ナタリー PowerPush 天月-あまつき-
ニコ動の人気歌い手を支える「コールアンドレスポンス」
悔しがるよりは成長しよう
──その「歌ってみた」デビュー曲の評価っていかがでした?
細かい再生数までは覚えてないんですけど、初投稿のわりには聴いてもらえた気はします。でも、気になったのは数字よりもコメントで。ダメなところはダメと言われ、ものすごくヘコみました(笑)。
──でも、人って好きこのんでイヤな曲を聴こうとは思わないはずですよね。ある程度以上再生された、っていうことは、基本的には好意的に迎え入れられていたってことじゃないですか?
なるほど。まあ実際ホメてくださる方もたくさんいたんですけど、やっぱり気になるのは否定的なコメントのほうですよね(笑)。
──ところが歌い手活動は辞めなかった。
歌うのは好きだし、なんて言うか「じゃあ、もっとうまくなればいいのかなあ」って。
──ハートが強いなあ。
まあだいぶヘコみはしましたけど(笑)、「悔しがるよりは成長しよう」とは思ってました。だって楽しいことでしたから。
天月-あまつき-ナンバーがウケる理由は「?」
──そして初投稿から約半年後の2010年7月には、蝶々Pの「え? あぁ、そう。(男性視点ver)」というボカロ曲の歌ってみた動画で「歌ってみた」カテゴリの7位を記録しています。そのときの気持ちって?
それまでも曲を投稿するごとに少しずつ伸びてはいたんですけど、この曲だけはそれまでとは全然違う再生数とコメント数の伸び方をしたんで、本当に自分の作品の出来事なのか、よくわからなかったです(笑)。
──今、改めて分析してみるに「え? あぁ、そう。(男性視点ver)」はなぜウケたんだと思います?
うーん……。いまだによくわからないですね。今はおかげさまで「歌ってみた」カテゴリで1位をいただいたりもしているんですけど、自分的には「よしっ!」って感じの作品であってもそれほど再生数が上がらないことは平気であるし。なんとなく感じるのは「ボカロ界隈で流行っている新曲は特に(再生カウンターが)よく回るのかな」くらい。ホントに「歌ってみた」の流行って不思議なんですよ。
──マーケティングや戦略は通用しない?
そうですね。聴いてくれる方の中にはそのボカロ曲の歌ってみたバージョンが好きな人もいれば、歌ってる本人が好きだから聴いてくれるっていう人もいるんでしょうし。数字(カウンター)が回ったのは、当然歌った原曲自体が素敵だったからというのも大きいですし。だから「歌ってみた」に投稿を始めた頃からそうなんですけど、僕は戦略みたいなことを考えていません。ホントに好きな曲、歌いたい曲を歌えばいいや、って思ってます。
──その「好きな曲」には明らかに傾向がありますよね。音域が広くて符割が細かい、いわゆる「ボカロ曲」ではなくて、それこそポルノグラフィティやORANGE RANGEと地続きというか、J-POP、J-ROCK寄りの楽曲を中心に歌っています。
キーの問題もありますし、あと人間が歌うことを前提に作られていないというか、息継ぎする隙のない曲はやっぱり難しいです。そういうキャラクターソングっぽいというか、もっとピコピコしたものも大好きだし、ぜんぜん普通に聴いてるんですけど、歌うのはまた別で。「聴くのが好きな曲」と「歌いたい好きな曲」の2つがあるって感じですね。
初ステージで感じた“不思議”という感覚
──そうやって好きな曲を歌って人気の歌い手さんになると、取り巻く状況も変わったりするものなんですか? それともネットはネット、リアルはリアル?
いや、けっこう人生が変わった気はします。今でも動画を漁るのが好きで「この人いいな」「この曲カッコいいな」って思ったら、そのPさんや歌い手さんにTwitterとかSkypeとかで声をかけさせてもらっていて。反対に話しかけてくれる方もいて、そうやって仲よくなったら一緒に遊んだりもするんですけど、当然、Pさんや歌い手さんって年齢はバラバラじゃないですか。年上の方もいるし、すごく年下の子もいるし。
──そうか。天月-あまつき-さんぐらいの若さだと、普通に生活しているぶんには幅広い年齢構成の人たちとのお付き合いってそうはないのか。
ええ。で、その人たちに誘われて歌い手さんのライブやイベントなんかに遊びに行くと、またそこで新しい人と知り合ったりとか。それはすごく面白いですよね。「あの曲一緒に歌ってみない?」なんて話になって一緒に動画を投稿してみたり、「一緒に出てみない?」って言われてライブに出してもらったりもするようになりましたし。
──その初ライブっていつ頃だったんですか?
投稿し始めた年にはもうやってたから、2010年ですね。
──初ステージの感想は?
緊張しました。というか、ずっとお腹が痛かったです(笑)。その頃からライブで歌うことは大好きだったし、人がたくさん来てくれたから楽しかったんですけど、不思議でもあったんですよ。たくさんのお客さんが目の前にいてその現実感みたいなものにプレッシャーを感じました(笑)。
──たくさんのお客さんが不思議なんですか?
ニコニコ生放送や動画だと曲を聴いてくれている人の姿って再生数とコメントっていう文字でしか見えてこないので。その人が男性なのか女性なのか、何歳くらいなのか、っていうことはわからないんだけど、ライブだとその人たちが間近に見ることになるわけじゃないですか。
──で、その人たちに実際に期待の目を向けられることに少し戸惑った、と。
そういう感じです。
収録曲
- START / レフティーモンスターP feat.天月
- 影踏みエトランゼ / Substreet feat.天月
- - EARTH DAY - / はりー feat.天月
- ハートフルエッジ / TOKOTOKO(西沢さんP) feat.天月
- アブラカタブラ! / Shusui feat.らむだーじゃん×天月
- 1/6 -out of the gravity- / ぼーかりおどP feat.天月
- こちら、幸福安心委員会です。/ うたたP feat.しゃむおん×コニー×天月
- 月光戦争 / Last Note. feat.天月
- HELLO / GOM feat.天月
- ネトゲ廃人シュプレヒコール / さつき が てんこもり feat.melost(はしやん×天月)
- え?あぁ、そう。/ 蝶々P feat.甘党加湿器(伊東歌詞太郎×天月)
- Calc. / ジミーサムP feat.天月
- 恋愛勇者 / Last Note. feat.天月
- Voice Letter Vol.2(Bonus Track)
天月-あまつき- 初ワンマンLIVE
「君ヲ想フ唄」
- 2013年5月31日(金)大阪府 大阪BIG CAT
OPEN 17:00 / START 18:00 - 2013年6月8日(土)東京都 Shibuya O-EAST
OPEN 17:00 / START 18:00
料金:3800円(ドリンク代別)
出演:天月-あまつき-
※ゲストあり
天月-あまつき-(あまつき)
ネットを中心に活動する男性ボーカリスト。2010年初頭より、ニコニコ動画「歌ってみた」カテゴリーにボーカロイドナンバーをカバーした楽曲の投稿を開始する。力強くもどこか少年らしさを感じさせるハイトーンのボーカルを武器に、ネット上での活動はもちろん、ライブイベントや演劇などでも活躍。2012年6月リリースの1stアルバム「Melodic note.」はオリコン週間インディーズアルバムチャートで1位を獲得し、2013年2月27日には2ndアルバム「君ヲ想フ月」を発表した。