音楽ナタリー Power Push - 天月-あまつき-×はしやん×佐香智久
仲間と紡いだ箱庭の中身
このフレーズは俺には書けない
──天月さんとはしやんさんはmelostというユニットとしても活動していますが、アルバムには2人が歌唱する「ナノレンズ」という曲が収録されています。この曲ではラップの作詞をはしやんさんが担当していますね。
はしやん ラップの歌詞を書くときは、すでにメインの歌詞を考えてもらってたほうが楽なんです。「ナノレンズ」では(渡辺)翔さんが考えた歌詞に合うような言葉を、ラップの歌詞としてはめ込むようにしました。
天月 melostのアルバム(2015年2月発売の「Melody Stock」)でオリジナル曲を作ったときも僕が先に詞を書いてから、はしやんにラップを入れてもらいました。
──お互いに歌詞を書くときは相談するんですか?
はしやん 一切しないですね。俺が投げるとあまおは「いいね」しか言わない。
天月 ラップってメロディがないから歌詞だけ読んでもどういうふうに歌うのかわからないところがありますけど、彼の歌詞はいつもクオリティが高いですから。そこは信頼してるので、僕から何か言うことはないですね。
佐香 「ナノレンズ」のラップ、メッチャかっこよかったよ。
はしやん キラキラした感じを意識してラップの歌詞を書いたのは初めてかもしれない。
佐香 ラップの歌詞ってどうやって書いてるの? 韻を踏むためにいろんな言葉が出てくるじゃん。母音だけで言葉を検索するサイトとかを使ってるの?
はしやん 使ってないよ(笑)。書くときはすごく考えるだけだね。ひたすら考える。
佐香 どうやったらそんな言葉が出てくるのかっていつも感心してるんだよね。ライブで盛り上がる気持ちもわかる。
はしやん たぶん脳がそういうふうにシフトしてるんだよね。俺は逆にあまおや智久みたいな歌詞は書けないんだよ。例えばアルバムの「気まぐれメリーゴーランド」のサビにある「回れ回れメリーゴーランド 届かなくったって追いかけたって変わらないこの距離はまるで永遠のようだ」ってところ。すごく素敵な歌詞だと思うんだけど、このフレーズは俺には書けない。
佐香 なんで?
はしやん どうしても意味を通そうとしちゃうんだよね。ラップの歌詞って「何が?」って聞かれたら必ず説明できるようになってなきゃいけないと思ってるから、どうしても具体性を重視して言葉を書いちゃうんだよね。でも2人の歌詞は1個のテーマがちゃんと根幹にありつつ、読み手に想像を委ねられるように書かれている。しかも言葉がキャッチー。その技術はホントにすごいなって思ってる。
佐香 キャッチーにすることしか意識してないときとかあるからね。
はしやん たぶんそれが正しいんだよ。音楽はキャッチーかどうかがものすごく大事だから。
要望がすべて当てはまった「気まぐれメリーゴーランド」
──今話題に上がった「気まぐれメリーゴーランド」は佐香さんからの提供曲ですが、歌唱は天月さんと佐香さんの2人が担当しているんですね。
はしやん この曲はアルバムの中でも特にオススメです。
佐香 特にサビのメロディに注目してほしいんですけど、音階が全部つながってるんです。飛んだりしないでずーっと階段のように音が上下に動いています。
はしやん これ、メリーゴーラウンドの動きになぞらえてるんですよ。メリーゴーランドって、ゆっくり上下に動きながら回るじゃないですか。それに合わせて音も上下に飛ばないように動かしてるんです。
佐香 なんではしやんが言うんだよ(笑)。
はしやん (資料の作詞クレジットを見て)あ、この曲は2人で作詞したんじゃないんだ。
天月 書こうと思ってたんだけど、Tくんから完成品が送られてきたから。
佐香 いやいや、直したいところがあったら直していいからねって言ったはずだよ!
天月 歌詞を上書きしようと思えないくらい、すでに曲とセットでできあがってる感じがしたから。
──この曲はどういう経緯でできたんですか?
佐香 この曲もですね、ずっと温めていた曲で……。
はしやん あれ? 全然新しい曲書き下ろしてなくない? ストックから出しまくってるじゃん。
天月 大事に温存してた曲を出していただいて(笑)。
佐香 いやいやいや。ちゃんと新しく曲は作ったんだよ。でもね、前に作った曲に勝てなかったんだよ。
天月 僕はTくんに「2人で歌う曲で掛け合いがあって、サビがキャッチーでみんなが歌える曲がほしい」って話をしていたんです。それが全部当てはまった曲が「気まぐれメリーゴーランド」だったみたいで。
佐香 あまおに言われたとき、ちょっと改良したら2人で歌うのにピッタリだなと思ってアレンジしたのが、今回の「気まぐれメリーゴーランド」ですね。ライブで盛り上がれるといいいなあ。
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- ニューアルバム「箱庭ドラマチック」 / 2016年7月27日発売 / キングレコード
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 2900円 / KICS-93374
- 通常盤 [CD] / 2200円 / KICS-3375
CD収録曲
- シューティングスター
[作詞・作曲:レフティモンスター / リアレンジ:沼能友樹、棚橋UNA信仁] - 虹の向こうへ
[作詞:天月-あまつき-、タルタノリキ / 作曲:タルタノリキ / 編曲:佐々木裕] - LIFE!!
[作詞:富田京子、天月-あまつき- / 作・編曲:ゆりん] - 流れ星
[作詞:佐香智久、天月-あまつき- / 作曲:佐香智久 / 編曲:堀江晶太] - ナノレンズ
[作詞:渡辺翔 / ラップ作詞:はしやん / 作曲:渡辺翔 / 編曲:中山真斗] - ミカヅキリサイズ
[作詞・作曲・編曲:まふまふ] - 星月夜
[作詞:長谷川澪奈、天月-あまつき- / 作曲:KoTa、原田雄一 / 編曲:佐々木裕] - 愛鍵
[作詞・作曲・編曲:まふまふ] - 地球最後の告白を
[作詞・作曲:kemu / リアレンジ:佐々木裕] - お邪魔チックLover
[作詞・作曲・編曲:TOKOTOKO(西沢さんP)] - はじまりのうた
[作詞:天月-あまつき- / 作曲:伊東歌詞太郎 / 編曲:棚橋UNA信仁] - 気まぐれメリーゴーランド
[作詞:佐香智久、天月-あまつき- / 作曲:佐香智久 / 編曲:Saku] - White Line
[作詞・作曲・編曲:halyosy] - サマータイムレコード(カバー ※通常盤のみ収録)
[作詞・作曲:じん / リアレンジ:棚橋UNA信仁] - グッバイドラマチック
[作詞・作曲:天月-あまつき- / 編曲:佐々木裕]
初回限定盤DVD収録内容
- 流れ星Music Video+メイキング映像
天月-あまつき-(アマツキ)
ネットを中心に活動する男性ボーカリスト。2010年初頭より、ニコニコ動画「歌ってみた」カテゴリーにボーカロイドナンバーをカバーした楽曲の投稿を開始する。力強くもどこか少年らしさを感じさせるハイトーンのボーカルを武器に、ネット上での活動はもちろん、ライブイベントや演劇などでも活躍。2012年6月リリースの1stアルバム「Melodic note.」はオリコン週間インディーズアルバムチャートで1位を獲得した。2014年7月にKING RECORDSからアルバム「Hello, World!」を発表し、メジャーデビュー。2015年2月には、はしやんとのユニット・melostとしてアルバム「Melody Stock」をリリースした。同年6月に発表した天月-あまつき-名義でのライブDVD「Hello, World! TOUR 2015~春、君と見つける扉の向こうのお伽話~ FINAL LIVE at Zepp Tokyo」がDVDのオリコンウィークリーチャートで1位を獲得するなど注目を集める。2016年7月、メジャー2ndアルバム「箱庭ドラマチック」を発表した。
はしやん
ラッパー。VOCALOID曲に独自のアレンジを加えたカバーを発表しているほか、オリジナル楽曲の制作も行う。2015年2月には天月-あまつき-とのユニット・melostとしてアルバム「Melody Stock」をKING RECORDSよりリリースした。音楽活動のほか、ライトノベル「ハロー・デッドライン」の著者として文筆業も行っている。
佐香智久(さこうともひさ)
1991年北海道生まれのシンガーソングライター。中学時代に初めてアコースティックギターを手にし、高校入学後、作曲活動を開始。2009年に「少年T」名義で動画共有サイトにオリジナル楽曲の投稿をスタートする。2012年のシングル「愛言葉」でのメジャーデビュー後は、アニメ「君と僕。2」のオープニングテーマ「ずっと」、「絶園のテンペスト」エンディングテーマ「僕たちの歌」など話題作を続々と発表。また2013年夏には舞台「タンブリングvol.4」で役者デビューも果たしている。そして2015年4月、アニメ「ポケットモンスター XY」のオープニングテーマ「ゲッタバンバン」をリリース。さらにアニメ「ポケットモンスター XY&Z」キャラソンプロジェクトの総合プロデューサーに就任し、数々の楽曲を番組に提供している。2016年8月、最新シングル「いつか君はそいつと別れるに決まってる」を発表する。