俺たちが生まれる前の時代をイメージした

──サウンドはどのように作り上げていったんですか？

福永　最初にこの曲全体で鳴らしているシンセのフレーズを思いついて、そこから広げていきました。ドラムは細かいビートじゃなくて、あえて普通の8ビートでやろうとか、ベースもベタな感じでいこうとか。ベタっていうのがハマった曲ですね。

山崎　1980年代とかのノスタルジックな空気を出すためには、シンセサイザーの音色や音域が大きな要素になってくると思うんです。意図的に周波数を落としまくるのではなく、自分の思ういいラインのノスタルジックな音を作っていく作業をしました。あとはベースの話になっちゃうんですけど……まあそれは亮ちゃんが（笑）。

──では是永さんお願いします。

是永　ベースも普通のベースじゃなくって、あまりローが出ない小っちゃめなベースを使って。2年前に買ったヤツなんですけど、それから弦も張り替えずにレコーディングしました。

福永　あー、そうだったね。俺たちが生まれる前の時代をイメージした曲なので、そういうふうになるように俺たちなりの工夫も入ってますね。

大澤　私は、この曲のレコーディングではサンプリングパッドは使わず、ドラムセットしか使ってないんですよ。ビートもさっき言ったようにかなりシンプルだし、フィルもそんなに入れてなくて。あと、パーンって広がるようなスネアの音にも時代感が出るかなって思って挑戦しました。

力が抜けたから作れた“俺の青春映画”

──「Shoes」の歌詞は、主人公が自分の少年時代を振り返る描写が印象的だなと思いました。

福永　この曲の歌詞に関しては、“俺の青春映画”みたいな感じです（笑）。けっこう自分の好きな青春映画のイメージを詰め込んだ感じだから、俺自身が主人公ではないかもしれない。もちろん俺自身の思いが含まれている部分はあったりするだろうけど。

──ちなみにイメージした青春映画というのは？

福永　最近のだと「シング・ストリート 未来へのうた」とか、「ウォールフラワー」。ちょっと昔のだと「グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち」とか。「スタンド・バイ・ミー」の映像を無音で流しながら書いたりもしました。

──サウンドにも歌詞にも、福永さんが思うノスタルジアが詰め込まれてるんですね。

福永　俺らが思うベタなノスタルジアを詰め込んだ感じですね。「Shoes」はいい意味で楽に書いたと言うか、そんなに根詰めてないと言うか……力を抜いて書けたんですごく気に入っているんですよ。去年はいい意味でも悪い意味でもすごく力が入っていたけど、今年は少しだけ余裕があって。その力の抜け具合で自分取り戻せてきてる感ありますね（笑）。

山崎　あはは（笑）。去年はまあ、忙しかったからね。

福永　だからライブもそうなんだけど、自分のスタイルを少しずつ見い出せて来てるかなって思ってます。

──そのスタイルというのは？

福永　取り繕わないという感じかな。今年の上半期は少し余裕があって、大好きなNetflixばかり観てたから（笑）。そのおかげで書けた曲だと思いますね。

──制作の空気感も少しリラックスした感じでした？

山崎　そうかもしれないですね。わりといいアイデアが出てきたし、そのアイデアを広げていくテンポ感もよかったです。ホント余裕があった感じでしたね、いろんな面において。

プリセットを作った人の愛を感じる

──「Shoes」の間奏のシンセサイザー、アクセントになってすごく素敵だなと思いました。

福永　イエーイ、私のソロです。

一同　（笑）。

福永　これはKORGのMinilogueを使っていて。もともと入っているプリセットのセンスがめちゃくちゃいいんです。だいたいみんなプリセットをアレンジして好みの音を作っていくと思うんですけど、今回俺はプリセットをそのまんま使ってますね。

山崎　このプリセットはシグネチャーサウンドだよね。JUNOっていう定番のROLANDのシンセサイザーがあるんですけど、たぶん作った人はJUNO-60とかJUNO-106のコーラスエフェクトをイメージして作ってるんだろうなーって。すごく愛を感じる。

福永　あれはすごくいい楽器なんですよ、ホントに。「Shoes」で康介さんが弾いてる2つのシンセもすごく懐かしい音だと思ったから、俺のMinilogueもそれと同じニュアンスでハマるように入れました。

山崎　あとフレージングが程よいよね。

福永　後半が少し違う2パターンがあったんですけど、今回使わなかったほうはしっかりしたソロだったんです。で、採用したソロはあえてショボい感じと言うか、少年がやってるバンドが弾いてるようなイメージ。

──「シング・ストリート」でもそういうシーンがありましたね。

福永　そうそう！