちょっと困りました(笑)。

作品のためだったらなんでもやる

──そんな「Beyond」の1曲目は、fripSideとのコラボレーション楽曲「僕は僕であって」です。アルバムの幕開けにふさわしいクールかつアグレッシブなロックナンバーですが、オリジナルアルバムの1曲目がコラボ曲というのは、ちょっと意外でした。

atsuko 私の中では「これしかない」と思ったんですけど、客観的に見るとそうかもしれないですね。

KATSU 確かにこの曲はangelaとfripSideさんとの共作なんですけど、大きく言えばコラボもangelaの表現の1つなんですよね。だから「僕は僕であって」っていう曲名にも、「angelaはangelaだよ」っていうメッセージも込めているし、僕はあえてコラボ曲で切り出したかったと言うか。「作品のためだったらなんでもやるよ」みたいな意思表示でもあります。

──そのクールな「僕は僕であって」のあと、2曲目が件のアニメ「アホガール」の主題歌となった「全力☆Summer!」です。

atsuko 私たちって、どちらかと言うとシリアスなアニメの曲を書くことが多いユニットだったんです。そのイメージが定着しつつあったところに「アホガール」の主題歌のオファーをいただいて。で、「アホってなんだろう?」って考えた結果、予測不可能なことをする人だと思ったんですね。それを表現したくて、早口言葉だったり演歌だったり、突拍子もない展開をこれでもかと詰め込んだんですけど、曲を聴いてくださった方々から「最初はangelaだって気付かなかった。でもいいね」っていう感想をけっこういただいたんですよ。今回の(正式な)ジャケット写真みたいにクールにキメてる私たちじゃなくて、楽しくはしゃいでるangelaをお見せできたという意味でも、「いい出会いだった!」と思ってます。

ここまでやってきてまだプロローグかい!

──この1、2曲目の並びに象徴されるように、本作は隣り合う曲同士の落差が非常に激しいですね。

atsuko なんか、全然同じ空気感でいられないんですよね(笑)。

──結果として、それがお互いの曲を引き立てています。事実、「全力☆Summer!」という“アホ”ソングに続く3曲目「Dream on」はストレートなロックナンバー。かと思えば4曲目、制作が決定した「蒼穹のファフナー THE BEYOND」のイメージソングである「Prologue -君の向こう側-」は、また毛色が違います。

atsuko 歌詞も曲調も前向きな「Dream on」に比べると、「Prologue」はとても不穏な曲ですね。歌声にしても、「あんまり生々しい声質を出したくない」ってKATSUさんは言ってたよね。「誰だかわからない人が歌ってるぐらいにしたい」みたいな。

KATSU ちょっと気持ち悪さを残したくて。僕は「デジタル民謡」って言ってたんですけど。

──言い得て妙ですね(笑)。

atsuko 最初にこの曲のメロディラインをプロデューサーに聴いてもらったとき「すごく『ファフナー』っぽい」と言ってくださいまして。ただ、作詞は苦労しました。イメージソングって、すごく難しいんですよ。作品の中身を言いすぎてもいけないし、かと言って中身がわからなさすぎてもいけない。それを聴いた人が、「あのキャラはこうなってしまうのかな?」とか、まさにイメージを膨らませるための曲じゃないといけないと思っていて。特に「ファフナー」ファンの方々は歌詞を読み込んで、1つひとつの単語に対してさまざまな解釈をしてくださるので、言葉選びも慎重になりました。

──angelaは、「蒼穹のファフナー」シリーズとはもう10年以上の付き合いになります。なのに曲名が……。

atsuko(Vo)

atsuko 「ここまでやってきてまだプロローグかい!」って言う(笑)。実際、シリーズ構成の冲方(丁)さんや総監督の能戸(隆)さんをはじめ制作チームの方々も曲名に驚かれたみたいで。でも私としては、「THE BEYOND」は続編ではありつつ、ここからまた新しいお話が始まるんだということを伝えたかったんです。サブタイトルの「君の向こう側」ってすごく抽象的だと自分でも思ってるんですけど、この「君」は誰を指すのか。文字通りの二人称としての「君」なのか、あるいは誰かから見た「僕」なのかとか、いろんな捉え方ができると思うので、たくさん想像を膨らませていただければなと。

──「ファフナー」楽曲の制作に関して、2015年に放送された「蒼穹のファフナー EXODUS」第1クールのオープニング主題歌「イグジスト」の時点で、KATSUさんは「消耗戦の様相を呈してはいる」とおっしゃっていました(参照:angela「イグジスト」インタビュー)。つまり産みの苦しみがハンパないと。

KATSU angelaは「ファフナー」の曲を「ファフソン」って言ってるんですけど、このファフソンに関しては腹を括っていると言うか、もうとことん付き合いますよ。これね、終わんないと思う。

atsuko 「イグジスト」の時点で諦めたんだよね。でも正直、曲を作るたびに燃え尽きてるし、毎回「もうこれ以上の曲はできません!」ってなるんですけど、やっぱりアニメの放送が始まると、観ているうちに新しいアイデアが湧いてきたりして。以前「『ファフナー』はangelaの骨格を作ってくれた作品」だとお話ししましたけど、あるいは血液みたいなものかもしれませんね。自分たちの中に流れているものだから、いったん全部出し切って空っぽになっても、またどこからかパワーが湧いて循環するみたいな。

KATSU それぐらいangelaと「ファフナー」は強く結びついているんですけど、まあ大変は大変だよね。「Prologue」も、それこそアルバム1枚作るくらいの労力を費やしたんじゃないかって。と言うのも、ファフソンって、ストーリーを動かしかねないんです。つまりアニメの主題歌って、普通はシナリオや脚本に沿って作るものだと思うんですけど、例えば「Shangri-La」(2004年放送の「蒼穹のファフナー」オープニング主題歌)ができたとき、冲方さんが「この曲を聴いて最終回の内容が変わったんだよねー」って、恐ろしいことをさらっとおっしゃっていて。

──主題歌がシナリオに影響するなんてことがあるんですね。

KATSU だからファフソンを作るときは丁寧に丁寧に、でも提示すべきテーマはきちんと提示しなきゃいけない。僕らはまだ「THE BEYOND」の結末を知らないんですけど作品全体を取り巻く空気感と言うか、「きっとこういう話なんだろうな」っていう意味ではぴったりハマってる気がします。

──その歌詞を拝読するに、やはり今回も愉快なお話ではないんだな、と。

atsuko おっしゃる通りです(笑)。

──ただ、「Prologue」の曲調は、前半部は先ほどatsukoさんがおっしゃったように不穏で重々しいのですが、それだけに最初のサビを経てテンポアップしていくあたりの開放感はとても心地よいです。

KATSU それはangelaからの、「どうか少しでもハッピーになってもらいたい」っていう願いの表れです。曲がストーリーを引っ張る可能性があるのを逆手に取って(笑)。

angela「Beyond」
2017年12月20日発売 / KING RECORDS
angela「Beyond」初回限定盤

初回限定盤
[CD+Blu-ray Disc]
3888円 / KICS-93658

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angela「Beyond」通常盤

通常盤
[CD]
3240円 / KICS-3658

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CD収録曲
  1. 僕は僕であって
  2. 全力☆Summer!
  3. Dream on
  4. Prologue -君の向こう側-
  5. 語り継がれしもの
  6. あの夏空
  7. SEVEN STORIES
  8. Beautiful day
  9. 道しるべ
  10. Calling you
  11. LOVE★CIRCUS
初回限定盤Blu-ray収録内容
  • 「angela 全力☆Live!2017」ツアー密着メイキング
  • 「此処に居るよ」武道館LIVE用特別映像
angela(アンジェラ)
岡山県出身のatsuko(Vo)とKATSU(G, Key)による2人組ユニット。それぞれ音楽を志し上京した後に結成し、2003年にテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のオープニング主題歌「明日へのbrilliant road」でメジャーデビュー。1stシングルながらオリコン週間シングルランキングで15位をマークし、瞬く間にアニメソングシーンで存在感を示す。以来「蒼穹のファフナー」シリーズ、「アスラクライン」、「K」シリーズなど、多くの人気アニメの関連楽曲を担当。また「Animelo Summer Live」やアメリカの「SAKURA-CON」、カナダの「CANADIAN NATIONAL EXPO」、フランスの「Japan Expo」など、国内外の大型アニメ系イベントにも多数出演する。2014年には5月にアニメ「シドニアの騎士」のオープニングテーマ「シドニア」を発表。この曲は同年、アニメファンが選ぶ「アニメーション神戸賞」で主題歌賞を受賞した。2017年3月には自身初の東京・日本武道館単独公演「angelaのミュージック・ワンダー★特大サーカスin日本武道館~僕等は目指したShangri-La~」を開催。同年12月にはニューアルバム「Beyond」をリリースした。